第8話

 値札を見ると数字が読めない…惑星が違うと数字も違うのね…当然か。地球では数字は万国共通な物がある気がしたけど…


「これって幾らって書いてあるの?」


「あぁ。一本2千ガルドだな。二本で4千ガルドか」


 ソラの口から更にわからない単位が出てきたぞ…。


「あーゴメン。1ガルドが分からんのよ…硬貨だとどれ?」 


「何も知らないユータ。カワイイね?ウチが教えてあげるね?1ガルドが銅貨1枚ね?100ガルドが銀貨1枚だよ?」


「なるほどな。となると砂利銭がすごそうじゃね?銅貨99枚とか銀貨99枚とか地獄じゃね?」


「ユータさん面白〜い!アタシはその発想が好き!えっとですね、10枚で大硬貨、50枚で穴開き硬貨になるんですよ」


「へぇ、ありがとな。教えてくれて」


 硬貨に関しては馴染めそうだ。後は物の価値については追々慣れていけばよいかな。

 

 店の店主に金貨1枚を渡すと、穴開き銀貨1枚と大銀貨1枚が帰ってきた。これなら嵩張らないで良いね。


 ナイフには鞘は付いて居るのだけど腰に回すベルトがない。皆に聞いて見ると防具屋に有るそうなので移動する。


「ユータの立ち位置は何処になるんだ?前線に出るならプレートかスケイル。アタイらは攻撃は回避するから動きやすさ重視で革鎧だけど」


「んー…良くわからん。ただ、俺はこれが気に入った!かなり格好良い!」


 そう言って革で出来たコートを手に取った。裏地に金属のプレートが裏から打ち付けられていて、表面に飛び出た部分が綺麗に装飾されている。カラーは黒っぽい革をベースに明るい革で装飾されていてかなり格好良い!


「わあ!ブリガンダインですよ!絶対ユータ君に似合うのですよ。ドワーフのボクが保証するですよ」


「マジか!じゃあこれにしちまうか?これって幾らって書いてあるの?」


「5万ガルドだってさ。残り予算は2万6千だから予算オーバーだな!ギャハハ」


「くっ……マジか…!全然足りないじゃん…もっと借りて来るか?」


「待って。実はこんな事もあろうかとボスが娼館を出るときに私に予備で金貨3枚を追加で渡していたんだよ」


「マジか!じゃあこれ買えちゃうじゃんかよ!流石はボスだぜ!オヤッサン!このコートをくれ!」


「誰がオヤッサンだ?この野郎!俺はまだ31だぞ?それよりも面白いボウズだな!そのコートを選ぶなんざかなりの目利きだぞ?」


「ん?そうなのか?ひと目見て決めてたぞ。それよりもこのコートに合う小手とか脚はあるのか?」


「お前、何か良いな!気に入ったぜ!待ってな、揃えてやるから。予算はあるのか?」


「あ、いや、残り5万6千だけだった…」


「そうか…ちょっと待ってろ。見繕ってきてやるからよ!」


 そう言ってオヤッサンは奥に入っていった。


「ユータは女タラシじゃなかったかも?人っタラシだったね?」


「何だよラミ?そもそも女タラシって何だよ、ヒデーな!」


「気付いていない…?天然怖い…?」


 暫くすると、一抱えの装備をもってオヤッサンが戻ってきた。


「ここから選べ!どれでもセットで5万6千で良い!」


「まじかよオヤッサン!それじゃあ遠慮なく選ばせて貰うぜ!」


 俺はプレート付きの革のブーツと、小手も甲の部分にプレートが付いた物を選んだ。そしてコートのブリガンダインを羽織て腰の革のベルトを締めナイフを鞘ごとベルトに通す。


「ユータ、格好良い!惚れ直したよ?」


「マジで格好良いな!流石はアタイの旦那だぜ!」


「ユータさん!素敵です!とても似合っています」


「か、か、格好良いぞ、ユータ…ボソボソ」


「ソラが照れているですよ。まあユータ君が格好いいのが悪いかもですね」


「そんなに似合うか?それなら良かった!オヤッサン有難うな!」


「おい!オヤッサンって…まぁ良いか!ユータって言ったか?覚えておくぜ!毎度ありな!何かあったらまた来いよ?直してやるからな」


 俺は有り金全てを渡して店を出る。借金は増えたけどマジでこのコートは良い作りだ。刺繍も凝っているし表に出ているリベットにも処理が施されていて、くすぐられた厨ニ心が大変満足している。


 これでやっとダンジョンに行けるし、俺のジョブとスキルの検証が出来るぜ!何か俺、こっちの世界を満喫し始めていない?


 待てよ?そういえばサバイバルって言葉は困難な事を乗り越えて生存するという意味であってるよな?まさに理由もわからずに異世界に放り出されたこの状況を乗り越える為のジョブとスキルなのか?そう考えると俺はこの世界では勝ち組だろう!フハハハハ!


「ユータが壊れた?何かブツブツ言って笑い出した?」


「甘いなラミ!こういう時は見なかったことにするのが愛だよ!ギャハハ」


「おいユータ!笑ってないで、そろそろダンジョンに行くよ!」


「…はい、ソラ。…俺笑ってた?心の声が漏れちゃってた?スゲー恥ずかしいんだけど」


「いや?何も笑ってなかったよ?なあラミ?」


「ん。見なかったことにするのが愛だよ?ウチは何も見てないからね?」


「マジか…!やっぱり漏れてたのか…まぁいっか、早く行こうぜ!」


「ユータ君は不思議な子!ボクも目が離せなくなって来たですよ」


「そうだな。私も同じだよ」


「ポムとソラが落ちた?これは困ったかも?愛人がドンドン増えていく?本妻のウチがしっかりしないとね?」


「何言ってんだよ!正妻のアタイが管理するから邪魔すんじゃねーぞ!」


「アタシは愛人でも良いかも。ユータさんと一緒に居られるなら!」


 俺等は門を抜けてダンジョンに向かって歩いている。確か一番近いダンジョンと言っていたと思ったけど、どうだったかな?


「確か一番近いダンジョンだったよね?何処にあるの?」


「ん。アソコの小高い丘の根元だよ?」


「お、もうすぐだったのか。ボア?だっけ?それは何層にいるの?」


「ボアは3層だぜ。一層からウサギ、鹿、ボア、馬、ウルフ、牛、バイソン、ベア。そこからグレードが上がってまたウサギからって感じかな。まだまだ階層はあるけど手前はそんなところだ。俗に言う獣ダンジョンだな。もちろん上のグレードの獣の素材の方が高く売れるんだけど、潜るのも倒すのも大変だしな」


「そうか。俺は牛の肉が好きなんだけど6層か。いつか食って見たいな」


「6層だと一晩ダンジョン内で泊まりになるぞ?それだったら3層で狩る方が効率が良いんだぜ!」


「それは残念だ。まあいつかは行ってみたいって程度だから気にしないでくれ」


「それに牛の肉は柔らかくて人気が無いんだぞ?歯ごたえが有ったほうが良いだろ?」


「ソラは歯応え派か。それともそれが普通なのか?俺の故郷は柔らかい牛の肉が最高級なんだぞ?こりゃ一度食わせてやらないと駄目だな!」


「ウチはユータが食べたいなら付いて行くよ?ボスにも泊まりになるって言っておけば許可くれるよ?」


「まあすぐじゃなくても良いんだ。そのうちラミには付き合って貰おうかな?」


「ちょっと!なんでラミだけなのさ!アタイも行くよ!」


「もちろんアタシも行きます!」

「ボクもボクも!」

「もちろん私だって」


「結局皆んな来てくれるのか?有難うな!まあ取り敢えずはそのボアってやつを狩ろうぜ!」


「「「「了解!」」」」


 俺達はダンジョンに入って行く。入り口には何かの原石がハマった石板の様な物が設置されているが、何なのかは謎らしい。中は天然の洞窟になっていて壁が薄っすらと光っている。本当に薄っすらとだが、全体が光っているので分かり易い。


「先頭はアタイが歩くからユータはその後ろかな。まあ3層までは罠もないし特に気をつける事も無いんだけどな!」


「そうなのか。あ!アソコにキノコがあるじゃん!あれ?何か表示が出てきたぞ?」


 キノコを見ると、ゲームの画面のように名前、種類、レア度、効能、特性が文字で表示されている。これは凄い!


「ん?表示?鑑定スキルとかと一緒か?鑑定スキルも名前とかレベルとかが表示されるらしいよ?」


 へぇそうなのか。何々?


 名前    ワライダケ

       毒キノコ

       レア度1、

 食べると幻覚作用有り、笑いが止まらなくなる


「笑いが止まらなくなるんだってさ!ウケる!」


 俺は皆んなに笑い茸を見せながら笑う。











 

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