第9話 『進化論』とTS娘
進化論:生物が進化したものだとする提唱、または進化に関する様々な研究や議論のこと
* * *
TS学園大学 生物学部本館地下3階『生体検査室』(通称『ラボ』)にて。
「しのぶは進化論を知っておるかの?」と一条教授。
「それぐらい知ってますよ〜 ダーウィンの『種の起源』で、全ての生物はいまの種として地球に突然この形になったんじゃなくて、進化した結果ってことでしょ? 読んだことないですけど・・・」とちょっと得意げにわたし。
「ほう、一般常識はあるようじゃな」
「なに人をこばかにして・・・」
「すまんすまん。 じゃ『種』(しゅ)とはなにかわかるかの?」
「え、種ですか? ・・・ん〜と・・・」
「種とは、生殖で子孫を残せる個体の集まりのことじゃ。種がどのような経緯で現在の形になっているのかを説明しているのが『種の起源』じゃ。そしてその主軸は『進化論』という考えじゃよ」
「なるほど」
「進化論とは、生物は進化する。その根幹が『生存競争』と『自然淘汰』。この2つが進化の原動力であると書いてある」
「生存競争と自然淘汰ですか・・・生存競争は環境に適応したものが生き残る、自然淘汰は・・・環境に適応している生物が子孫を残すってことですかね」
「そうじゃ。生存競争に負けた、弱い種は自然淘汰されてしまうんじゃよ。これは種だけでなく性質、言い換えれば『遺伝子』においても発生するのう」
「遺伝子?」
「そう、遺伝子じゃ。例えば首の長いキリンだけが生き残り、短いのは生き残れない。結果的に首の長いキリンの遺伝子が受け継がれていく・・・環境に適応した遺伝子だけが残り、それ以外は全て淘汰されていってしまうわけじゃ」
「そうですね」
「つまり進化は変化ということじゃが、進化することは『優れたものになる』ということではないのじゃよ」
「え、そうなんですか?」と驚く。
「地上では遠くまで見渡せる生物が有利かもしれんが、深海ではそもそも眼は必要ないじゃろ?」
「言われてみればそうですね!」
「それは環境、例えば温度が1度違うだけで、種が大きく変化するかもしれんということじゃ。結局、どんな生物でも環境の変化次第で進化の方向性が変わるんじゃな」
「で、今日の話は・・・? もしかして『TS娘』ってのも進化?」
「いや、逆に退化かもしれんぞ? そもそも受精によってつくられた『胎児原基』は、男女どちらの性にも発育できる特徴を持っておるしの。それがY染色体『SRY遺伝子』の遺伝情報が有れば男になるし、無ければ女になるわけじゃからな」
「う〜じゃ、わたしは一体どうしてこうなったんだ〜?!」
「それはわからんって。 じゃが最近TS娘も多くなってるしのう」
それってTS学園、ひいてはアストラル製薬のせいじゃ・・・と言いかけたけどやめた。
「じゃ今日こそちゃっちゃと『検査』始めるぞい」
「いや・・・なんかちょっとそんな気分じゃないんで帰ります・・・」
「おいおい、『検査』はどうするんじゃ」
「そんなの、また今度にします・・・」
「う〜む、『検査』前に生物学の話はせん方が良かったかのう・・・」
* * *
『TS娘』は進化したのか退化したのか・・・って話
以上 『進化論』とTS娘
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