第22話

「ポム、ボスにジョブを見てもらおうぜ?ダブルジョブ持ちだったら指輪が必要になるかも知れねーからな」 


 ポムを連れてボスの所へ行く。すると言う前にボスが驚いた表情をした。答えは出ているな。


「おいポム!お前、ジョブが変わってるじゃねーかよ!何があったんだよ」


 ジョブが変わっている?増えてるんじゃなくて?どういうことだろう。


「ボス、ポムが何になってるか教えてもらえますか?」


「まぁ構わんぞ。ポムのジョブは『魔戦士』だな。そしてスキルはインパクトだと」


「魔戦士!!何それ?ちょー格好いいよそれ!」


 オレの厨ニ心が久しぶりに疼くぜ!剣に炎とか纏えるんか?そういう呼吸なのか?


「やりましたですよ、ユータ君!ボク、これからも頑張るですよ」


 俺はポムの頭をナデナデする。


「これ…好きなのです…」


 実際ポムがどれほど強くなったかはわからないが、魔法が使えるようになったことは喜ばしい。それにインパクトがどんなスキルかが気になるところだけどね。


 インパクト、そのまんまだと衝撃だったか?魔法使いになってから変わったのだから、衝撃は魔法的な何かなのだろう。


 まあ、ダンジョン攻略するのはまだまだ先だから、フルパワーでの戦闘など経験することは無いのだろう。


 部屋に戻って風呂に入りながらポムのコトを皆んなに報告する。風呂には俺の他に、ラミとポムが一緒に入っている。獣人は風呂が嫌いなようだし、いっぺんに3人しか入れないので、自然とソラミアかラミポムの組み合わせとなっている。


 まあどちらにしても天国ですよ…。垢はフィンとアキが擦ってくれるしね。


「ラミも魔法が使えるようになったら魔戦士なんだろうな。スキルが何に変わるのかな?魔闘気だとか!格好良いね!ソラは何になるんだろう?ダブルジョブになるのかな?魔弓士とかか?何か格好いいよ!魔力の矢を撃てたりしてな!」


「それはそれで格好良いな!ユータは魔サバイバーでよかったのにな!魔バイバーか?格好わりーか!ギャハハ」


 フィン、マジこいつは……ベットの上だとしおらしいのに…は!これが猫を被るということなのか!スゲー!まさに絵に描いた様だ。


 それにしても魔サバイバーでも、魔バイバーでもなくて良かったわ…マジで…むしろダブルジョブと言われてる方が格好良いんじゃ?高額な指輪が必要になるんだけどね…。


「そう言えばさー、前に闘技場で稼げるってボスが言ってたような気がするんだけど、そんなのあるの?」


「あるよ?ユータは闘技場に行きたいの?一緒に行く?観戦だけでも楽しいよ?お金も賭けれるしね?」


「いや、行きたい訳では無いんだ。ただ現在どれくらい強いのかが知りたいなーって。いつもボアじゃわからないじゃん?」


「そんな事考えた事も無かったよ。闘技場で戦うには、レベル的には低いだろうな。ただユータは魔法を自在に操れるからな」


「そうですよ!爆発させちゃえば勝ち抜けられますよ!」


「ユータの場合は魔法で牽制、隙を付いて近接、そしてまた離れる。こんな感じじゃねーか?」


 フィンが身振り手振りで俺の戦い方を解説してくれる。わかりやすいぞフィン!ちなみにそれはヒットアンドアウェイって言うんだぞ!


「勝ち抜くとどうなるんだ?金が貰えるだけとか?それとも名誉か?」


「普段は一戦ごとに登録して、勝てばお金も貰えるけど、年に4回、チャンピオンズトーナメント(CT)があるんだ。各トーナメントのチャンピオンが、最後の月に御前試合をするんだ。そこで1番になると、皇帝から最強のジョブ『剣聖』と大将軍の称号を受け取り、帝国軍にスカウトされる。そして残りの3人は『剣豪』のジョブと将軍の称号が貰える」


「ジョブが貰えるのか、ソラ!!人工的にジョブを授けるってなんなんだ?」


「それがわからないのです!国家機密みたいですよ?でも、実際皇帝のジョブは代々『支配者』になるのですが、即位してからジョブが変わるんですよ!」


 それはスゲー事ですよ。ジョブを、選べるって事じゃないですかい?そんな事が出来るからこんなにデカく領土を広げられたんだろうな。


「そしたら全員剣聖にしちゃえばいいんじゃない?そうしたら最強帝国の出来上がりじゃん」


「それは無理らしいよ?よく分からないけど制限があるみたいよ?」


 そりゃあそうだよな。無制限だったら既に制覇し終わってるよな…


「大将軍や将軍って事は戦争で指揮を取ったりするんだろ?いきなりそんな事出来るものなのかね?」


「それは無理なのですよ。しっかり軍で勉強するのですよ」


 そりゃそうか。名選手、名監督にあらず、ってやつだな。


「あとCTとは別に年に1回、強い者を決める大会があるぜ!この大会は帝国中で予選が行われて、決勝トーナメントはここ帝都で行われるんだぜ!こっちはお祭り要素がデカいな!」


「優勝者にはその年、帝国中の鍛冶師が集まる大会の優勝者が作った武器防具一式が貰えるんですよ!」


 へ〜。アキの話しは興味深いな!なんせそれは最強の武器と防具と言っても過言では無いわけで!


「ちなみにその大会の予選はもうすぐはじまりまるぞ」


「ユータは魔法使えるからさ?魔法で行動しづらく出来たら良いのにね?のろのろになれ〜ってね?」


「はっ!!!デバフか!!そうか、バフもか!そうだよな!流石ラミだぜ!!」


 そう言って俺はラミの頭をもみくちゃにする。ラミはエヘヘへと嬉しそうだ。


 今迄、攻撃魔法しか頭に無かったけど、考えたら仲間の強化や、敵の弱体、周囲の索敵など、やろうと思えば幾らでも魔法で出来たじゃないか!やはり弱い敵と戦っていては成長は出来ないな。早く返済を終わらそう!


       ★★★★★


 そこからの一週間はダンジョンに行きながら魔法の練習をし、帰ってきてから胡椒と香草ニンニクを商品化する為に色々と試している。そして砂糖は…カチカチの水飴が完成していた。砕けば甘くて美味しいぞ!


 魔法の方は俺とポムは、かなり色々な事が出来るようになった。その中でもかなり有効な魔法がまずは身体強化。そして探索用のソナー。こちらはポムは出来なかった。多分イメージが出来ないからだと思う。  


 まず魔力を俺を中心に薄く広く周囲に放出して、周りに何が有るか確認することができる。この魔法を組み合わせて、かなり狩りと採集がはかどるようになった。


 胡椒の方は粗挽きにして陶器で出来たヒョウタンみたいな形の入れ物に入れてみた。乾燥ニンニクはスライスにして香草と一緒にビンに詰める。これを調味料と言い張って登録すれば良いわけだ。


 後は商人ギルドでボアの肉を焼いて実食してもらえば良い。間違いなく美味しくなる。


 そして予定通り、ソラとミアが奴隷から解放された。ミアの分はポムの稼ぎで支払った。これでミアの魔法の訓練が出来るようになるし、レベル上げも出来る。ミアもとても喜んでいたので俺も大満足だ。


 そして人手が増えれば手分けして植物ダンジョンに行くのも良いだろうな。まだオリーブやトウガラシ、トマトもソースに出来るからな。そうしたらパスタを作りたいね!遣りたいことが一杯ありすぎる!


 今日はソラとミアが役所へ行くと言うのでダンジョンは休みにして、ボスに商人ギルドへと連れて行ってもらうことになっている。


 ボスが商人ギルドに登録している商人なので、交渉もスムーズに行くだろう。なんせボスが既に胡椒とニンニクにハマっているからだ。


 商人ギルドに入ると、受付手前の案内人が、ボスを見て飛んでくる。


「アケチーネさん。本日はどういったご要件で?奴隷市はまだ先ですよ?」


「今日はこいつの開発した商品の登録に来た。マスターは居るか?」


「マスターですね?今確認してきますから、そこのソファーに座ってお待ち下さい」


 スゲー!いきなりギルマス案件みたいですよ!ボスと来て良かったわー!


「アケチーネさん、マスターがお会いすると言ってますのでマスタールームへどうぞ」


「おう、ご苦労さん。裕太、行くぞ!」


 そう言って、二階にあるマスタールームに入って行く。


 そこにはビシッと髪の毛をセットしていて、眼鏡を掛け、一切隙のない見るからに仕事の出来そうな老人が、立派な椅子に座ってこちらをみている。



 


 



 


 


 





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