第18話 魔物討伐3 聖女に隠れてヒールを使ったところを友達に見つかってしまいました

分裂して爆発的に増えたスライムを退治しつくすと、私達は疲れきってその場に倒れ込んだ。


「はあ、はあ、はあ」

ローズ達も魔力の限界みたいだった。


まあ練習にはなったけど、私は体力的に疲れた。魔力はまだ全然使ってないから余裕だったけど・・・・。


ポールの魔力も限界に近いだろう。


ここからは私とマリアンとピーターでやるしかない。

もしスライムが出てきたら今度は逃げて他の班に任そう、そう思った時だ。


「キャー」

遠くから女性の悲鳴が聞こえた。

「グォー」

そして魔獣の遠吠えも。


「行こう!」

私達はかけだした。


「ちょっと待ってよ」

ローズ達が慌てて起き出す。


「あんたらは3人揃ってきて」

マリアンが指示している。


駆けること1分、私達はサラマンダーに襲われているモモンガさん達を見つけた。

炎を吐きながらサラマンダーは暴れていた。

剣を構えている者たちがいるが、剣だけでは厳しい。

水魔術もかけているものもいるが、力が弱いみたいで、かけても一瞬で蒸発、かえってサラマンダーの怒りに火をつけているみたいだ。


ここはやるしか無い。


「ウォーター」

私は走りながら、手を上げて詠唱した。


水の塊がサラマンターに向かう。


とりあえず、遠距離攻撃でサラマンダーの注意をひこうとしたのだ。


バンっ


水の塊が、サラマンダーのそばに落ちて、サラマンダーがこちらを向いた。


よし、うまくいった。


私は急速にサラマンダーに近づく。


サラマンダーもこちらにゆっくりと歩いてきた。


そして、私がある程度近づいた時だ。


「グォオオオオオーーーー」

叫び声とともに火の玉を吐いた。


火の玉はこちらに向かって一直線に飛んでくる。


「ウォーター」

私は再び手を上げて水の塊を火の玉にぶつける。


バンっ


大きな音とともに、火の玉と水の塊がぶつかって両方とも水蒸気となって消滅する。


凄まじい水蒸気で周りが見えなくなる。



そして、水蒸気の霧が晴れた時、私の目の前にサラマンダーがいた。


「グウォォォォォォォォォ」

サラマンダーが吠えた。威圧の叫びだ。でも、魔王に比べたら何でも無い。


私も吠えようかとも思ったが、流石に止めた・・・・。睨みつけるに留める。


私とサラマンダーは対峙しした。


私は息を整えつつ、サラマンダーの動きを見る。


後ろではマリアンがミニスコールを詠唱によって作ろうとしていた。


最も私はそれまで待つつもりは無かったが。


息を整えると右手を上げる。


しかし、私が詠唱する前に


「グウォォォォォォォォォ」

サラマンダーが吠えつつ火焔を出した。


「ウォーター!」

私は水鉄砲ならぬ水大砲を発動した。


それは途中でサラマンダーの炎と激突、そのまま莫大な水蒸気を上げつつ、サラマンダーに殺到する。

カバ先生をグランドの端まで弾き飛ばしたアレだ。この距離からサラマンダーでは避けられないはずだ。


水蒸気でまた、何も見えなくなった。


そして、霧が消え去ると


「えっ」

私が驚いたことに、このサラマンダーは少し横に避けていたのだ。


そこには半身の炎を消されたサラマンダーがいた。


「グウォ」

吠えるが勢いが消えていた。


ふんっ、多少避けられるのは計算済みだ。


「ウォーター」

私は再度水大砲を発射した。


今度のそれはサラマンダーの顔を直撃していた。


あっという間に全身を水で覆おう。


水が蒸発した後には水蒸気を上げている巨大トカゲに成り下がったサラマンダーがいた。


「ピーター」

「はいよ」

私が声を掛ける前にピーターはもう駆け出していた。


一瞬でサラマンダーの前まで来ると飛び上がって剣でサラマンターの首を切り落としていた。


サラマンダーの体が、ゆっくりと倒れた。


ドシーンという音とともにサラマンダーは倒された。


「やった」

私は握りこぶしを握ってガッツポーズをした。




「ミッキー、しっかりして」

大声で叫ぶモモンガさんに気付いてけが人がいるのを知った。

騎士団長の息子だったか・・・・

半身やけどして苦しんでいた。

これはやばい。このままでは死んでしまう。


「モモンガさん。早く、ヒールを」

私は駆け寄って言った。


「でも・・・・」

「あなたなら出来るわ」

私は頷く。そう、この子がやってくれないと困るのだ。


「魔法聖女エリの本を渡したでしょ。あの通りやるのよ。絶対にできるから」

私はモモンガさんを鼓舞する。


「でも・・・・」

「ルイーズ、君しか助けることが出来ないんだ」

「頼む、こいつを助けてやってくれ」

ネイサンらはモモンガに頼み込んだ。


「判った、やってみるわ」

モモンガさんは立上った。


そして立ち上がると手を上げて

「ヒール」

と叫ぶ。


ミッキーと呼ばれた子の火傷が少し治ったように見えた。


「ヒール!」

モモンガさんがもう一度、叫ぶ。少しは治っているはずだ。

でも、これじゃ間に合わない。


どうしよう。

このままではやばい。でも、私がやると私が聖女だとバレてしまう。それは出来たら避けたい。

でも、友達が死ぬのは嫌だ。私は悩んだ。


「ヒール」

モモンガさんは必死にやっている。


私は皆がモモンガさんを見ている間にそっと木陰に隠れた。ここなら他の奴には見えないはずだ。


「神様お願い、力を貸してください」

私は女神様に祈った。


そして、モモンガさんの声に合わせて手を挙げる。

そう、昔を思い出すのだ


そして

「ヒール」

と叫んでいた。


私から光が発してミツキーめがけて金の光が飛んでいく。


それがミッキーに当たるとミッキーの全身が金色に光った。


「えっ」

ミッキーを取り囲んでいた者たちは唖然とする。

光が消えた時には、ほとんど無傷になっていたミッキーがいた。


「ミッキーが治ったぞ」

「本当だ」

「ミッキーが助かった」

周りの男たちがさ喜んでいた。


「嘘、ヒールが出来たわ」

ボソリとモモンガさんが呟いた。


「凄いじゃないかルイーズ」

「やったなルイーズ」

「ルイーズが聖女になったんだ」

皆大喜びで叫んでいた。


私はホッとしてため息をついた。

「良かった。これで全てうまくいった」

私は呟いた。


「何がうまくいったの?」

私はその声にびっくりして顔を上げると、いやらしい笑みをしているマリアンが目の前にいたのだった・・・・


************************************************************

ついにマリアンに見つかってしまいました・・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る