第39話 王太子殿下からデートの誘いを受けました
近衛の騎士長や女官長に
「いたずらは程々にお願いしますね」
20分くらい、お説教を食らってやっと開放された。
「もう、エレも信じられない。何もあんな巨体を出す必要なかったじゃない。それも咆哮させるなんて」
マリアンが怒って言った。
「それも礼儀作法に煩い女官長に見つかるなんて最低よ。『どれだけ肝が冷えたと思うんですか』って怒られるし」
「本当にワイルダー嬢はユニークですな」
レイモンド様は喜んでおられたので、まだ良かったが・・・・・
「『殿下、あなたはお母上が平民ご出身でよくご存じないかもしれませんが』って、もういちいち母が平民だって言わなくていいのよ」
マリアンは別なことで怒っているみたいだった。
「まあ、殿下、平民出身なのは儂もワイルダー嬢も同じですぞ」
「そうよ。マリアンは半分は高貴な血が混じっているんだから、余程私に比べたら高貴よ」
「そう言う問題じゃなくて、いちいち親の爵位を気にする彼奴等が許せないと思うのよ」
マリアンは怒っていた。
「いやあ、助かったよ」
そこへ、いきなり嬉々とした王太子殿下がいらっしゃった。
私はその雄姿を見て固まった。まさかここでお会いするなんて思ってもいなかったのだ。まあ、ここは王宮だからいらっしゃる可能性はあったのだが・・・・
「あの魔物を出してくれたのはレイモンド爺か?」
「いやいや、儂ではなくてワイルダー嬢ですぞ」
私はレイモンド様に言われて、王太子殿下がこちらを見られて更に固まる。
麗しの王太子殿下が私を見てくれたのだ。
「ワイルダー嬢か。いやあナイスタイミングだった。おかげて煩い両親から逃げられたよ」
何故か王太子殿下は喜んでいらっしゃった。私がしたことが殿下のためになったのなら言うことはないけど、あれで良かったの?
「あっ、お兄様、王宮の食事会逃げ出してこられたのね」
訳知り顔でマリアンが言った。
「何他人事よろしく言ってるんだよ。お前も呼ばれていただろう」
「えええ!、いやよ。どのみち王妃様に嫌味しか言われないんだから」
「お前が居ないせいで俺が集中攻撃受けたんだぞ。さっさと婚約者を作れって」
「作ったら良いじゃない」
マリアンがお気軽に言ってくれる。次期国王を継がれる王太子殿下に婚約者がいらっしゃらないのは確かに良くない。本来はさっさとお作りになるべきなのだ。でも、私としては、私としては嫌だ。何しろ私の王太子殿下はいつまでも独身でいて欲しい。そう思ってしまうのは良くないが仕方がないではないか・・・・。
「だから、俺は昔助けてくれた女の子しか見ていないって言ってるだろう! それ以外の女の子と婚約するつもりはないんだ」
「ほう、殿下も一途ですな」
「本当にエレみたい」
レイモンド様とマリアンがからかってきた。
もう止めてほしい。殿下は私の事なんか、気にもして無いのは百も承知の事だ。でも、この麗しの殿下も想う人がいるのか!
うーん、なんか少し悲しい気がする。
「まあ、そう言う意味ではそうかもしれないが、ワイルダー嬢、そう言うわけだから、私は子供の頃に助けて貰ったその子の事が忘れられないんだ」
私は頷くしかできなかった。
元々王太子殿下なんか雲の上の人で到底無理だとわかっていたのに。なんか現実突きつけられるとそれはそれでショックだった。
私達の姿を顔を見て何故かマリアンとレイモンド様が残念な者のように見ているのはなぜだろう?
私に同情してくれるのは判るが、なぜ二人を見る?
「兄上ももっと良く周りを見たらどうかしら」
「本当ですな」
二人の言葉の意味が全く判らなかった。
「何を言っている。俺は見ているほうだと思うぞ」
「どうだか」
「そんな訳のわからないことをこと言って誤魔化すなよ。来週は必ず食事会に出てこいよ!」
「嫌よ!」
マリアンが我儘を言っている。側近だから嗜めるべきだろうか。ううん、今はまだ見習いだ。それに王族方が話しておられるのに口を挟むのもどうかと思うし・・・・。
「いい加減にしないと、父上が怒るぞ」
「別にお父様が怒ろうが構わないけど」
さすがマリアンは凄い。国王陛下を怒らせても気にしないなんて、それだけ可愛がられているんだろうな。
「お前な。少しは王族の責任をだな」
「両親の相手をするのが王族の責任なわけ?一人は義理だけど・・・・お兄様は両方とも実の両親じゃない」
「お前な」
王太子殿下は額を押さえられた。うーん、悩まれるお姿も悩ましい・・・・。
「まあ、そうね。お兄様が、私のお願い聞いてくれたら、考えても良いわ」
「何だ。また変なこと頼むんじゃないだろうな」
「失礼な。変なことなんて頼んだことはないわよ」
「何言っている。家庭教師を変えろだとか、側近がイケメンだから紹介しろだとか」
「何年前の話をしてるのよ」
「1年前かな」
「大昔のことよね。まあ良いわ。実はエレに新しいカフェに連れていってほしいって頼まれているのよね。でも私忙しくて、代わりにお兄様が連れていってくれない」
「えっ!」
私はビックリした。マリアンは何を言い出してくれるのだ。
「はっ?何で俺が」
王太子殿下の反応は当然だろう。私もそんな事されても緊張して楽しめないこと確実だ。
「いや、マリアン。私は変な誤解されたくないからまだ女の子とそう言うところに二人で入ったことは無くてだな」
「丁度良いじゃない。エレもきっとそうだから、お兄様が連れて行ってあげてよ」
「えっ、でもワイルダー嬢は良いのか。後々噂とかで大変だとは思うが」
「大丈夫よ。エレはお兄様の前で無かったら無敵だから。この前もあと少しで図書館水没させるところだったし、騎士団長にも土下座させたし」
あああ、私の黒歴史をいちいち言うな。王太子殿下の前で反論できないからって何を言ってくれるのだ!
「いや、しかし」
「じゃあ、食事会出ない」
「お前なあ」
王太子殿下は頭を抱えてマリアンを見る。そして私をも。
何か心臓が止まりそう・・・・。
「どうするのお兄様?」
「判った、ワイルダー嬢、明日の午後は空いているかな」
「えっ、殿下、でも」
私は固まりそうになった。えっ、嘘、マリアンの冗談だよね?
「大丈夫よ。エレは空いているわ。じゃあうちから馬車出すわね」
「おいおい、お前が決めて良いのか」
王太子殿下の言われることは当然だ。
ちょっとちょっと私の事なのに勝手に決めないでよ。
殿下とデート・・・・デートなんて絶対に無理だから・・・・
心臓が止まるから止めて!
でも、私の意志は全く確認されずに、
「大丈夫よ。その時間は空けさすから」
私が返事しようとした時には既に予定が決定していたのだ。
えええええ!、私が王太子殿下とデートするの?
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