第36話 騎士団長とその息子に土下座されました。

皆さん、ここまで読んで頂いてありがとうございます。

今回のお話は10万字前後で完結する予定です。残り1週間前後で完結する予定です。おそらく・・・・・?

それまで楽しんで頂けたら幸いです。評価等頂けましたら幸いです。


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モモンガとその取り巻き連中とドンパチしたとの話はあっという間に学生達に広まった。

そして、取り巻きの伯爵令息と騎士団長の息子が停学処分を食わされたという噂もあっという間に広まった。


ブス眼鏡に逆らうと、停学させられるという有り難くもない尾ひれとともに。


はっきり言って全てはマリアン王女のお力だと思うのだ。それを私のせいにされるのはおかしいと。


私はそうマリアンに言ったが、マリアンは笑うだけだった。


それとマリアンからは、

「いざという時は自分の身を守るのよ。私には陰で護衛がついていから気にしなくて良いから」

はっきりと言われてしまった。それだけ私を大切に思ってくれるのかと感動したのだが・・・・・


「あんたが入ってくると絶対にもっと大惨事になってしまうから」

その一言で私の想いは吹っ飛んでしまった。


「そんな事ないわよ。私の魔力は絶大よ」

「でも、被害も甚大よ。もしあそこであなたが水魔術を発動していたらと思うとぞっとするわ」

マリアンが言い切ってくれた。


まあ、確かに図書館中が水浸しになって、大切な蔵書の多くが失われただろうことは私にも判った。


「でしょ。だから自分の身さえ守ってくれたら良いわ」

王女殿下はそうおっしゃるが、それでは側近の意味がないだろう。レイモンド様にお願いして周りに被害を及ばさない魔術を教えてもらおうと私は思ったのだ。



翌朝、朝食に食堂に行くと、「エレ、またやらかしたんだって」

「凄いな、伯爵令息と騎士団長の息子を停学にするなんて」

皆好きなことを言ってくれる。


「いや、私が停学にしたんじゃなくて、マリアンが色々言ってくれたのよ」

暗に全部マリアンのおかげだと言ってみたが、


「エレ、これ少ないけど」

ピーターがデザートのゼリーのカップを持ってきてくれた。


「えっ、なにこれ?」

「あっ、ずるいぞ」

ポールも慌ててデザートを持ってくる。


「あっ、俺も」

「えっ?」

私の前にたちまち5つくらいのミニデザートの入れ物が置かれてきた。


「少ないけど、それで今までのことは許してくれ」

「はあああ?」

私はピーターの言うことが理解できなかった。


「えっ、何でもエレ様に逆らうと停学になるそうだからな。俺、停学になったら父ちゃんに殺されるし」

「そうそう」

マイケルまでが言う。


「ちょっ、ちょっと何言っているのよ。マリアンに逆らったらそうなるかもしれないけれど、私に逆らったからってそんなのになるわけ無いでしょ」

「いやいや、エレなら、そんなちっぽけなデザートでも恩に着てくれそうだし」

「そうそう、覚えておいてくれよな。デザート供出したこと」

ピーターとマイケルがなんかむかつくこと言うんだけど。

でも、目の前のデザートに私は満面の笑みを浮かべていたそうだ。


こんなデザートで買収されるってどういうことなのよ!


と思わずにはいられなかったが・・・・


私は全て完食していた・・・・



そして、その後、その噂を補足する大事件が起こったのだ。


教室に行くと教室の前で顔をボコボコに腫らして丸坊主になっていたミッキー・コールマンとその父だと思われる巨体、すなわち騎士団長がいたのだ。


「エレイン・ワイルダー嬢。この度は誠に申し訳ありませんでした」

そして、なんとミッキーが私に土下座したのだ。


「えっ!、ど、どうしたの?」

私は理解が追いつかなかった。


「ワイルダー嬢。この度は息子が大変失礼なことをした。申し訳なかった」

続いて騎士団長までもが土下座をしてきたのだ。


「えっ? えっ! えええええ!」

私は理解が追いつかなかった。しかし、何で私に土下座なんか。


「ちょっ、ちょっと、何で土下座なんてしておられるのですか」

私は二人に駆け寄って慌てて起こそうとした。


「本当に申し訳なかった」

再度騎士団長が頭を下げる。


「いやいやいや、そもそも、息子さんは見ていただけで、私何一つ酷いことされていませんよ」

「女の子がいじめられていたのに、黙ってみていたという行為がそもそも騎士としては許されない」

「いえ、別に私はいじめられていたわけでは」

「でも男に殴られたという話ではないか」

「いや、突き飛ばされただけで殴られては」

「変わらん。騎士として女に手を挙げるとは言語道断」

「いや、だから、息子さんには別に手を出されたわけでは」

「ただ見ているだけというのは許されん。そもそも、あなたの父上は我が騎士団でスタンピードの時に犠牲になられたワイルダーだろう。彼は命を賭して国のために殉じてくれたのだ。その残された娘さんを命を賭して庇わないとは我が息子は騎士ではない!」

「誠に申し訳ありませんでした!」

ミッキーが絞り出すように謝ってきた。えっこれがムカつく騎士団長の息子?


「私としてもワイルダーの遺族の君が天涯孤独の身になっているなど掴んではいなかった。騎士団長として失格だ。誠に申し訳なかった」

騎士団長は再度頭を下げた。


「えっ、いや、騎士が国のために殉じるのは当然のことです」

「それはそうかも知れないが、残された家族が困窮するのを見捨てたとあっては騎士団の恥だ。特にあの時は君の父上の活躍は素晴らしかった。彼の活躍がなかったら何千人もの無辜の民が犠牲になったかもしれないのだ」

そうか、父はそれだけ頑張ってくれたのだ。私の目には涙が光っていた。


「本来亡くなった者の家族は、騎士団が責任を持って面倒を見るのが我が騎士団の不文律だ。それを君がお祖母様に引き取られたのを良いことに、我が騎士団は見守っていなかった。その残された遺族の君がいじめられていたのを、我が息子がヘラヘラ見ていたなど、許されることではない。こいつは1から鍛え直す」

「申し訳ありませんでした」

再度ミッキーが頭を床につけた。

いやいや、もう良いから、止めてほしいんだけど。


「それに、お祖母様が1年も前にお亡くなりになられたと言うではないか。これでは天国のワイルダーに申し訳がたたん。是非とも我が騎士団で面倒を見させて欲しい」

「いえ、騎士団長様。私は国によって奨学金を受けて今はきちんと生活できております。騎士団長様ともあろうお方のお心をかけて頂く必要などございませんので」

私の言葉に騎士団長はなかなか納得してくれなかった。


なんとかマリアンが2、3話してくれるとなんとか納得して帰ってくれたのだが。

「何かあれば必ず騎士団を頼ってくれ。受付でワイルダーの娘だと言ってくれれば必ず面倒は見るから」

そう最後までおっしゃって頂いた。


でも、その後ブス眼鏡に逆らうと、何故かブス眼鏡にろう絡された騎士団長にボコボコに殴られるという噂に更に尾ひれがついてしまったのだ・・・・



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