第二章
第十一話 父親
ー 二週間後
政宗の情報には、マッセミリアーノの日本支部とこれからの目的が細かく記されていた。
マッセミリアーノは今神奈川を拠点にしておりもう神奈川はほとんど支配している。そして遂に東京を乗っ取ろうと企み始めている、
そのせいかマッセミリアーノはわざわざ我々の目と鼻の先まで来てくれている。これ程のチャンスはもう100%来ない。
「。。岡田、情報は頭に叩き込んだか。」
「当たり前や。
まあ、そこから要約したら、その情報がホンマかマッセミリアーノの半グレ組織に確認しに行く、って所やろ。」
「よし。ただ本当にお前も俺に加担して良いのか?加担しなければお前にもかなりの将来が待っているはずだ。」
岡田は数秒たりとも考えずに即答した。
「全然ええっすよ。戦えるんやったら。」
「。。。。お前には何か、大事な物はないのか?」
「まあ、やっぱ妻子やろな。」
あまりにもあっさりと答えられた物なので、俺は一瞬言葉に詰まった。
「既婚してるのか、お前?!」
「ああ、先輩には言い忘れとったな。」
「そんな大事な事もっとはや。。。いや、もういい。」
きょとんとした岡田に見つめられると気が失せる。
やはり関西人は感性が違うのか。俺は溜息をつくと岡田にまた向かった。
「岡田、俺達は警察官である前に、父親だ。覚えておけ。」
「なら僕は根っからの警察官らしいな。」
俺はもう返事はせず、車を降りた。目の前には廃ビルにスプレーで荒々しく「関東連合」と書かれてある。
玄関の前を俺と岡田が通ろうとすると半グレの一人が突っかかってきた。
「おっさん、ここ何処かわかってる?」
他数人は裏で笑っている。俺は大きく息を吸い、口を開けた。
「岡田、捜査開始だ。」
「ふぅー、最近の半グレは容赦ないなー。案外手こずったわ。」
「守らないといけないものが無いからな、こいつら。」
俺と岡田は玄関のベンチで腰掛けながら、息を吐いた。周りにはざっと見る限り数十人の半グレが地面に倒れている。
勿論、全員気絶しているだけだ。
「お前、柔道黒帯だったか?」
「いや、赤白や。それとキックボクシングをちょっとな。」
「俺は空手しかやって無いからな。。」
「いやいや、先輩の空手八段もかなりやばいわ。」
「うぐっ。。」
半グレの頭領と思われる男が顔を上げた。
「あんたら。。何者。。だ」
「しがない警察官だよ。」
俺はそいつの髪を掴み、近づけた。
「ただし、最後に少し質問をさせて貰おうか。」
「やっぱり政宗はん、本当の事言ってたやん!信じたったらええのに。」
「。。何事にも油断するな。」
「はいはい、そうですかー。じゃあ喉乾いたし、ビール買ぉてこようかなー。」
「職務中だ。止めろ。」
「そう言う所は真面目なんよな。しゃあないからコーヒーで我慢か。」
岡田が自販機へ向かい、角を曲がったと思うと誰かに肩を叩かれた。反射的に後ろを向くとそこには旭さんが立っていた。
「久しぶりだな、永澤。」
静かな新宿署には俺と旭さんしかいない。
「まあ、一旦座ろうや。」
「。。。」
俺は何も言わずに立ったままでいる。
「。。。永澤、お前何か隠しているだろ。」
俺は無反応だった。しかし動悸は早くなっていく。
「お前はずっと何かを抱えていた。俺のせいでもあったのかもしれない。けれども最近のお前は重りをやっと降ろしているように見える。」
旭さんは立ち上がった。
「極秘任務はもう良い。やらなけばならない事があるんだろ。ただ、生きて帰ってこい!」
俺は返事はせず、静かに頭を下げた。
「政宗に怒られるからな。そしてお前が帰って来たらー、また花より焼酎で飲むか。」
旭さんは苦笑いをしてまた歩き始めた。
「はい。」
俺は頭をさらに深く下げたまま答えた。
「先輩のブラックも買って来た。。なんかあったん?」
「いや、何でもない。岡田、俺の我儘に付き合ってくれて、ありがとうな。」
「突然辛気臭いこと言わんといてやー!」
俺はブラックコーヒー缶を開けた。
「残るは、最後の準備だ。」
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