第24話

 館に帰ってきた俺たちは、ボスにまずは館の案内と、風呂に入れてやれと言われたので、アンネを連れて元の俺等の部屋を案内し、トイレ、食堂、井戸を案内する。そしてオレの部屋に来た。


 部屋には全員揃って居たので、アンネを紹介してあげる。皆んなアンネの美しさにビックリしていて、俺の手の速さに気をつけろと警告している。


 別に俺の手が早いわけでは無いような気がするんだけど…俺から手を出したのはラミだけのような…でもこれは男が口に出しては行けない事だと本能が告げている。


 アンネは特注ベットの大きさと、3人用の風呂桶に目を丸くしている。そりゃあ奴隷の部屋には似つかわしく無い物だよね。きっとそこら辺の貴族でさえこんな大きなベット使ってないよね?


 丁度ミアとソラが居るので、風呂に水を張るのをやってもらう。ポムはこれで魔法使いが生えた。なのでミアソラにも期待している。魔法メイドと魔弓士の完成だ!知らんけど…。


 魔石を握りながら水を張っていると、案の定ミアソラに変化があった様だ。


「ユータ!来たよ、力が湧き上がってきたよ!やったー!これでユータの力になれるよ!うぅぅぅ」


 とミアは大騒ぎした後に泣き出した。今迄は戦闘ジョブではなかったミアは喜びすぎて泣いてしまった様だ。


 ソラの方は冷静に状況を確認しているようだ。隣で大騒ぎされちゃうと逆に冷静になれちゃう現象か?


「魔法メイドに魔弓士?スキルも魔法食に魔弓ですって?どうなっているのですか?先程までは普通にメイドとアーチャーだったのに…このお風呂に原因が?どうやって水を張っていたのですか?」


 どうやら俺のジョブ予想は大当たりだったようだ!


「それは秘密さ。俺のジョブは知っているよね?そのスキルで色々調べたら魔石の秘密が分かっちゃったんだよね。それよりもアンネは鑑定出来るんだっけ?」


「ええ、それはこの指輪のお陰ね。それよりもワタクシも魔法使いになれるのかしら?」


 そう言われて俺はアンネの指輪をジッと見つめる。俺のスキルは、こういう製品化した物は何も見れないんだよな。


「それは教えられないよ。教える義理も無いしね。まあもう少しでお風呂に入れるから入ったら部屋に戻りなね」


「あら、随分と冷たいのね?何か気に触ることでもありまして?」


「そりゃあ有ったでしょうよ。あの時強引にアンネに買われてたら俺は死んでたかもしれないんじゃ?」


「………それは本当に悪いことをしたと思いますわ…でもあの時はこうなるとは思いもしませんでしたのよ?本当よ?」


 まあ正確な情報が無いので、何がどうなって取り潰しになったのかは分からない。そしてアンネの家族は皆、打ち首となってしまっている。


 アンネだって殺される寸前まで行っていたのだ。そんなアンネに冷たく当たるのは少し可愛そうな気はしている。


 それに魔法陣の情報を探ってくれた恩もあるしな。


「分かった、アンネを信じるよ。結果俺は生きている訳だしな。アンネは辛かったと思うよ、マジで」


 そう言ってあげると、俺にバッと抱きついて来て、上目遣いに見つめてくるアンネの目には、みるみる涙が溢れ出してきた。


「…怖かった!……怖かったんです!!父様も母様も兄様たちも連れて行かれて……戦闘奴隷は独りも帰って来ず、ワタクシ一人で館で待っていたのです……助け出されるまで…ウワァァァン」


 最後は大泣きしてしまった。きっとずっと気を張って居たのだろう。緊張の糸が一気に切れてしまった様だ。


 俺の上着はアンネの涙と鼻水とヨダレでグチョグチョになってしまっている。それでも泣き続けるアンネの頭をそっと撫でてあげる。他の皆んなも囲んで励ましている。


 落ち着いて来たアンネは、俺に謝りながら恥ずかしそうに離れていく。とりあえず風呂の準備は出来ているのでアンネに入ってもらう。


 オレの部屋のベットからは風呂桶は見えないので安心して入ってね?


 待っている間にソラの魔弓士の新たなスキル「魔弓」が何なのか皆んなで話している。


 ソラがスキル魔弓を発動すると、魔力で出来た弓が左手に、矢が右手に表れた。メチャクチャカッコイイ!!これで矢の消費もゼロだね!


 そしてミアのスキル、魔法食が何のことなのか分からない。魔力で食事が出せるのか?


「魔法食が謎だよな。ボスの鑑定でもスキルの内容までは調べることが出来ないからな」


 皆んなもウンウン言っている。そこに風呂場からアンネが声を掛けてきた。


「魔法ギルドに行けばスキルなんて調べられますわよ?多少お金は掛かりますが」


 へぇ、そうだったのか…よりによって魔法ギルドか…。俺は行けないわ。


「そういえばアンネ、鑑定の指輪少し見せて貰えないかな?俺の持っている魔石の秘密と交換でどうだ?」


「え?そんな好条件で良いのですか?それなら指輪如き、幾らでも触らせて差し上げますわ。貴重な情報はお金には変えられなくてよ?」


 マジか…勿体ないことしたのか?いや、俺にとっては鑑定の指輪の情報こそ金よりも価値がある。コレならイーブンだ!


「いや、アンネは金で買えるから指輪には価値がないと思っているのか?こちらからしたらその指輪もとんでも無い価値が有ると思うぞ?」


「あら、そうなのかしら?お父様に買って頂いたものだから、気にもしていませんでしたわ?」


 くっ、世間知らずの貴族令嬢が…まあ良い、どっちにしろ指輪を借りられるぜ!


 早速指輪を取りに風呂場に入る。


 当然そこには真っ裸のご令嬢が風呂に入っているわけで…大騒ぎになりましたとさ。ラッキースケベ頂きました…ラッキーか故意かは神のみぞ知る…。


 それでも指輪を借りれた俺は、早速指輪の作りが何なのか眺めてみる。


      鑑定の魔石

       レア度8

 人や物の情報が読み取れるようになる


 おぉ!こういう情報は調べられるのか!!待てよ?それなら認識阻害の指輪も見れるのか?


     認識阻害の魔石

       レア度8

  自分の情報を撹乱することが出来る


 成る程!ジャミング機能か!それだからこちらの情報が読み取れなくなるのだな。


 そこで俺は思った。コレなら俺でも作れるんじゃね?と。


 結局は魔石にこの仕事をさせてるだけと言う事だからね?熱や水を出すのと原理は一緒だろう?


 フムフム。魔石の可能性は無限にあるな!

後は使用したときの感じでイメージは完成しそうだ。


 そう思って俺の認識阻害の指輪を外して自分を鑑定してみる。


 遠藤裕太。    17才

 レベル       21

 ジョブ  サバイバー20

      付与魔導師 3

 スキル  サバイバルの知識

         魔法の知識



 待て待て待て待て!ヤバイヤバイヤバイ!


 俺17歳になっている!わ~い!


 いや、そこじゃないんだ…問題なのはそこじゃないんだよ!ジョブ変わっちゃってるよ!しかも魔法使いからランクアップして魔導士、しかも付与つきだよ?


 そりゃあ最近色んな魔法を自分なりに開発したつもりは有る。そして魔法もかなり頻繁に使って、魔石にも熱と水を込めまくってはいた。そしてスキルも知識系が来てしまった…。道理で最近魔法の発想が溢れ出して来ていた訳だ…。


 問題なのはこの変化をボスに伝えるべきか?べきだろうな…どうせチョーカーを見たらバレるのだしな…


 はぁ〜……大きなため息が出てしまった。また返済金が、上がるのだろうな…


「どうしたのユータ?ため息出ちゃっていたよ?何かあった?」


「あぁラミ…どうせバレるから皆んなには話しておくわ…俺のジョブとスキルが変わっちまったんだ…これでまた俺の価値も変わってしまうなぁと思ってさ…」


「マジか!何になっちまったんだ?幾らになっちまったんだ?」


 フィンのデカい声で、風呂から急いでアンネも上がってきてしまった。まったく…フィンの辞書には隠し事と言う言葉はないんだろうな…。


「まあここで話してもしょうがないからボスの所に行こうか…アンネも風呂から出たことだしな」


 そう言って俺はアンネに指輪を返して、ボスの部屋へと皆んなで移動するのである。


 今、俺は認識阻害の指輪を外している。なのでボスと目が合った瞬間にボスの目がこれ以上無い位に見開かれている。


「お、お前…どうなっちまったんだ…ジョブが…」


「ボス!しっかりして!落ち着いて!」


 ソラに諭されて落ち着きを取り戻したボスは、姿勢を正して俺に向かってこっちへ来いと呼ぶ。


 ボスは何も言わずに俺のチョーカーを調べてから大きなため息を1つ吐いた。


「まあそうだよな…焦らすのもあれだからもう言うぞ?価値は2億、新しいジョブは付与魔導士。スキルは魔法の知識」


 一同呆然とする。



 


 





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