おばけは怖くありません。機械ですので。
自律汎用アンドロイドのアリサは怪異検出AIを備えている。
画像認識・音声認識・自然言語処理などを複合し、対象が怪異である確率を検出する。
彼女は背面にもカメラを持ち、百万倍の光増幅率を持つ微光暗視能力、超音波による反響定位、嗅覚デバイスなどの観測機器を持ち、死角がない。
そして、なにより「恐怖」がない。
白川有栖教授を中心に開発された彼女は怪異調査にはうってつけに思えた。
アンドロイドであれば、怪異を丸裸にできるのではないか。
統計的に「ない」と断言できるほど実在性を確認できない怪異の真実に迫れるのではないか。
極地作業をロボットに任せるように、人間は安全圏にいながらに調査を進められるのではないか。
山奥に潜む謎の廃村、終電後に現れる電車、顔を見ただけで夫婦仲を引き裂く女、過去の風景を再現し続ける廃ビル、毎夜チャイムを鳴らす訪問者……。
それらの調査を続けるうちに、否が応でも理解することになる。
怪異は、どこにでもいる。