第10話

「なあ?どうする?俺、ジャガイモ大好物なんだよ!持って帰っても良いだろ?」


「あぁ、いいぜ!好きなだけ持って帰ろうぜ!ユータのカバンはデカイから一杯入りそうだしな!ギャハハ」


「やったぜ!これでポテチ作ろうぜ!それと蒸かし芋も良いな、塩は有るとして、油はあるんだよな?」


「ポテチ?なんだか分からないけど悪魔的な心地よい響きがするですよ。ボクも食べてみたいですよ」


「おう、任せろ!こんだけあれば当分は食えそうだしな!それにどうせ毎日狩りに来るんだろ?逆に取りすぎて枯渇させない様に注意しないとな」


「それは気にしないで良いよ?どうせすぐにまた生えるからね?」


「そうなのか、ラミ?どんな仕組みなんだ?もしやボアもか?便利すぎるだろそれは」


「ボアは3時間後に、このフロアーの何処かに自然に湧きますよ。植物はもうチョット早いと思いますが」


 そんなことを話しながら、血抜きがある程度終わったようで腹を開いて真っ先に魔石と呼ばれる不思議石を取り出して俺に見せてくれた。


「ほらユータ、これが魔石だ。ボアの物は全然高価では無いが、これ一つで30ガルドだな」


 そう言ってソラが俺に向かって魔石を放ってよこす。ボンヤリとした明かりに照らされて、紫色に輝く魔石を俺は眺める。


       ボアの魔石

       レア度2

     魔力の溜まった結晶

  魔法の媒体として使うことができる


「へぇ、魔法の媒体として使えるのか。どうやって使うの?」


 皆んなに聞こえる様に聞いてみたのだが、皆んな唖然として俺の方を見て固まっている様だ。


「ユータ君がまた何か言ってるですよ?」


「…あ、あぁ。ごめんユータ。それは初耳だったぜ。逆に聞きたいんだが魔法の媒体って何だ?」


「ん?多分この魔石を元に魔法を発動出来るって事じゃないの?知らんけど」


「確かにこの魔石を色々な道具にセットすると火が出たり、明かりが付いたりするんだから魔法が発動していると言う事にはなるんですか?ただそれは道具有りきじゃないのですか?」


「じゃあ火を付ける呪文みたいなの知ってる人はいる?」


「ボクは明かりの魔法は知ってるけどやったコト無のです…ボクは魔法を使えないのですよ…」


「それでいいんじゃね?その為の媒体なんだろうからさ!この魔石に向かってやってみ?」


「うん、やって見るです。ブツブツブツブツ」


 ポムが呪文を唱え終わってから、しばらくしても何も起こらない…。


「ん〜…。違うのかな〜?ポム、今度は手で握ってやってみて?」


「うん、今度こそは。ブツブツブツブツ」


 するとポムの手の中で、魔石が光を発し始めたではないか。


「わぁー明るい!」


 と皆んなが驚き半分、喜び半分で呟いているのが聞こえた。


「やったー!出来た出来たですよ!ユータ君、ボク出来たですよ!」


 俺は嬉しさでピョンピョン飛び跳ねているポムの頭をナデナデしてあげる。


「ハフ…何これ…新感覚…」


 ポーッとしてしまったポムを余所目に照明と化した魔石を調べてみる。


    明かりの灯った魔石

      レア度3

  効果時間残り19時間59分30秒


「へぇ、効果は20時間か。これは便利だな!ポム、これ消せるの?ねぇ、ポム?!」


「は、はいです!簡単なのですよ。明かりよ消えろ!」


 とても簡単に消せたのね…点けるときはナンタラカンタラ呪文が必要なのにね。そして明かりの消えた魔石の残り時間もカウントが止まっている。灯っている間は魔力を消費するようだ。これで俺はサバイバルで重要な明かりを手に入れた。


 まず、明かりの重要性として俺個人の見解は、そもそも暗闇というものが精神を犯してくる所にある。焚き火などで光源を確保するのもとても大事だが、ちゃんとした明かりが有ったほうが調理するのにも役に立つ。それに奇襲にも一早く気付く事が出来るようになる。


 明かりを手に入れた俺等は、解体を再開する。まずは内臓を取り出し始める。そこからは手分けして皮を剥いでいく様で、皆んな小型のナイフを取り出して四つ脚から切り始める。


「明るいから解体しやすいね?ミスが減るよね?」


 とても大好評だ。当然だろう。むしろ今迄良くぞボンヤリとした光の中でやっていたと思うよ、マジで。何か長い棒の先にこの魔石をハメて、高いところから照らしたいな。帰ったら地球から持って来た杖を使うか。


 流石に毎日やっていると言っていた通り、皆んな手際が良い。ボアは見る見る肉塊になっていた。腕肉。バラ肉、モモ肉を切り分けて、いよいよロースかな?と思ったところで辞めてしまう。


「ふう、終了だな。次に行こう」


 そう言って立ち去ろうとするパーティーメンバーを俺が制する。


「待て待て待て待て!何故ロースを取らない?それにヒレも…1番美味しいところじゃないか?」


「そんなことはないでしょ?柔らかくて歯ごたえがないから人気もないよ?そういえばユータは柔らかいお肉が好きって言ってたよね?」


「…そうだ、大好物だ!そういえばこっちは歯応え重視…サッキそんなことをか言っていたっけ…でもせっかくだからもっと…せめてヒレと背ロースは取らせてくれ!牛ならリブロースとサーロインだぞ?!頼むから!」


「もちろん好きなだけ持って帰れば良いさ。残せばダンジョンに吸収されるだけだからな。それにユータがそこまで言うなら私も少し食べてみたいしね」


「それはあるです。ボクはユータ君の料理も食べてみたいかもですよ」


「それはウチも?」「アタイも!」「アタシもです」と、皆んなで声を揃る。


 猪肉のステーキなんて最高だな!やっと夢が叶うぜ!後はやはり牛肉と鶏肉が欲しいよな…。ふと気になったので聞いてみる。


「チキンってあるのか?」


「鶏肉?あるよ?このダンジョンじゃないけどね?好物なの?」


「あーいや…そういうわけでは無いんだ。ただ情報として聞いておこうと思ってさ。そもそも他にどんなダンジョンがあるんだ?」


「色々とあるからそれは夜にでも話そうか。まずはボア狩りを再開しよう。もっと稼がないといけないからな」


 それから俺等はボアを一日中狩り続ける。俺等と言うより俺以外と言ったほうが良いかな?戦闘に関しては俺は必要無いと思う。3層のボアでは、既に過剰戦力である。それよりも俺は薬草や毒消し草、毒草を中心に草刈りを行なった。


 毒草を調べてみたときに効能のところに、

葉には毒があるが、根、茎から抽出した成分を毒消し草と混ぜると、疲労回復、魔力回復、精神安定、皮膚乾燥症の改善など、良い効果を得られる事が分かっているから。


 今日はボア9匹を狩り、肉を150キロ位と皮、魔石を取った。肉は本当だったら多分持って帰って来た3倍以上を置いて帰ってきている。これは早々にロースとヒレの美味しさを教えてあげなければ勿体ないな。そもそもカバンが小さすぎる。そこをどうにかせねば!


 肉は娼館で売るのだが、その他は各ギルドに卸すようだ。薬草関係は錬金ギルドという事なので、魔石をダンジョンギルドへ、皮を服飾ギルドへ、最後に草を持って錬金ギルドへと入って行く。


 各ギルドは俺等の居る1番外側のエリア、通称下町には出張所が何箇所かあるらしい。そりゃあ下町はべら棒に広いから、各門から入った近くに纏まって建っている。そして娼館のあるここいら一帯は第三地区となっているようだ。


 出張所と言ってもその広さはウチの娼館よりもデカく、ギルド職員も大勢働いて居るようだ。三階建ての建物で一階は売買取引所になっていて、二階、三階は行かなかったのでわからない。


 錬金ギルドに入り、買い取りカウンターに荷物を置き、査定をお願いする。


 職員は慣れた手付きで其々の草に分けて行く。

     薬草30束  30000ガルド

   毒消し草30束  60000ガルド

毒草3種150グラム 150000ガルド

        合計 240000ガルド


金貨24枚に成った。


「はぁぁ〜?!金貨24枚だと〜?!肉と皮と魔石の15倍以上だと〜?!なんで毒草があんなに高け〜んだ?」


「声がデケーよフィン!毒草の葉は毒薬に、その他はどれかが滋養強壮の丸薬に、それと魔力ポーションとかになるみたいだぜ。どれが何で、作り方もわからないけどな」

 

「滋養強壮薬か!ナイトポーションの元だったのか!そりゃあ高いわけだな。コレなら今後重い思いをして肉を担がなくても、草だけのほうが楽じゃないか!」


「んーと、ソラ。多分それだと駄目だと思うぞ。こういうのは需要と供給が大事なんだと思う。取りすぎると価値が下がり、値段が安くなる。だから程々が大事なんだよ。どうせ山分けなんだ。役割分担して色々な素材で稼ぐのが良いと思うぞ?」


 多分今日の稼ぎは金貨26枚弱になるだろう。一人頭金貨4枚チョット。俺の日当としてはかなり少ないけど、皆んなの稼ぎとしては破格の金額だろう。なんせ初日の様子見でこれだ。本気のペースだと2ヶ月位でフィンは解放されるだろう。他のメンバーも似たりよったりだと思うけど。ラミはもうちょっと掛かるな?


 




 





 










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