第14話

 皆んなでダンジョンに向かいながら、ヒレとロースの値段を決めていこうと思う。


「ヒレは希少部位なんだよ。一匹から取れる量が少ないから少し高めに設定しようか?そんで、肩ロース、背ロースの順で高くしよう。ヒレを100g30ガルドで、肩が20、背が25でどうかな?」


「30ガルドは高くないか?売れ残ってしまうかもしれないぞ?」


「どうだろうね?そもそもヒレっていうのは、100キロの大型のイノシシだとして、一匹50キロの食肉部分から、たったの1キロ弱位しか取れない部位なんだ。だから多分全部売れちゃうんじゃないかな?」


「でも、一箇所で売っても限界があるかもですね。いつも150キロ位だとすぐに売れてしまいますけど…1200キロですよね?」


「まあアキの心配も分からなくはない。売れ残ったらその時にまた考えようぜ!ひょっとしたら噂が広がって購入希望者が列を成す日が来るかもしれないぜ?それに少し秘策があるんだ!」


 そんな話をしながらダンジョンに到着して中に入って行く。特に入場料や入場規制が有るわけではなく、誰でも入ることができる。当然自己責任である。死ねば養分!


 昨日の明かりの魔石を地球から持って来た杖の先に灯して、パーティーは真っ直ぐに3層を目指すのだが、俺だけアッチウロウロ、コッチウロウロしながら草を集めていく。今日は毒草はスルーしていく。相場の値崩れ防止である。


 3層に辿り着く頃には既に俺のいつものカバンはパンパンである。今日は背中には背負子を背負うので、前側でカバンを持つ。カバンはパンパンだが、重量は全然軽い。


 パーティーはイノシシを狩って皮と肉に分ける。魔石を早速もらって俺の暇つぶしが完成する。一匹目は俺以外で解体してくれているので、魔石を握りながらイメージをしていく。もうエアースラッシュなんて魔法はイメージしていない。


「火炎、爆発!火炎、爆発!燃えろ〜、爆ぜろ〜!燃えろ〜!!爆ぜろ〜!!」


「ユータ君、また始まったですよ?」


「でもなんか真面目にやってるみたいだよ?そっとしておこ?ね?」


 俺は火魔法が撃ちたいんだ!最初は火魔法が良いんだ!これは俺の中にある厨ニ心がそう言っているんだ!


 皆んなが解体中に俺は延々ブツブツ言い続ける。イメージは完璧なはずなんだ!炎なんて誰でもイメージ出来るし、爆ぜるイメージも、俺なりには出来ている。映像でガス爆発を見たことが有るので、それのイメージ!


「爆ぜろ〜〜!!!」


ポン!


「なんか出た!!」


「なんか出ましたね」

「なんか出たな!」

「なんか出たですね」

「なんか出たんだよ?」

「何か出たな」


 どれが誰かわかったら大したものだぜ!皆んなそれぞれに喜びの声をあげる。爆発の大きさは、マジシャンがステッキを出すときにボワッと燃える位の火力だったけど、最初だから良いんだこれで!俄然、やる気が出てきたぜ!


 すると俺の身体から、何かが湧き出て来るような感覚が襲ってきた。初めて魔法を使ったからかな?


 初めて尽くめだからレベルが上がったのかもな。でもレベル15まで上がっているけど、今迄こんな感じはしなかったけどね!


 まあまずは使った魔石を調べてみる。表示には変化がない。明かりの魔法を使った時は、点灯残り時間が表示されていたのだけどな。


 もう一回撃ってみるか!


「爆ぜろ〜〜!!」


ボン!!


「「うわ〜〜!」」

「「「うひゃ〜!」」」


 身体から何かが抜けた様な気がした。そして今度は先程よりも大きな爆発が起き、爆風でダンジョン内にホコリが舞い、視界不良に陥った。


「ちょっとユータ!!アタイらを殺す気か?ぶっ殺すぞ!テメーコノヤロー!」


「ユータやり過ぎだよ?ホコリだらけになっちゃったよ?」


「ホント、スミマセンでした。この通りです!土下座しますんで許してください!」


 俺は人生初の土下座をした!


 それにしても今回の爆発は、敵にダメージを与えられる位には大きかった。イノシシに向かってやったら、きっと内臓が飛び出すくらいの威力だろう。


 そして魔石は変わらずまだ有る。無限に使えるのか?まあ、どっちにしても爆発系はもう止めておこう。次やったらマジで殺されかねないからね……。水にしよう!水なら絶対に役に立つだろう。


「水よ滲み出ろ〜!ゆっくりじっくり滲み出ろ〜〜!」


ブッシャ〜〜!!


「うわー!凄いです!凄い勢いで吹き出してますー!」


「ホントスミマセンでした!」


 また身体から何かが抜けた。そして俺は人生2度目の土下座をしているところだ。どうやらまだ、威力の調整は出来ないみたいだった。イメージだけしても、魔法に込める力的なものが有るような気がする。きっとそのバランスが大事なんだろう。そして魔石は変わらず。


 多分魔法が発動する度に抜けているのは魔力だと思う。魔石が補ってくれているはずなんだけどね… 


 皆んなに、魔法を使うなら離れて!と言われたので、距離を取り、安全を確保して、魔法の威力を調整する練習をしようと思う。


  まずは定番の指先に火を灯す練習をしようと思う。きっと先程は力みすぎて、それが魔法の大きさに影響してしまったのかも知れない。なのでまずは力を抜き、そっと指先にマッチ位の火をイメージする。


「ポ」


 指の先に火が点った!しかもナイスなサイズ!マジかー!もう出来ちまったぜ!


 やはり力の込め方次第で威力が変わるのは正解だったようだ。きっと力=魔力となってしまうのだろう。……待てよ?俺って魔力あるのか?サバイバーだぜ?魔法の発動自体はきっと魔石で行われて居るのだろうが、威力の調整は俺の魔力だと思われるのだが。


 これは早々にダンジョンギルドへ行って、能力値チェックをしないと行けないようだ。


 またイノシシを解体中に気になったことを質問してみる。


「ギルドで能力値チェックした人っているの?どんな感じだったか教えて?」


「ボクはあるですよ。なんかクリスタルに触れると能力値が表示されるです。ボクがやったのは、だいぶ前だからまたやろうと思うですよ」


 よく聞くと皆んなチェックしたことは有るみたいだ。ただ、最近はやっていないと言うことだった。それなら近々皆んなで行こうと言うことになった。


「能力値に魔力とか、そういう項目って有ったりするの?」


 皆んな一斉に「あるよ」「アタイらゼロだぜ!」と返事が帰って来た。やはり有るのか。と言うかゼロなのか…これは気になるぜ!もう今日行っちまうか?


「変装したらバレないと思わないか?頭に手ぬぐいを巻くとか」


「それなら、私の陣鉢で目元ギリギリを隠したら行けるかもな」


 確かにそれなら行けそうな気もする。そもそも本当に追われているかもわからないからね。念の為用心しているだけだ。


 よし、予定も決まり、解体も終わったようなので次の獲物を探し始める。そういえば敵を探すのも結構ランダムに歩いて探しているんだよな。各フロアーは結構広い。メインの道と、小広間に繋がる小道などがあり、小広間に確実にボアが居るとは限らない。


 大体の湧き場所は決まっているのかな?ジャガイモを食べれる場所に居るのだろうからな。そういえば昨夜、ポテチ作るの忘れてたわ……それよりも。


「敵ってどうやって探しているんだ?勘で探しているの?」


「いや?アタイの嗅覚感知で探してんのさ!猫人族の特性にシーフのジョブ特性が合わさって感知能力が上がっているんだ」


「なるほどね。確かフィンのスキル自体は罠感知だったよね?それプラスで猫人族の特性が嗅覚感知で、更にシーフのジョブ特性が感知能力がアップすると?凄くね?でも結構ランダムに移動していない?」


「あぁ、気付いたか?流石だぜユータ!その通りランダムに歩いているんだ。敵の場所はちゃんと分かっているんだぜ?」


「何故そんな事を?」


「まあそのうち分かるさ!それよりもウロチョロしているんだからドンドン草刈ってくれよ?ギャハハ」


「あぁ、それは問題ないぞ、そろそろ2個目のカバンがパンパンになる所だから」


 既に1つ目のバックはラミに持ってもらっている。軽いし、ラミのジョブ特性で力も上がっているようなので問題ないと思われる。この世界では男が荷物を率先して持つなんて風習は無いんだろうな。なんせジョブが全てだから…女性でも力持ち!


 そして俺の持つカバンからは、草から少し不思議な匂いがしている。俺にとっては馴染みの深い匂いなんだよね!






 








 






 

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