第14話 なにひとついやらしくないとても健常な回
宝箱の中に入っていたのは、多足移動機構を持った
体の中心から足の先にかけて溝のようなものが走っていて、全体のカラーリングはダークな紫とライトな黄色のツートンだ。
なんだか電源をオフにされたロボットのような印象を受ける。
「そ、それ……! 古代生物兵器じゃないの!」
「古代生物兵器?」
「大昔に作られた生物を模した機械よ! 今よりはるかに優れたオーバーテクノロジーで作られたって言われてるわ!」
「へえ? こいつがねぇ」
「あ、ちょ⁉ そんなむやみに触ったら――」
え? なに? なんか言った?
ってどわぁぁぁぁぁ⁉
なんか光ってる⁉
爆発か⁉ 爆発するのか⁉
それは許さんぞ!
「ちっ、こうなったら仕方ない! シノア! 切り捨ててくれ!」
俺は手に持ったカラクリをシノアのほうに向けてぽいっと投げた。
「ぎいぃやあぁぁぁぁぁぁ⁉ そんなもの投げないでよぉ⁉」
半狂乱になりながらもシノアは目にもとまらぬ速度で腰だめに構える。
この土壇場で放たれる技と言えばあれしかない!
最速抜刀術・絶閃!
俺の誇る最強の防御壁すら引き裂いた神速の一閃が振り抜かれる……!
だがこの時、俺もシノアも忘れていた。
ここはモンスターの表れない野営テントの中で、外はふたりの自室。
敵襲なんて考慮の外。
つまり、シノアは剣を持っていなかった。
「「あ」」
無手……っ!
ここにきて、まさかの無手……っ!
「バカああああぁぁ‼」
きれいに愛刀の刃渡り分だけ間合いの外で抜刀術を放ち終えたシノアにカラクリが飛びつく。
きゅるりと駆動音を立て、虫のように足を動かし、シノアの体に身を吸い付ける!
「ひぃぃぃぃぃぃぃ⁉」
「シノア‼ 今助け――」
「あんっ♡ ふみゃぁ⁉」
え?
何今の色っぽい声。
「待って……何か、おかしいわ……体の内側から、誰かに触られてる気が……ひゃあぁぁん⁉」
「体の内側?」
「か、下腹部、よ……!」
「下腹部……?」
「分かってて言わせようとしてるでしょ⁉」
何のことやらさっぱりわからないな。
俺にわかることと言えば、ここがエロゲの世界であるということくらいだ。
シノアが顔を赤くしている理由も、泣きそうな顔をしている理由も、えっちな声を上げる理由も、皆目見当もつかない。
いや、待てよ?
「そうか……! 低周波だ! 人の耳に聞こえないほど低い音をこのカラクリは発していて、その振動がシノアを体の内側から刺激しているんだ!」
「解析は、いいから、はやく取って……ひゃあぁぁ⁉」
ぐ、ぐぬぬぬぬっ!
俺は、シノアの乱れる姿が見たい!
でもそんなこと口にするわけにはいかない!
せっかく築いた信頼関係を壊せるものか!
冷静になれ、理性を保ち続けるんだ!
今は焦って手を出す段階では……
「やめ……っ! どこ這ってるのよ⁉」
「っ⁉」
蜘蛛型のカラクリが手足を器用に動かして、シノアの体を上部へと這い上っていく。
そしてやがて、ある一点で停止した。
おっぱいだ‼‼‼‼
「でかした! じゃなくて、これ以上お前の好きにさせてたまるか!」
「性に正直なのもたいがいにしなさいよッ‼」
しまった!
つい本音が……!
とにかく、これ以上放置していたらシノアとの関係にひびが入る!
無理やりにでも引きはがすしかない!
「んああぁあっぁ♡ 待……っ、激しっ♡」
「シノア……ちょっと声抑えてくれ!」
「そんなこと言っても……んんあぁぁぁぁっ⁉」
俺はシノアに引っ付いた低周波数を発する機械を引きはがそうとしているだけで何もやましいことなんてしていない。そのはずなんだ。
だけど、なんだ、このなんだかイケないことをしているような感覚は……!
うおおおお!
俺の中の煩悩よ! 立ち去れぇぇぇぇ!
「よし! 取れたぞ……っ!」
「ふあぁぁぁ……」
やり遂げた!
俺の手にはカラクリが収まっていて、シノアの体からはカラクリが引きはがされている!
これでひと安心――
「は?」
「へ?」
がしゃぎゅいいぃーん!
俺の手の中でカラクリが暴れるようにらせんを描いたかと思うと、俺の手から難を逃れたカラクリが、今度は俺にとびかかる!
その先は、案の定!
下腹部……!
「おまえぇぇぇぇぇ⁉」
ずんっと腹の底から響くエネルギー。
医療に用いられる先進技術が、俺の血行を良くしていくのがはっきりと分かる!
肥大していく!
何がとは言わないが、たぶん欲望!
「す、すごい! 男の人ってそうなってるのね⁉」
「コラコラコラ! 待て! 助けろ!」
「ア、アッシュも最初様子見したでしょ⁉ お相子よ!」
「エロゲ超理論やめろぉぉ!」
お相子ってなんだお相子って!
俺の自制が効かんくなっても知らんぞ!
「ぐ、この……! おとなしくしてろッ!」
俺はどうにかカラクリを捕まえると、そのまま宝箱に押し込んだ。
蓋の上に倒れこむようにのしかかることで、このえっちな機械を封じ込めることに成功する。
「はぁはぁ……ひどい目にあった」
さすがエロゲ。油断も隙もありゃしない。
気を抜けばこんな危険な目が待っているだなんて。
「はぁ、はぁ……」
ん?
なんか、俺じゃない吐息が聞こえるな。
甘く、それでいて乱れた吐息だ。
「……ねえアッシュ? 男の人ってそうなったら、吐き出さないと収まらないんでしょう?」
「な、なにがでしょうか」
「もう、言わせないでよ!」
マジで何がだ⁉
え? シノア、さん?
何する気ですか⁉
「アッシュは、嫌? アタシが相手だと……」
なんでそんな上気した顔してるんですか!
どうしてそんな艶っぽい声なんですか⁉
「シ、シノア――⁉」
言葉は後に続かない。
何かを理解するより早く、俺の口はふさがれていたから。
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あとがき-postscript-
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今回はなにひとついやらしいことがなく
エッチを期待した人には申しわけない
お話になってしまいましたが、
もしよかったらフォローや★★★で
応援よろしくお願いします꒰ 。•ω•。 ꒱
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