過去編4 初任務
ベルを鳴らして少しすると、大柄な男が二人出てきた。
「。。何か用ですか。」
「実は少し”質問”がありまして。」
次の瞬間右側の男が政宗に向かって拳を向けてきた。その一瞬の間に政宗は男の拳を流すとその勢いを使い一本背負いで地面に叩きつけた。
「暴力はダメですよー。」
政宗が男を完璧に抑えつけたのを見ると、もう一人の男は両手を上げた。
「すまない。お前達を試してしまった。中に入れるから、離してやってくれ。」
政宗は最後にもう一度腕を締め上げると、腕を離した。
「こちらです。」
男達に案内されると、俺と政宗は改めて屋敷の広さに気付いた。屋敷の中には日本庭園があり、まるでここだけ全く違う世界の様に見えてくる。かなりの距離を歩いた後、男達がやっと止まった。そして男達が膝に着くと、襖が開いた。
「早う、入れ。」
少ししわがれているが芯が通っている声が聞こえた。俺と政宗が襖の奥に入るとそこには少し痩せており、茶を立てている隻眼の老人と白髪の男が畳に座っていた。
「あんたらが例のデコ助かいな。」
その老人は下向きながら茶を立て続けている。
「わしの時間を無駄にしない方がええで。」
周りから無言の威圧が掛かる中、俺と政宗は座り込んだ。
「はい。今回は銃刀法違反についての尋問が。。」
俺が喋り始めるか否か、その老人の眼球の入っていない穴がカッと開いた。
「おんどれ、わしにヤキ入れるつもりか!」
その叫び声と共に隣の男も腰に手を当て始めた。
「永澤、あの白髪のやつとは絶対にやるな。」
政宗が横から囁いてきた。頬には汗が伝っている。
「ああ、分かっている。」
そう言う俺のこめかみにも汗が伝い始めた。
「どうなんや!!」
「。。そうです。」
「全部失ってしまっても、か。」
「はい。」
数十秒間睨み合いが続いた。そしてその氷を破ったのも、隆元だった。
「ガーッハッハッハッハッ!!」
豪快な笑いの後、隆元は言い放った。
「気に入った!いいやろう、光田組はここの売買から手を引く。圭、鞘を収めろ。」
「し、しかし!」
白髪の男が何かを言いかけたが隆元はさらに強い口調でもう一度言った。
「収めろ。どうせお試しやったんや。」
圭と呼ばれた白髪の男は渋々鞘を収めた。隆元はまた俺達を見ると今度は微笑みながら聞いてきた。
「おんどれを送ったのはどいつや?」
「山田警視ですが。。」
隆元は笑みを浮かべると少し間を置いて俺達に言った。
「山田の坊ちゃんには、よろしゅう言っといてくれや。」
「親父、そろそろ組会が。」
白髪の男に注意されると隆元は腰を上げた。
「ああ、そうやったな。」
すると行く前に隆元はもう一度振り返り何かを忘れたような顔で喋ってきた。
「そや、今回は体張ったあんたらの面子を立てたが、坊ちゃんには光田組の約束破ったら次は無いで。って言っといてくれや。それから舎弟の場所はいつでも空いてるから、入りたかったら連絡しろや!」
そう言い終わると隆元は何人かのガードマンとセンチュリーに乗り込み去っていった。俺達は隆元が去ると、まるで追い出されるかの様に出ていかされた。
「任務、成功?だよな。」
門をくぐると俺は政宗に聞かれたが、俺の耳には全く入ら無かった。
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