第11話 悪役令嬢の次は偽聖女に襲撃されました

去っていく王太子殿下を私はぼうっとして見とれていた。


「エレ食堂に入るわよ」

ローズに言われて私はハッとした。

「そう、昨日もこの調子だったのよ」

マリアンが呆れて言う。


「本当にエレ、別人みたいね」

クラリッサも呆れて言った。


「ああ、マリアン、昨日私にも声かけてくれてありがとう。もう一生の想い出にするわ」

「まあ、そうよね。王太子殿下と食事したなんて一生自慢できるわ」

「本当に羨ましいわ。私も呼んでほしかった」

私の言葉にローズとクラリッサが羨ましそうに言う。


「御免。だって王太子殿下は水魔術で水晶が大きく光った人と話したいっておっしゃっていたじゃない。エレは丁度おんなじくらいの大きさだったし」

「それはそうだけど、もし良かったら次は是非とも」

「そうよ、ぜひとも王太子殿下に紹介してほしいわ」

マリアンの言葉にローズとクラリッサが頼み込む。


「うーん、でも、本当に声かけてもらったのが奇跡みたいなものだから、私達が食事に呼ばれるのも二度と無いと思うわよ」

マリアンが難しそうに言った。


聞く所によると王太子殿下は婚約者もまだいず、学園で狙っている貴族令嬢も多いので、側近以外と食事なんてめったにしないらしいのだ。本当に昨日はたまたまだったらしい。


まあ、麗しの王太子殿下は雲の上の人なのだ。そんな雲の上の人と一緒に食事できて、本当に良かった。

私はまた回想していた。


「ちょっと、あんた達、王太子殿下と食事できたって本当なの」

そこへピンク頭のモモンガさんが、男共の取り巻きを連れてきた。

悪役令嬢の次は偽聖女か。


私は少しうんざりした。


「ちょっと、誰が偽聖女なのよ」

「そうだ、ブス眼鏡。口が過ぎるぞ」

モモンガさんと取り巻きの一人が文句を言ってきた。

しまった、また、心の声が漏れていた。


「ちょっと、そこのあんた。淑女に向かってブス眼鏡とは何なのよ」

しかし、男に対してマリアンがキレた。


「なんだと、貴様。伯爵令息の俺に逆らうというのか」

マリアンに男が逆ギレした。


「あのさ、エレがさっき言っていたけど、えらいのはあんたの父親でしょ。あんた本人は無位無官で平民のリアと変わんないじゃない。そんなのは爵位ついでから自慢してよね」


「えっ」

男はぽかんとしてしまった。

まさかそんな手で反撃食らうとは思ってもいなかったようだ。


「ちょっと。ネイサン。何負けてるのよ。しっかりしなさいよ」

モモンガさんが伯爵令息にはっぱをかけている。


「ブス眼鏡は女性に対しての侮辱よ。なんだったら私、アシュバートン伯爵にその件お話するけど」

「偽聖女も変わんないだろう。ルイーズは魔王対策に必要な人材なんだぞ。それを偽聖女っていうのはどうなんだ」

「モーガンさんはまだ聖女じゃないからニセと呼ばれても仕方がない面はあるけど、ブス眼鏡は女性に対する蔑視よ」

負けずにマリアンが言う。


「まあまあ、マリアン。モモンガさんにはガンバってやっていただかなければいけないんだから」

私は珍しく、モモンガの肩をもった。そう、この子を盾にして魔王から逃げるんだから。だから是非ともモモンガさんにはもっと聖魔術の力を強めてもらわないと、今のままではあまりにもちゃちだ。


「ちょっとあんた。誰がモモンガさんよ」

「えっ、違ったっけ」

「私はルイーズ・モーガンよ。モーガン男爵の娘なの」

「そうなんだ。まあ、頑張ってよ」

私は笑って誤魔化した。


「なんか、馬鹿にしているみたいに見えるけど、あんたと話していると調子が狂うわ。もう良いわ。行きましょう」

「そ、そうだな」

な、何その言い方。それはないんじゃないの。

私が文句を言おうとした時にはモモンガさん一行は立ち去って行った。


「はっ、まあ良いか」

私は、文句を言うのを止めた。


「何溜息ついているのよ。ため息付きたいのは私よ」

「本当にエレは心の声がよく漏れるわよね」

マリアンとローズに突っ込まれる。


「うーん、御免。出来るだけ黙っているようにしているんだけど」

『どこがよ』

3人の声が重なった。


私はそれから、主にマリアンから延々お説教を食うことになってしまった・・・・。

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