2023.4.27 はちみつ入りホットミルク

 ハッと目を覚ますと時計の針が12時を指していた。寝落ちしていたようだ。副店長はまだ起きていて、ノートパソコンを開いて何かを書いているようだ。


「副店長ごめん! 寝落ちした! 新メニュー考えるって話してたのに!」


「いいですよ。寝る前におやすみの挨拶したじゃないですか。また明日考えようって。だから寝落ちじゃありませんよ」


「あれ、そうだったっけ。眠過ぎて何も覚えてないよー」


「店長疲れてるんですねー。ちょっと心配です。今日は寝ましょ」


「ううん! 起きてる! 起きてるの! 副店長と新メニュー会議するって約束したもん! これを楽しみに今日頑張ったんだからっ」


「それは嬉しいですけど、体大切にしてくださいよ?」


「うん……」


 大きなあくびをすると、店長が小さくくすくすと笑った。


「店長、眠いのに寝たくない?」


「うーん……寝たくない……」


「そこは『朝の光は眩しすぎる』でしょ」


「あさの、ひかりは、まぶしすぎ、る……」


「本当に眠そうですね」


「うーん……」


 そんなあなたの居場所、バーあめにじ。


 私より低くて優しく落ち着いた声でその台詞が聞こえたと思うと、バーあめにじにいつの間にか朝の眩しい光が差し込んでいた。


 でもその眩しさが嫌じゃない。今日はぐっすり眠れたみたい。


「副店長おはよー」


「おはようございます。よく眠れました?」


「うん! ぐっすり……って、副店長目の下のクマが酷いよ?」


 副店長の綺麗な目の下には、チャームポイントの「涙袋」の影とはごまかせないくらいのクマができていた。


「実は昨日、新メニュー考えてました」


 副店長はそう言うと、マグカップを私に差し出した。


「はちみつ入りホットミルクです」


「えー! ありがとう!」

 

「店長、元気ないんでしょう?」


「どうして分かるの……?」


 店長の呟きがどこからか聞こえたような気がするんです、と副店長が少し寂しそうに言った。


「最初はミルク多めのミルクティーにしようと思ってたんですけど、ミルクの量を増やしていくうちに、ミルクだけになりました。はちみつは砂糖の代わりです」


「ふくてんちょ……本当、ありがとうね」


「いえいえ、一緒に飲みましょう」


 朝の光は少し眩しかったけれど、副店長と一緒に過ごす朝は暖かかった。








 







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