第40話 王太子殿下とのデートについてうじうじ悩みました

その夜、私達はマリアンの屋敷に帰ったのだが、マリアンが王太子殿下とのデートの約束を取り付けてくれた事で私は頭の中がパンクしていた。


なにしろ、あの憧れの王太子殿下とのデートなのだ。

私の命の恩人とのデート。一緒に食事した、マリアンが一緒だったけど、だけでも奇跡だったのだ。

それも一度ならず数回している。


そのうえ今度は一緒にカフェに行ってデートなんて、そんな事が許されて良いのだろうか?。


「良いこと。あなた達のためにお兄様とのデートセッティングしてあげたんだから、感謝してよね」

「別に頼んでないわよ」

私が言い訳した。


「えっ、あんた判っていないの? お兄様は本当に人気あるのよ。私、王宮にいるときに何度周りから頼まれたことか。それが面倒だからこの屋敷に戻ってきたというのもあるのよ。今まで一度もセッティングしたことなかったデートを、私の親友のためにセッティングしてあげたんだから」

「えっ、マリアン、私のこと親友だと思ってくれているの」

「あんたそこ、感激するところ」

「と言うか、天涯孤独な私にとってその言葉とても嬉しい」

私は涙目になって言った。


「いや、あま、そうなんだど、じゃあ、親友のお願い聞いてくれるよね」

「いや、でも、王太子殿下となんてとても」

私が躊躇すると


「何言っているのよ。お兄様はあれだけ言い寄られてまだデートしたこと無いのよ」

「うそ!」

私は信じられなかった。何しろ王太子殿下はイケメンだし、優しいし、頼りになるし、本当に良い方なのだ。


「本当よ。今までどんなに頼まれても、お父様から命令されても、断っていたのよ。どこにいるかわからない、昔助けられた女の子に操を立てるために」


「えっ、それ本当に本当のことなの」

「私と一緒にカフェに行ったことはあるけど、肉親以外では無いはずよ。食事も女性と二人で取ったことのあるのは王妃様か私だけで、肉親以外ではないはずよ」

あの麗しの殿下が女の子とデートしたこともないなんて信じられなかった。


「じゃあ、その子に操立てているのに、私なんかとデートしてもいいの?」

そう言う私をマリアンは本当に残念なものでも見るように見ていた。何故?


「だってどこの誰かも判らないのよ。生きているかどうかも定かでないし」

何故かじっと意味ありげな顔でマリアンは私を見つめていた。


「でも、その子の事を思っていらっしゃるなら私とデートなんて」

私が言うと


「何言ってんのよ。お兄様も今、いろいろと陛下とか王妃様から言われているのよ。女の子とデートしたってなれば少しくらいその圧力が弱まるから、お兄様にとってもプラスなのよ。それにどうやら、エレはその本人みたいだし」

私はエレの最後の言葉はよく聞こえていなかった。


「それに、王太子殿下の初デートが私なんて」

「あんただから良いんじゃない。周りからブス眼鏡と言われている平民の女の子と二人きりでデート、ブス眼鏡と呼ばれて虐められている女の子の、昔からの憧れをかなえられるお優しい王太子殿下、ということで王族のイメージアップに繋がるのよ」

「うーん、何かそれだけ聞くと利用されているだけの気がするんだけど」

「そうでしょ。だから大したこと無いから楽しんでいらっしゃい」

マリアンはそう言ってくれるけど、あの王太子殿下とデートなんて無理・・・・


「いや、でもやっぱり・・・」

「ああん、本当にウジウジウジ、あんたらしくない。いい加減にしなさい。それとも何。あのモモンガに先越されていいと思うの?」

「それは嫌だけど」

そうだ、モモンガに先越されるのだけは嫌だ。


「あの子も聖女候補なのよ。あんたが隠れているから。あんたが聖女だって告白すれば全て丸く収まるけどそれは嫌なんでしょ」

私は頷いた。どう丸く収まるか聞いてみたい気もしたけれど・・・・。魔王に殺されるのは嫌だ。


「王太子のお相手が聖女でも問題ないわけよ。お兄様のお相手があのモモンガになる可能性もあるわけ。あんたそれでいいの?」

「良い訳無いじゃ無い」

私ははっきりと言った。


「じゃあ良いじゃない」

マリアンが言い切ってくれた。


「あんた一生独身でいると決めているかもしれないけど、一生に一度くらいデートしても良いと思わないの。それもそのお相手はあんたの大好きな王太子殿下よ」

「そらあ、そうだけど、王太子殿下とお話できる気がしないんだけど・・・・」

私が言うと、


「本当にあんた変よね。陛下とも普通に話せたのに、お兄様だけが駄目って、カカシと思って話せば良いんじゃない。そうか、黙っているつもりで、いつものように心の声をダダ漏れさせれば丁度いいかも」

何かマリアンにめちゃくちゃ言われているんだけど。


確かに、王太子殿下といるだけで緊張してしまって全然話せないだけど。王太子殿下をカカシと思えって、それ絶対に無理だし、黙っているつもりで心の声ダダ漏れって、まあ、確かにその方がまだ可能性はあるかもしれない。でも、それはデートでやることか。それも、もう絶対に二度と出来ないことだ。


あのあこがれの王太子殿下とデートなんて・・・・夢にまで見た殿下とデート・・・・

ああああああ!もう絶対に無理!


私は頭を抱えて真っ赤になってしまった。


「まあ、食い意地の張ったあんたのことだから、チョコレートパフェ見て食べれないってことはありえないけど」


私はマリアンの言葉もよく聞いていなかった。


その夜は緊張して全然寝れなかったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る