番外編 焼肉パーティー
「乾杯!」
「。。。。」
「このメンバーで集まると全然盛り上がらねえんだよな。。」
その焼肉屋はいつも通りに繁盛していたが、一箇所だけ明らかに怪しい四人組が座っていた。そこには黒いマスクの男と雛人形の着物を着た少女、そしてあと二人、男が座っていた。
「そっ、それはあなたのかっ、勝手な自己主張じゃ無いですか。」
伊達眼鏡をかけている細い男が突然声を張り上げた。
「オメーにだけには言われたくねえよ、サッカ。」
「しっ、失礼な!私にもちゃんとしたなっ、名前があるんですよ!」
ピロン。
「あっ、通知がき、来た。」
サッカと呼ばれている男は何かの通知が来たらしく、会話などそっちのけで携帯を素早く内ポケットから取り出した。
「ほっ、星一つ、つまらないだって!?!なんで私のげっ、芸術を理解してくれる人間はいないんだ!!人間のくっ、屑め!」
男はありとあらゆる暴言を吐きながらスクリーンを激しく指で叩き始めた。
よく見ると男のスクリーンは所々にヒビが入っておりボロボロである。
しかし男は構わず狂った様にスクリーンを壊す勢いで叩き続ける。男の指からはついに血が出始めたが、充血した目とクマは更に開いていく。
「まあまあ。サッカさん、人に異なる感性は付き物ですよ。」
隣にいたもう一人の青年が男の手首を掴んだ。
青年はとても爽やかな雰囲気を醸し出しており、服の上からもかなり筋肉質な事が伺える。
「アカはわっ、分かってくれるのか?」
「勿論です。今はどのような作品を?」
「いっ、今は小説投稿サイトで投稿をしているんですが、ここのゆっ、ユーザーは芸術性の無い屑ばかりだ。どちらにしろ私のさっ、作品は
「転生したら自分以外の全員が犠牲になった難破で岸辺に投げ出され、アメリカの浜辺、オルーノクという大河の河口近くの無人島で28年もたった一人で暮らし、最後には奇跡的に海賊船に助けられた日本出身のサラリーマンの生涯と不思議で驚きに満ちた冒険についての記述」
と言う物だ。」
「。。とても面白そうな作品じゃ無いですか!」
「良い子ぶるのだけは上手いな、アカ。」
黒いマスクの男は舌打ちをし、呟いた。アカと呼ばれている青年は笑顔のままマスクの男へ向くと、無言の睨み合いが続いた。
「早く。。肉。出せ」
静寂を破ったのは少女の声だった。男達は少女を数秒見つめると青年の方が先に手を叩き言葉を発した。
「確かに、ヒナさんの言う通りです!そろそろ食べ始めましょうか。」
頼んだ上カルビ、ロースやハラミはすぐに出てきた。
「それでは、いただきます!」
アカと呼ばれていた青年意外は全員もう食べ始めている。
少女は一気に二十枚程取ると一斉に焼き始めた。青年はゆっくりと取り箸で肉を四枚つまんでいる。
ピロン。
「あっ、まっ、また通知だ。」
伊達眼鏡の男はまた血だらけの携帯を取り出した。
「人とと言うのは口では対等に喋る事ができない存在だ。嫉妬、差別、軽蔑、尊敬、羞恥心。。。」
青年は突然ボソボソと呟くとつまんでいた生肉を噛みちぎった。そして飲み込むと青年はまた笑顔に戻った。
「真に対等になる為には肉と喋り合うのが一番良い!」
黒マスクの男はテーブルを叩いた。
「お前ら、良い加減にしろ。今回の仕事、ボスからの伝言は「新宿を制圧しろ。」その一言だ。」
一瞬全員の動きが止まったが、すぐにまた肉を取り始めた。
「出来るな?」
「あっ、当たり前だ。」
「。。うん。」
「そこの人達とも語り合いたいですしね。」
「まあ、そうだろうな。あっ、オネーサン塩タン追加で。」
黒マスクの男はあくびをすると、軽快な声でまた肉を頼みだした。
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