第19話 『TS娘』とTシャツとパンツ

裁判にかかる時間:民事裁判の目安としては半年~2年くらいが一般的ですが、専門的知識を要する訴訟(医療、建築など)は長いと5年も10年もかかることがある。


***


 行方不明(行方不明者届は届出されていない)の『高岡英一郎』と、少女姿の俺が同一人物であるとの認否の申し立てが大先生より地裁に提出され、裁判所の終局的判断が降りるまでの間、大先生宅で過ごすことになった。

 前の部屋は家賃も滞納状態だったので、賃貸借契約は中途解約。ほとんどの荷物(性別と身長に合わない衣類や靴、使用しない家具、食器類)は廃棄し、与えてもらった部屋で寝起きする。

 解約手続きや廃棄、引越しそのた諸々の手続きは田中にやってもらった。衣類と布団、雑貨類は新たに奥様に購入して頂いた。それらの支払いはもちろん『高岡英一郎』名義の口座からだ。


 民事裁判の目安としては、内容にもよるが半年~2年くらいが一般的だが、今回のような専門的知識を要しさらに前例がない裁判を行う場合には、それ以上かかることを予想し『高岡英一郎』は依然行方不明のまま。本人である少女姿の俺の存在は関係者以外には秘匿してある。


 当然、ただ漫然と過ごしていたわけではない。小学校には行かず在宅で仕事をしている。オンラインでの打ち合わせは大先生か田中とのみ。お給料もいただいている。仕事内容は今までとは変わらないんだが、この身体はやはり子供なだけありすぐに疲れて『お昼寝』をしないと続かない。


 かれこれもう2年近くは経っている。俺はすっかり奥様に可愛がられ『英子』ちゃんと呼ばれている。大先生と田中も自然と『高岡くん』『高岡』からいつしか俺のことを『英子』と呼ぶようになっていた。

 発見された時と比べ栄養状態も良くなり身長は当然だが、髪も背中の真ん中あたりまで伸びた。ちょっと伸びるのが早いみたいだ。


 その日はちょっと仕事に根を詰めすぎて、眠くなったので自室で『お昼寝』をしていた。

 田中は親友であり、俺の『少女』姿の第一発見者で命の恩人でもある。気になるのであろう、よくヒマを見つけてはやってきてくれるんだが、そんな昼下がりにやってきた。


「お〜い、英子ちゃん起きろよ〜 そんなシャツだけで寝てると風邪ひくぞ〜」

「ん……ぁ、たなか〜? おはよ〜」

「おはようじゃない……って、パンツ履いてるのかよ!女の子なんだからもう少し気をつけろよな〜」

「え〜 今日は暑いからTシャツ一枚だけど……ほら、ちゃんと履いてるよ〜」とシャツをまくり上げ黒の女性用ボクサーブリーフを見せる。

「う、うわ莫迦! わかってるから見せなくていいって!」


 同僚とはいえ、田中にとって俺は女の子だからな〜 幼女といってもいい少女がそんな格好をしているのはやはり目の毒だろうな……。


***


『TS娘』が無防備でTシャツとパンツだけで寝ていると目の毒だゾ……って話


以上 『TS娘』とTシャツとパンツ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る