発明

この小説を、私は二つの点から語りたいと思う。まず一つ。物語好きとして、趣味として、純粋に面白い。私の知る限り、SFとオカルト、いや、アンドロイドとお化けという、相矛盾する要素(これは矛盾するものだと誰が決めたのだろう?)を取り入れた作品はない。これはある意味、発明ではないか?と思う。ハリウッド映画の、ゴーストバスターという作品があるが、これは機械をつかって、お化けを退治するという話であり、一見すると、SFとオカルトの融合に見える。しかし、この小説ほど、科学について詳細に語られてはいない。この小説のすごさ、それは、怪異(おばけ)を、AI搭載型のアンドロイドで科学的に調査し、証明しようとしている点だと思う。現在の科学の粋、AI学習を使用し、霊能力者の見えている画像を、AIに学ばせ、それを見える化しているという点は、現在の科学で実際にできるのではないか?と思えるほど、説得力がある。そして物語性。読む前は、1話完結型の、ゲゲゲの鬼太郎のような話かと思っていたが、実はそうではない。アンドロイドの開発者、その協力者、その他の登場人物たちに、あるトラウマがあり、物語が進むにつれ、それが解き明かされていく、謎解き、あるいは、伏線回収ものの要素があり、思わず一気読みするほど、人を引き込む力が、この小説にはある。また、作者あるいは読者の私自信が、どこか異界に迷い込んだのではないのか?と思える描写に出会った時、本気で背筋が凍る思いがした。おそるべき仕掛けである。その他、心理学から民族学やその他の学問まで、この小説家の能力こそ、怪異、あるいはAIなのではないのか?と思えるほどすさまじい作品である。そう、その怪異、あるいはAIなのではないのか?と思えるほどのこの作者の能力こそ、二つ目の点として語りたい点だ。それは、嫉妬、いや、もはや羨望といえるほどの作者の能力だ。私も趣味として小説を書いているが、これはもう趣味の域を出ないことを自覚している。この小説を読んで、本気で小説家を目指していなくてよかった、と心の底から思える。きっとものすごい挫折感を味わっていただろう。世の中には、ものすごい才能を持った人がいるなあと、感心しきりであるが、そんが人が、一握りであることを切に願う。でないと、私が異様に劣ってしまうことになるからだ。そんなこんなで、私はすっかり、この作者とこの作品のファンになってしまった。第二部完とあるので、第三部もいずれ更新されるのか?それを楽しみに待ちたいと思う。