番外編~Sideユーリア~
幼い頃、一目見たときから恋に落ちてた。
漆黒の髪にサファイアブルーの瞳、優しくて大好きだった。
そう、私──ユーリア・フォルツの初恋の始まりはキラキラしていた。
「ユーリア嬢、具合が悪そうだが大丈夫だろうか?」
私の具合の悪さにいち早く気づいてくださった。
どんどん好きになっていって、何度も想いを伝えたけどダメだった。
ラルス様は引く手あまたな婚約者選びも真剣になさらない。
仕事に夢中でそちらに目が向かないそう。
まあ、それならまだチャンスはあるからいいかなって思った。
それなのに、彼女は突然現れた──
修道院育ちでヴィルフェルト家に養子として引き取られた声が出せない令嬢。
すぐにわかった、ラルス様はあの子のことが好きなんだって。
「ラルス様」
私は声を声をかけてみた。
「ユーリア、久しぶりだね」
「ええ、先日のパーティーはお招きいただき、ありがとう」
「楽しんでくれたかい?」
「あなたの自慢の妹が見られてよかったわ。そうだ、ここじゃなんだから、バルコニーで少し話せないかしら?」
「ああ、構わないよ」
バルコニーは冷えるけど、それでもラルス様とお話できて幸せを感じた。
「あなたの妹さん、ローゼマリーといったかしら? ずいぶん可愛い見た目ね」
「ああ、自慢の妹だよ」
「好きなの?」
嘘ばっかり。
あの子のことが大事で仕方ないくせに。
私にはあんな笑顔もあんな優しい視線も向けてくれたことない。
いつだって私の一方通行。
「ごめんっ!」
その言葉を言って彼女を追いかけていったラルス様。
「よかったですか、お嬢様」
「ええ、清々したわ。これでもう思い残すことはないもの」
「お嬢様は嘘が下手ですね」
そうね、私は嘘が下手なのよ。
感情を抑えきれない……。
「ねえ、ヴィム。少し胸を貸してくれる?」
「はい、もちろんでございます」
私は執事であるヴィムの胸の中で子供のように泣いた。
いつかこの苦しみから解き放たれることを祈って──
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