第三話 命の重み
「失礼します。」
「どうぞ、入ってください!」
俺が中に入ろうとして上を向いた瞬間、つい言葉が漏れてしまった。
「。。きょう!。。」
「?」
そこには京子が立っていた。
少女の名前は清水和子と言い、今は母と二人きりで暮らしている。母の名前は清水久美子、そして1DKのアパートに住んでいる。リビングの真ん中には小さめのテーブルが一つあり、俺は今そこに座っている。
「すいません、今お水しか無くて。」
久美子さんがそう言いながらテーブルへコップを二つ運んで来た。見れば見る程京子がいるような気がしてきてしまう。灰色であってもこれ程似ているとは。世界には生き写しがやはり実在するらしい。
「いえ、全然。そんな事よりも和子ちゃんが無事で本当によかったです。」
和子ちゃんは隣でおままごとに夢中で私たちの会話は一切耳に入っていないようだ。
「いえ、こちらこそ命を賭けて娘を助けていただき本当にありがとうございます!」
「私のの燃え尽きた命なんて、こんな事で使えれば誇りですよ。」
すると久美子さんは突然テーブルを激しく叩いた。
「命は一つしか無いんです!」
あまりの事に俺は少し目を見開いていた。すると彼女も気づいたらしく
「い、いや、だから命は大事に使わないと。。」
少し顔を赤らめた彼女を見ていると、少し可哀想になってきた。
「久美子さんは命をとても大事に思ってらっしゃるんですね。」
「はい。私の主人は数年前に自殺していて。。それからコンプレックスなんで
す。」
「いえ、こちらこそ警察官なのに命の重さを見間違えた私の責任でもあります。すいません。」
それに続く様に俺は彼女に質問をした。
「失礼しますが、久美子さんのご主人はどの様な仕事をされていたのですか?」
彼女は少し沈黙すると、口を開いた。
「主人は自分で探偵事務所を立ち上げていました。でも、主人も仕事の内容についてはそれほど教えてくれませんでした。」
「。。。私立探偵、ですか」
その後の会話はそれほど重みもない世間話だった。そして、そうこうする内に俺は帰っていった。しかし、次の日も、また次の日も俺の足は気づかない内に動いていくのだった。
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