第10章 畏怖

 家に入ると、バスルームの方から水の爆ぜる音が響いていた。きっと姉がシャワーを浴びているのだ。

 階段を上がり、二階に向かうと、ドアを開けたままの姉の部屋に沙耶の姿があった。

 沙耶は僕の姿を見ると、ほっとした表情で手招きした。

「蒼人君、さっきの視線分かった?」

 沙耶が小さな声で囁いた。

「えっ? 沙耶さんも感じたんですか?」

 僕が驚きの声を上げると、沙耶は黙って頷いた。

「まるで、背後からナイフで切り付けられたような感じだった」

 沙耶の呟きに、僕は愕然とした。僕が感受した内容と全く同じ感覚を、沙耶も感じていたのだ。

 僕は確信した。

 あれは錯覚じゃない。紛れもない事実。

「蒼人君、どう思う?」

「どう思うって……どう言う事ですか?」

「視線の主の事」

「それが、分からないんです。振り向いてもこちらを見ている者は誰もいなかった」

「そっか……私も分からなかった。肩越しにちらっと振り向いてみたんだけど」

 沙耶は思案顔で俯いた。

「まさか都賀葉月?」

「分からない。ただ……一人じゃなかった」

「どういうことですか?

「生きている者とそうでない者の存在を感じた」

「それって……?」

 僕は身を乗り出して彼女を見つめた。

「私ね、見えたり感じたりするの……いないはずの存在が」

 沙耶の言葉に、僕は言葉を失っていた。想定していなかった事態への転換に、ただでさえ思考が混乱している最中、彼女が呟いたその一言は、僕の意識に違う意味での波紋を投げかけていた。

 僕が感じたのは、どちらなんだろう。

「たぶん、蒼人君が感じたのは、後の方」

「えっ? 」

 僕は眼を見開いた。

 どうして分かったんだろう、僕が考えていた事を。激しく脈打つ拍動を、僕は顔全体で感じ取っていた。

 いや、それよりも、僕が後者――「そうでない者」の存在を感じ取れたッてことは・・・。

「蒼人君、あなたなら、私と同じ世界が見えるはず」

 沙耶は僕の眼を見ながら、静かに語った。

 僕はぽかんと口を開いたまま、ただ茫然と沙耶の澄んだ瞳を凝視し続けた。

 もはや驚きは彼女の読心術だけじゃない。彼女が「見える」人であ

り、同じ力が僕にも宿っているという事実。

 信じられない。

 信じられないけど、そうなのだ。きっと。

 沙耶が僕に偽りを語る様には思えないし、語ったところで、何のメリットも無いのだから。

 不意に、姉が部屋に戻ってきた。 

 服装は黒いTシャツにライトグレイのスエットパンツに変わっている。僕はあえてその件には触れず、ただ黙ったまま姉を迎え入れた。

 姉はまるで亡霊の様なふらふらした足取りでベッドの傍らまで来ると、言のまま沙耶の隣に腰を下ろした。、

「大丈夫?」

 沙耶がそっと姉の顔を覗き込む。。

「うん……」

 姉は、か細い声で呟きながら頷いた。

 僕はそっと姉の部屋を退散した。姉の事は、今は僕よりも、沙耶に任せた方が良い様な気がしたのだ。

 それに、確かめたいことがあった。

 さっきのあの憎悪に満ちた気配は、いったい何だったのか。

 もしその主がまだこの屋敷の周辺に潜んでいるとしたら。

 沙耶の話では、二人の気配を感じたという。

 見える者と見えない者……実体と霊体……今の僕なら、どちらも見える気がする。

 霊視能力なんて、もともとあった訳じゃない。大体、今の今までその類のものを眼にすることは一度もなかった。むしろ、その存在すら否定的だったくらい。なのに、不思議なものだ。今まで、錯覚や幻聴と捉えていた様々な事象が、僕の中で、必要以上にスピリチュアル的な記憶へと、すり替えられていくのを感じていた。

 玄関を出ると、何人もの警察関係者が引き上げた車両とその周辺をせわしなく行き来している。

 父と石岡の姿が見えない。二人も、葉月の元上司と同僚と言う事から、パトカーの車内で事情聴取を受けているのだろうか。

 警官達の間を抜けて、そっと葉月の軽自動車が転落した崖のそばに近付いてみる。 タイヤで踏みにじられ、更には引き揚げ作業で完全に踏みつぶされた雑草と花壇の花が、鮮烈な程に生々しい草いきれの残り香を漂わせていた。

 それはまるで、突如失われた生への未練を訴えるかのように、いつまでも僕の鼻腔を刺激し続けた。

 だが、凄惨な事故の傷跡が残るものの、先程感じた憎悪の気配は、僕には全く感じられなかった。

「生きている者」も「そうでない者」も。

 どさくさに紛れて、この場を立ち去ったのか。

 そう思うしかなかった。

 否、そう思いたかった。

 でも。

 そう簡単に断ち切れるものだろうか。生きる事に対する未練を。否、それ以上に父に対する執着を。

 僕の中では、「そうでない者」の憎悪の正体は葉月だと断定していた。

 沙耶は分からないと言っていたが、あの状況で推測するならば、僕の考えは誰しもが導き出すだろう、最も型にはまる答えだ。ただ、どうしても分からないのは、もう一人の方。生きている者の正体だ。

 都賀の両親? 否、違う。あの時点では、二人とも葉月に寄り添って救急車に乗り込んでいる。

 じゃあ、いったい誰?

 まさか、奴?

 でも奴は僕達に恨みを抱いて付き纏っているんじゃない。

 姉への性的な興味だけなのだ。

 生きている者で、僕達を恨んでいるものって・・・誰なんだろう。

 答えが出ないまま、悪戯に時だけが過ぎて行く。

 そんなはっきりしない思考の狭間を彷徨いながら、いつしか、僕はある方向に歩みだしていた。

 屋敷の裏側。

 崖下の磯浜へと続く小道だ。

 あの時、迷彩服の男が選んだ逃げ道。

 憎悪の主も、そちらに消えたのかもしれない。生きる者も。生きざる者も。

 根拠はない。

 ただ、何気にそう思っただけだ。

 小道の手前で、僕は歩みを止めた。

 ここでも、意識を掻き乱す危険な気配は、僕に牙をむこうとはしなかった。

何も感じられない。

 いつもの様に白波の経つ碧い海が広がっているだけだ。

 あいつは、どうなんだろう。あの、姉を恐怖に陥れた男は。 

 久し振りに目撃したあいつの容姿は、不思議な事に昔と全く変わっていなかった。 

 それに、二階のベランダで対峙した時も、躊躇うことなく身を翻して飛び降りるや、瞬時にして姿を消している。

 ひょっとしたら、奴は実体のない存在――死霊なのか。

 でもあの時、奴は無事逃げおおせている。勿論、何処にも遺体は見つかってはいない。

 そう言い切れるだろうか。

 あの時は命辛々逃げ切ったとしても、ひょっとしたら深い傷を負っていて、その後に絶命しているかもしれない。

 それこそ、長い闘病生活の末、僕達がこの地を離れた後に命を落とした可能性もある。

 姉に対する執着を、この世に残して。

 僕は大きく首を横に振った。

 有り得ない。考え過ぎだ。きっと違うと思う。

 僕自身、最も現実でないことを祈りたいパターンだった。

 例え、その仮説が、ここに舞い戻ってきてから起こった不可解な現象を裏付けるものだとしても、僕はそれを絶対認めたくない。

 そうなれば、奴はどこからでも侵入出来るから、僕がいくら目を光らせても防ぎようが無くなってしまう。

 多分、そうじゃないと思う。

 僕を逆さに抱えてバルコニーから飛び降りた時、人肌の温かさと肉体に触れる感触は生身の人間そのものだった。

「安心しろ、俺は生きてるぜ」

 意識が瞬時にして凍てつくのを感じていた。動けなかった。目に見えない呪縛が、僕の手足に不動の枷を施していた。

 奴の声だ。幻聴なんかじゃない。背後から、はっきりと聞こえた。

 僕は恐る恐る振り返った。

 奴はいた。僕の背後から数歩程後ろに佇み、あの時と同じ、迷彩色のシャツとパンツ姿で、にやにや笑いながらこちらを見ていた。

 喉がカラカラに乾いていた。。おまけに、緊張で細くなった気管支からはひゅうひゅうと草笛の様な音を立てるだけで、言葉を全く綴ることが出来なかった。

「納得いかねえようだな。自分の考えている事を俺に見透かされたのが不思議なんだろ?」

 挑発するように愚弄する男に対し、僕は一言も声を出せずにいた。

 その通りだった。

 驚愕に表情を歪める僕を、あいつは上目遣いに見つめていた。

「あの時、俺が崖から滑落したように見えただろ。実は落っちゃいねんだな。何故だか分かるか?」

 奴はにやにや笑いながら僕に問い掛けた。

 うろたえる僕をからかっているのか、

 自分の饒舌に酔いしれる奴に、無言のまま冷ややかな目線で答える。

「飛んだんだよ、空を」

 奴は得意気に口元を吊り上げた。

「嘘、つくな」

 僕はすかさず吐き捨てた。馬鹿にするにも程がある。

「嘘じゃあねえよお」

 男はにやりと笑うと大きく身を翻し、崖から身を投じた。

 浮いている。

「そんな馬鹿な……」

 僕は眼前の現実を直視しながらも、それを認めることに躊躇していた。

「分かったか? 」

 奴は得意げに笑いながら、僕をじっと見据えている。

「特殊能力だよ。公表すると、某国の組織に引っ張られそうだから、秘密にしているけどな」

「特殊能力・・・」

 奴の言葉が信じられない。

 きっと何か種があるはず。こっそり乗っても割れない分厚いガラスを仕込んであるとか。

 もし、本当に特殊能力だとしたら、使い方を間違っている。

「今日はこれで帰るぜ。邪魔者がいるからよう。けひひひひ」

 品の無い笑声を残し、奴は消えた。

 今のは何だったのか。

 幻視?

 いや違う。

「一言言っとく」

 いなくなったはずの奴の顔が、目と鼻の先にあった。

「さっき、御前達を睨んでたのは俺じゃねえぜ。まあ、気をつけるんだな」

 男はそう言い残すと、再び崖に身を委ね、消えた。

 不意に、呪縛が解けた。

 身体中の震えが止まらなかった。

 何が何だか分からない。

 僕はこれからどうすべきなのか。奴の言っていた事は全て本当なのか。

 思考が、僕の中で激しく頭を振りながら暴走する。

 僕は家に向かって走った。

 走っているつもりだった。でも実際には、B級映画に出て来るゾンビの様に、左右に大きくふらつきながら、やっとのことで歩みを進めるのが精いっぱいだった。

 特殊能力?

 どういう事?

 天罰が下るべき変質者が、何故にそんな有り得ない力を手中に出来るのか。

 不公平だ。

 分からない。

 ただ、分かった事が一つある。

 奴は見ていたのだ。事故の一部始終を。

 あの時感じた、全身を切り裂くような憎悪の視線。

 奴にはその正体が分かっているのかもしれない。だが素直に聞き出せる相手でもなかったし、例えそうであれ、聞き出す気にはならなかった。

 ようやく、玄関までたどり着く。  

 現場検証も終盤になりつつあるのか、庭先を行き来する人影がかなり減ってきている。変わって、早くも事件をかぎつけたのか、マスコミの関係者が門の前からこちらに向けてカメラの砲列を連ねていた。

 また、世間の眼の晒し者になるのか。僕達は少しも悪くないのに。

 あの時の様に。 

 あの時もそうだった。散々マスコミに晒され、人々が興味を引くように誇張された情報や根拠の無い話までもが世間の眼に留まる羽目となった。

 姉が不登校になったのは、恐らくそのせいだ。事件そのものの卑劣性もあるが、どちらかと言うと世間から注目を浴び、学校でも誇張された噂が広まり、姉の精神は疲弊し、耐え切れなくなったのだ。

 僕は、カメラの集団に侮蔑の視線を投げ掛けながら、家に入った。今だざわついている外とは対蹠的に、家の中は、重苦しい静寂が、部屋の隅々に至るまでずっしりと埋め尽くしている。

 気怠い身体を引きずるようにして、僕は二階の自分の部屋へと向かった。姉の事も気にはなったが、ただ立っている事すら辛い今の僕には、励ます事も何も出来そうになかった。

 それに、姉を励ますどころか、下手すりゃかえって心配かけた挙句に、何故そうなったか厳しい追及を受けそうだ。

 今の様な精神的にぼろぼろの状態で、あの男の事なんか言えない。

 倒れ込むようにベッドに身を委ねる。

 隣の部屋から、時折ぼそぼそと語る姉と沙耶のか細い声が聞こえる。

 奴が手に入れた力って、サイコキネシス? 念力で自分を中空に浮かした?

 それともテレポーテーション? 瞬間移動ってやつ?

 僕の関心は、もはや葉月ではなかった。

 今となっては、奴の存在の方が深刻だ。

 でも何故、さっき奴はわざわざ僕の前に現れたのだろう。

 隣の部屋のドアが開き、足音がこちらに近付いて来る。僕は上半身を起こすと、足音の主を見定めた。

 沙耶だ。彼女は憔悴しきった表情で、それでも仄かに笑みを浮かべながら、僕の傍らでベッドに腰掛けた。

「姉さんは、どんな感じですか?」

 僕の問い掛けに、沙耶は優しい面立ちで頷いた。

「大丈夫。落ち着いてる。美汐には、蒼人君がいるから大丈夫って話しておいたから」

「でも、僕、何も出来ないです」

「自身を持って。あの感覚を感じ取れるのはそれなりの力があるって事だから」

 沙耶の力強い言葉に圧倒されながらも、僕はその台詞に秘められた言霊をゆっくり咀嚼していた。

 姉を守れるのは僕だけなのだ。

 あいつの出現で、揺るぎかけていた僕の自信が再び息を吹き返していく。

 そうだ、奴のこと、沙耶には話しておくべきか。

「蒼人君、外で何かあったの?」

 心配そうに顔を覗き込む沙耶をジッと凝視する。

「何故、わかったんですか?」

 僕はどぎまぎしながら答えた。

「顔みりゃわかるよ」

 さらっと返す沙耶に思わず驚きの眼差しを注ぐ。この人、何もかも御見通しの様だ。

 僕の中で秘めておこうと思っていたプレッシャーが、瞬時にして砕け散っていく。

 何となくほっとしている自分がいた。まだ一言も話してはいないのだが、不思議な事に気持ちが明らかに軽くなっていた。

「奴が僕の前に現れたんです」

「奴って?」

「昔、姉の前に現れた変質者です」

「えっ?」

 沙耶が驚きの声を上げる。

「でも、現れ方が変なんです」

「変? どういう事、それ」

 沙耶が訝し気な表情で僕を見つめた。

「昔のままなんです。もう何年もたつのに。それにあいつ、宙を浮いていました」

「まさか」

「本当です、信じられないけど」

余りにも突拍子のない話だけに、信じてもらえるかどうかは不安だったが、沙耶は黙って僕の話に耳を傾けてくれた。話の流れ上、奴が初めて僕達の前に姿を現せた所から事件当日の様子まで、事細かに彼女に話す事になったが、流石に、僕がラケットで殴って崖から落としたとは言えなかった。

「蒼人君、そいつはたぶんもう死んでるかも」

「えっ? でも奴は死んじゃいないって言ってましたよ」

「そういう輩って、大抵自分が死んでいる事に気付いていないの」

「姿が昔の若いころのままというのは?」

「霊って、思いが強い時の姿で現れる場合がある」

「そうなんだ」

 僕は頷いた。同時にそれは、あの時のあいつが姉に執着していたという恐ろしい現実を目の当たりにするようで、直視しようとするには不快感ばかりが先立ち、あえて咀嚼したくない気がした。

「でも霊体だったら、この家にも自由に出入り出来るんですよね。でも、そうでもなさそうなんです。前に見た時はベランダでした。あの時も、家の中には入らずに、外から姉の部屋を覗いているだけだった」

 彼女は黙って僕の話を聞くと、中空に目線を漂わせた。そのしぐさは、決して僕の話を軽んじているのではなく、むしろ自身の思考を俯瞰しているように思えた。

「たぶん、この家が守っているのかも。うーん、でも、どちらかというと……蒼人君がお姉さんを守ろうとする、思いの蓄積かな?」

「えっ? そうなんですか?」

 沙耶が導き出した答えに、僕は何処か恥ずかしい様な、こそばゆい様な妙な感覚に襲われていた。

 僕が姉を守りたいのは、常に意識下に潜ませている願望だった。そうありたい、そうなればいいと意識下でこっそりと描いていた、ささやかな夢。

 でも。

 僕の力で、あいつの情念を抑えきれるのだろうか。

 沙耶には言えなかった事がある。

 姉が自身の下腹部をまさぐっているのを、奴は猥雑な笑みを浮かべながら窓外からその痴態を覗き見た挙句、果てていたのだ。しかも手に放出した不愉快な証拠を、僕の眼前に突き出して見せて来たのだ。

 これ以上、姉が汚された事実を認めたくない。

 それに、例え直接的ではなかったとしても、二度と繰り返したくはない。

 守れるのだろうか。

 本当に、僕の力で姉を守れるのだろうか。

 そんな葛藤が、僕の意識を容赦なく苛んでいた。

「これからもお姉さんを守ってあげてね。私も協力するから」

 沙耶は、複雑な表情で返答に困っている僕の肩をそっと叩くと、そう言い残して姉の部屋に戻っていった。

 不思議と、肩の力がすっと抜ける。

 このタイミングでこのフォローの台詞。沙耶は全て僕の思考を見通しているのか。

 驚くべき恐ろしい能力。でも、心強い。

 沙耶が力を貸してくれるのだったら、何とかなりそうな気がする。

 比較的物静かな姉とは対照的な、快活で行動力のある沙耶の存在は、気が付けば今の僕にとってなくてはならないものになりつつあった。

 何だろう、この感覚。

 心の奥底から生上がって来る切ない思いと、妙に気の高ぶる落ち着かない衝動のウェーブが、幾度となく寄せては返している。

 あの時と一緒だ。潮溜まりのそばで、姉のスカートの中を覗き込んだあの時と。

 沙耶はしばらくの間、姉に付き添っていたが、門の前にたむろしていたマスコミが引き上げたのを見計らって、人目を避けるように帰宅の路についた。 

 母は彼女に、迷惑でなかったら明日もまた姉と一緒に居てもらえないかと声を掛け、彼女もまた、是非そうさせて欲しいと答えていた。

 沙耶を玄関まで見送る。

 沙耶が去った後も、各種メディアからの取材の電話は相変わらず殺到していた 母は姉に声を掛けながら、今だ警察の事情聴取から戻らぬ父の代わりに、絶え間なく鳴り続ける電話の応対に明け暮れていた。

 母を助けなければならないとは思う。

 でも、僕が応対したところで、相手は満足出来ないだろう。

 僕は憔悴した母を尻目に、自分の部屋に戻った。

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