エピローグ

 婚約解消宣言後、私はお兄さまとお父さまとまたヴィルフェルト家のお屋敷へと戻ってきました。

 クリスタさんたちは大層驚いていらっしゃいましたが、また一緒に過ごせることを喜んでくださいました。

 私が声を発した時は、仰天して転びそうなほどに驚いてくださり、そして抱きしめてくださいました。


 そして数日後、私はお兄さまとお部屋で一緒にアフタヌーンティーをして楽しんでおりました。


「もう声はすっかりいいのかい?」

「はい、お医者さまに見ていただいても問題ないとのことでした」

「そうか、よかったな」

「はいっ!」


 今日はベリーティーですね。

 少し甘めの香りがお部屋中に漂っていて心地よいです。


「そういえば、カフェのオーナーが新作ができたからよかったら食べに来てほしいっていっていたよ」

「本当ですか?! あそこのケーキは絶品なので、今から楽しみです!」


 そんな風にお話していたときにふとお兄さまに借りた本を返していないことを思い出して、席を立ちます。


「お兄さまに返していない本があって、確かこのあたりに……っ!!!!」


 急に視界がぐらりと揺れて驚く私。

 気づくと顔の近くにお兄さまの顔も近くにあって、吐息を耳元に届きます。


「お兄さま、これじゃあ本がとれません」

「本なんてどうでもいい」

「意外と甘えん坊だったんですね」

「甘える男は嫌いか?」

「いいえ」


 私とお兄さまはお互いに向かい合って、私はそのままお兄さまに抱きしめられました。


「お姫様、私と婚約してくださいませんか?」

「私でいいのですか?」

「君がいい」


 私はお兄さまの瞳を見つめて言いました。


「はいっ! 私と婚約してくださいませ、お兄さまっ!」



 私の唇にそっと温かい唇が触れました──

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