第十二話 妖怪爺い
「ひえぇー、豪邸やな。」
岡田は感嘆の声を上げた。
「永澤さん、こちらへ。」
黒服の男が二人、門の前に現れた。俺は無言で頷くと男達へついていく。
「先輩、ホンマ何者なん。」
屋敷の奥へ、奥へと連れて行かれる中、岡田が呟いた。
「今回、どうしても彼らの手助けが必要になっただけだ。静かにしとけ。」
岡田は納得しない顔で首を傾げるとまた静かになった。男達が膝を着くと同時に襖の開く音がし、懐かしい声が響いてきた。
「デコ助ー、お前、手土産でも持って来たろうな!」
「当たり前です。今回は黒龍 石田屋を。」
「おおー!昔からお前は気が利くからええのー!」
「恐縮です。」
俺と岡田は隆元の前に座り込んだ。
「おっ、また見ねえ顔が増えたわい。だがまあ、お前さんが来たからには何かあるんじゃろ?」
「はい。折り入って要件があるのですが、実は隆元さんの、いや光田組の力を貸していただきたいのです。」
隆元はピクリと反応すると俺に問いかけてきた。
「何故だ?」
「マッセミリアーノと言えば隆元さんならわかるはず。あのイタリアンマフィアは最近やけに日本に進出しています。ゆくゆくは光田組にも必ず立ちはだかる。それで彼らの殲滅に力を貸して欲しいのです。」
「何人欲しい?」
「圭さんと構成員を八十人程。」
隆元はいつにも増して冷たい目で答えた。
「おい、デコ助。圭がウチの組にとってどれだけ重要が分かっておるな。」
「もちろん殲滅の後、マフィアのルートとシマは全て光田組へ。」
義眼をぎこちない動きで回しながら隆元はまた俺に問いかけた。
「この人数を投入したら確実に殲滅は可能なんやろな?」
「はい。」
またもや数秒間静かになると、隆元はニタリと笑った。
「確かに奴ら、ワビも入れないでシマに入って目障りやと思ってた所や。ええやろう。その提案、受けたるで。」
「ハッ、ありがとうございます。」
「おい圭、ちょっとこっち来い。」
隆元がそう言うと奥の襖が静かに開いた。
「隆元様、なんでしょ。。。誰ですかこやつら。」
「お前、覚えてないのか?ほら、あの青二才のデコ助達じゃよ。」
「。。で、私は何をすればいいんでしょう?」
隆元は酒を眺めながら答えた。
「お前はこのデコ助達に一ヶ月着いていけ。」
「隆元様、勘弁してください。なんでこんな警察官達に着いていく必要があるんです?そして光田組はどうするんです?」
「まあ、落ち着け。一ヶ月ぐらい自分達でどうにか出来る。光田組はお前が一番よく知っているはずだ。」
言い返せず悔しそうな顔をすると、圭は渋々手を差し出してきた。
「こちらこそ、宜しゅう頼んますー!」
俺が手を差し出す前に、岡田は圭の手を握っていた。
「お前、誰だ?」
両者は無言で見つめ合いながら明らかに握力を強めている。
「岡田、いい加減にしろ。」
俺はため息をつき、言った。
「そちらの方も活きがいいのがいるのうー。」
隆元はゆっくりと立ち上がると少しフラフラしながら俺に近づいた。そして十分近づくと彼は俺を手繰り寄せ囁いた。
「もしも成功しなかったら、。。。お前が一番良く分かっとる筈や。」
俺の耳から離れると隆元はまたもやフラフラと歩き始めた。
「今日の所は、この酒を楽しませてもらうわい!」
隆元が襖の奥へ消え去ると、瞬く間に俺たちは外へ放り出された。
「あのお爺ちゃんと、圭って言う奴は二人共ホームランやな。」
「お前、決して変なこと考えるなよ。」
「へいへい。でもあのお爺ちゃんかなり歳行ってるやろ?いつからの知り合いなん、永澤はん。」
「お前には関係ない事だ。」
岡田はジトリとした目で俺を見つめると、諦めたように俺たちの二十メートル程後ろで着いてきている圭にちょっかいを出しに行った。
「。。妖怪爺いめ。」
俺は苦笑しながら灰色の空を見上げた。
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