第41話 王太子殿下と一緒にカフェでデート?して、王太子殿下の想い人が私だと知ってしまいました・・・・

そして、次の日、昼過ぎに王太子殿下が私を誘いにいらっしゃった。


私はマリアンの侍女たちに飾り付けられて、いや、普通に、若い商会の娘という感じの女の子の姿になっていた。


なんかいつもの私じゃない。全然違う。


今まではこの地味眼鏡でいかにも目立たないという感じだったのに。この地味眼鏡をしても、なんか知性が漏れていると言うか、知的美人みたいな感じになっているんだけど・・・・。


「ちょっと目立ち過ぎじゃない?」

「何言っているのよ。あんたの素材から見たらそれでも10分の1くらいしか出していないわよ」

と訳のわかんないことをマリアンに言われてしまった。




「お待たせ」

その時に王太子殿下がそう言って部屋に入っていらっしゃった。


ピキ・・・・・私は固まってしまった。


「ちょっと、エレ大丈夫!」

「どうかしたのか?」

王太子殿下まで私を見る。私は思わず更に固まってしまった。


王太子殿下は何か金持ちの若旦那っぽい格好だ。この格好も素敵だ。私は瞬時に思うだけは思えた。

でも、殿下は何故かブラウンの髪の色に黒目だ。いつもの銀髪緑眼じゃあない。変装なんだろうなとその時は思ったのだ。


「ほう、ワイルダー嬢も着飾っているじゃないか」

殿下が驚いて言われた。


「でしょう。この格好ならお兄様と歩いても問題ないわよ」

「まあ、知的美人という感じかな」

殿下に美人と言われて私はもう死んでも良かった。


「ど、どうしたのよ。エレ」

マリアンに声かけられたが、私は硬直したままだった。


「ちょっと、エレっ、折角のデートなんだから楽しんでくるのよ」

マリアンに思いっきり背中をしばかれた。


痛い! 少しは呪縛が取れた。でも、思いっきりしばくなんて・・・・・・




「じゃあお兄様、エレを宜しくお願いします」

マリアンは痛がっている私を無視して王太子殿下に言ってくれた。


「その代わり来週の食事会はよろしく頼むぞ」

「はいはい」

マリアンはおなざりに頷いていた。


「何かその態度はないのではないかと思わないでもないが、まあ、ワイルダー嬢、行こうか」

私はその王太子殿下の声に頷くことしか出来なかった。


王太子殿下について馬車に向かって歩いていく。


馬車の前で王太子殿下は振り返ってくれた。


そして、手を差し出してくれる。


え、ええええ!


私はそれを見て固まってしまった。


そ、そんな。殿下の手を取るなんて無理。


私は真っ赤になって固まってしまった。


「本当に手をかけさすわね」

何故かマリアンが強引に私の手を掴んで王太子殿下の手に触れさせた。


ピキッと電流が流れる。もう私は頭は熱で破裂していた。


どうやって馬車に乗ったかは判らなかった。



少し経ってやっと少しは落ち着く。


馬車が街中を走っている。


馬車は男爵家のお忍び用の馬車だったが、乗り心地は良かった。


でも、麗しの王太子殿下が目の前にいらっしゃると思うと、もう何も言えなかった。

殿下の顔を見ることも出来ずに下を向いていることしか出来ない。


いつもは外を喜んで見てはしゃいでいるのに、殿下が前にいると思うだけで無理だった。

私は真っ赤になって殿下の前にいた。


殿下は色々話題を振ってくれたが、私は頷いたり首を振ったりするしか出来なかった。


「学園は慣れた?」

と聞かれて頷き、

「得意な科目は何なのかな」

と聞かれて小首を傾けたり、本当におしとやかな令嬢になってしまった。


新しいカフェは大通りに面してあった。ひょっとして魔王に襲わたあの場所に建ったのかもしれない。


馬車から降りる時がまた大変だったが、あんまり殿下をまたすわけには行かない。


私はエイヤッと殿下の手をなんとか掴んだ。


そして、なんとか地上に降りられる。それだけでもう死んでしまいそうだった。


殿下の手に直に触れられるなんて・・・・・


周りからメチャクチャ見られているということが、この日は全く気づかなかった。


王太子殿下が予約してくれていたのか、すぐに中に入れた。

窓側の席に案内される。


ウェイトレスがメニューを持ってきてくれた。


えっ、この絵は噂に聞くチョコレートパフェというものでは。

私は殿下の前にもかかわらず、それをガン見してしまった。


「ワイルダー嬢はチョコレートパフェだね」

それを見て王太子殿下が笑っていってくれた。

えっ、うそ、見られていた。私は赤くなって頷いた。


「じゃあ俺も同じのを」

殿下も同じ物を頼んでくれた。


「甘いの好きなんだ」

私はその声に頷いた。


運ばれてきたチョコレートパフェは何かものすごく一杯盛り付けてあった。


「さ、召し上がれ」

殿下の声に頷くと私はスプーンを差し込んで一口食べた。


「美味しい」

思わず声に出てしまった。

こんな美味しいものがこの世にあるなんて。チョコレートパフェはクリームの部分も冷たくて舌の上でチョコレートと一緒に蕩けるように溶けてとても美味しかった。産まれて初めて食べられてめちゃくちゃ良かった。


「本当にワイルダー嬢は美味しそうに食べるね」

殿下に言われて思わず、真っ赤になる。でも、美味しいものは美味しいのだ。


「こんなに美味しいとは思いませんでした」

思わず殿下の前にも関わらず、話してしまった。


「チョコレートパフェを食べるのは初めてなんだ」

「はい。庶民にはなかなか手が出なくって」

「そうなんだ。一人での生活は結構大変かな」

「はい。でも、特待生になれたので、なんとかこれからも生きていけるかなと思います」

パフェが潤滑剤になったみたいで、少し話せた。

でも、これ本当に美味しい。


「しかし、美味しそうに食べるね」

「だってもう二度と食べられないかもしれませんし」

「いや、これくらいなら妹に言えばまた食べさせてもらえるよ」

「本当ですか」

「ワイルダー嬢は食い意地は張っているんだ」

「そんな事はないつもりなんですけど・・・・」

私は少しムッとして話す。


「ごめん、ごめん。全然話さないのかと思っていたから」

殿下に言われて真っ赤になる。食い物の話になると殿下の前でも少し口が軽くなるらしい。気をつけようと思った時だ。


「話変わるけど魔法聖女エリのファンなんだって」

「はい。昔から好きです」

私の一番好きな絵本の話になった。この話する時もあんまり何も考えられずに話せる。


「どこが良かったのかな」

「どこがって。全てです」

「全てなんだ」

王太子殿下がとても驚いた顔をされた。何でだろう。本当に素晴らしいのに。


「全てなんですけど、一番好きなのは悪い奴らをやっつけるところですかね。エリがとても格好良くって」

「そうなんだ。あの手を挙げるやつだろう」

「はい。昔、私絶体絶命のピンチになった時に魔法聖女エリのマネしたら本当に魔法が使えたんです」

「何を使ったの」

「ヒー、いや、ウォーターを」

危ない危ない。もう少しでバレるところだった。


「君はヒールは使ったことはないの」

殿下の声に私は頷いた。そうここで私のことをバラすわけには行かない。


「そうか。昔俺を助けてくれた女の子はね。手を上げてヒールを使っていたんだ」

「そうなんですね。魔法聖女エリみたいですね。その子もファンなんですかね」

「だと思うよ。何しろ、悪いやつにもヒールを使うんだ。もう、驚いたよ。ヒールがいつから攻撃魔術に変わったのかって驚いたし」

ん?、何かそれ聞いたことあるというか、やったことがあるような気がするんですけど・・・・・


「その子はいい子でさ、悪いやつのトドメも刺さないで僕たちにヒールをかけてくれたんだ。俺はその子に俺のことよりも先にトドメを刺さないとって言ったら不思議そうな顔してたんだよ」

えっ、それって、ひょっとして・・・・私は昔を思い返していた。確か貴族の子にそう言われたような・・・・そう言えばその子はブラウンの髪の色に黒目だったような。


「そしたら案の定、その悪い男に闇魔術で攻撃されたんだ。俺はその子がやられたんだと思ってしまったんだけど、その子はね。更にヒールで男を弾き飛ばしたんだ」

私は殿下の話を聞きながら、昔のことを思い出していた。青くなりながら。


「で最後に放ったのが、なんとエリアヒールなんだよ。広域癒やし魔術だよね。でも、使ったのは絶対に浄化魔術だと思うんだけど。それで悪い男は地の果てに吹っ飛ばされてさ。

その子が手を挙げる様が本当に様になっていて俺はただただ見とれているしか出来なくて、本当に駄目な男だよね」


私は言われても首を振るしか出来なかった。

と言うか頭の中はパニックだった。


えええ!、あのときの貴族の男の子が殿下だったの。それでマリアンがその時にお兄様を助けたのって聞いてきたんだ。


で、その子が殿下の憧れの子ってことは・・・・えええええ!それって私?


じゃあ、殿下の好きな子って私っなの!!


頭の中がパニックになった私はそれ以降は何を話したかはっきり覚えていなかった。

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