第21話 マリアンが意地悪王女マリアだってことを知りました
私はお風呂で溺れかけていたのを、心配して入ってきたメイドのリンに助けてもらった。リンはこのお屋敷で住み込みで10年くらい働いているのだとか。ナタリーさんの子供なんだって。私は驚いた。だってリンが20ということはナタリーさんが40超えているなんて到底思えなかった。
リンが用意してくれた衣装はどれも派手なもので私は驚いた。
「ねえ、リン、もう少し地味なの無いの。だって私この真面目眼鏡っ娘よ。こんな服私には似合わないわ」
だって全て胸周りがはだけているのだが、胸のある奴ならいざ知らず、私なんて着るだけ無駄だ。ローズとかクラリッサなら似合ったかもしれないけれど私には無理。
「エレイン様も、その眼鏡外されたら似合うと思いますけど」
リンが言ってくれる。
「リン、私は平民なんだからエレでいいわ。あなたのほうが歳上なんだから本来ならば私が敬語使わなければいけないところ普通に話すから、あなたも敬語やめて」
「そうですか。でもお客様ですのに」
「いいのよ。私はいずれは使用人になるんだから。あんたと同じよ。それとこの眼鏡は魔法の眼鏡なのよ。だから外すことが出来ないの」
「えええ、あの魔法聖女エリの魔法の変装眼鏡なの?」
リンは驚いて聞いてきた。
「え、あなたも魔法聖女エリ知っているの?」
「売れないからって大量に余ったの私も読まされたわよ。この屋敷にもたくさんあるよ」
「えええ、そうなの。あの話素晴らしいのに」
「そう言うのはエレくらいよ」
リンにまで呆れられたんだけど・・・・そうかな。私の愛読書なのに。
結局、私はたくさんの服の中でもアクアマリンで一番地味そうなのを選んだ。でも、この胸の開いたのなんとかして欲しい。マリアン、自分が着れないからって全部私によこしたんじゃないわよね? 靴はサイズピッタリのローシューズを用意してくれていたみたいだけど。ハイヒールでなくて良かった。あんなのはいたら絶対に転ける。
まあ、マリアン相手だから何でも良いか、そう思った私は間違っていた・・・・・
食堂の扉をリンが開けてくれて一歩入った先には、何故か王太子殿下がいらっしゃったのだ。
「えっ!」
私はぴしっと固まってしまった。何で王太子殿下がここにいる?
私には訳が判らなかった。
「ごめんエレ。なんか勝手に来ちゃって」
「おい、その言い方ないだろう」
マリアンが王太子を邪険に言っている。二人はメチャクチャ親しそうだ。
ひょっとしてこの二人付き合っているの?
私にはメチャクチャショックな事だった。が、
「違う」
即座に二人に否定された。また声が漏れた?
「良いのかマリアン」
王太子殿下がマリアンに聞いている。
「全然良くないけど、勝手に来たのはお兄様でしょ」
マリアンの言葉にますますわからなくなった。
お兄様?
王太子にお兄様って言うことはマリアンはその妹って、ちょっと待って!
王太子の妹って王女様じゃないの
「そうだよ。ワイルダー嬢。彼女は私の腹違いの妹なんだ」
王太子の言葉に固まる。
マリアン王女様だったんだ。
「えええ!、マリアン、王女殿下だったの」
私は真っ青になった。今までの数々の不敬なことを思い出す。
「あっ、エレ。気にしなくていいから。あんたにかしこまってもらうと調子狂うから、今まで通りで接して頂戴」
王女殿下が宣った。しかし、そんなの良いのか
「まあ、ワイルダー嬢。妹がそう言っているのだから、これからもそう接してやってくれ」
王太子殿下が宣った。
「は、はい」
私は思わず頷いた。
「それよりもさっさと座って食べて。今日はエスカルゴなんて頼んでいなから。あんたでも十分に食べられるはずよ」
マリアンが言って席を引いてくれた。
いやいやいや、王太子殿下と王女殿下のお食事の席に私なんて着いて良いのか?
「何いってんだよ。この前も一緒に食べただろう。今回は俺が無理やりこいつの屋敷に来ただけだから気にせずに席についてくれ」
王太子殿下に言われてやむを得ず、マリアンの隣にかける。
緊張している私に給仕がスープ持ってきてくれた。
なんかめっちゃいい匂いしている。
「いただきます」
私はそう言うと匂いにつられてスプーンに手を伸ばして一口口に入れた。
「美味しい」
思わず声に出る。
「しかし、ワイルダー嬢は平民なのに、マナーがしっかりしているんだな」
驚いた王太子殿下の声がした。
傍に王族がお二人もいるのなんて忘れて必死にスープを飲んでいた私は固まってしまった。
そうだった。つい匂いにつられて・・・・・
「そうよね。エレってがっついて食べても所作はきれいよね」
マリアンまで言う。
「おいおい、がっついて食べるってそれはマナーに違反していると思うが」
そうか、ちょっと違反していたのかな
私は心配して二人を見ると
「エレはがっついていても、所作がきれいだからがっついているようには見えていないわよ。昨日のケーキ食べるときでもそう」
私はマリアンの言葉にほっとした。
「おばあちゃんにマナー教わったの?」
私は首を振ると「魔法聖女エリのマナー講座を読んだの」
小さい声でマリアンに答える。
「えっ魔法聖女エリってマナー講座の絵本まであるの」
「ああ、あるある、お前は馬鹿にして読んでいないと思うけど、王族への拝謁の仕方まであるぞ」
「嘘ーーーそんなのまであるの」
マリアンは驚いていた。
「でも、何でワイルダー嬢は魔法聖女エリを読んだことあるんだ。あれは市販されても売れなかったはずだけど」
私は王太子殿下に声をかけられてまた固まった。
やっぱり王太子殿下の前だと緊張する。
「父が騎士だったので」
「お父さんが騎士だったんだって」
私の小さい声を拾ってマリアンが答えてくれた。
「そうなんだ。お父さんは今は」
「お兄様、エレの父は10年前のスタンピードで亡くなったのよ」
「そうかすまない。国に殉じてくれたんだ」
王太子殿下の声に私は頷いた。
「でも、ワイルダー嬢は大人しいんだな。良くこの妹と馬が合ったな」
王太子殿下が不思議そうに聞いてきた。
「何言っているのよ。お兄様。エレが静かなのはお兄様の前だけよ。この前も言ったでしょ。日頃は口もめちゃくちゃ悪いって」
このマリアンのやつ、私が話せないことを良いことにあることないこと言ってくれる。
私は静かでおしとやかな令嬢なんだから。
そう思ってお二人を見たら王太子は変な顔をしていた。
「そう、エレは考えていることを知らずに口に出しているのよ。もう本当に凄いんだから」
「えっ、まさかまた口に出ていた?」
私は驚いて聞いた。
それを見て王太子殿下が吹き出しいた。
「そうか、ワイルダー嬢は人見知りなんだ」
「だからお兄様違うって。エレは昔お兄様に助けてもらったから、お兄様命なのよ。だから緊張して話せないの。他のやつになんて全然普通に話しているんだから」
またマリアンは余計なことを言ってくれる。意地悪マリアン、えっ
「ひょっとしてマリアンって意地悪王女マリアなの?」
思わず私は殿下の前にもかかわらず言ってしまった。
王太子殿下がそれを聞いて吹き出す。
「えっ、なにそれ意地悪王女マリアって」
「お前、魔法聖女エリを1巻しか読んでいないだろう。続編にエリに意地悪するマリア王女が出てくるんだ」
「あのクソ王妃、なんてことかいてくれているのよ」
マリアンが怒って言った。
そうか、マリアンが意地悪王女マリアの原型か。そう言えば似ているかも
「エレ!」
怒りのマリアンの声に王太子殿下がまた吹き出した。
私の心の声がまた漏れていたみたいだ。
「本当だ。ワイルダー嬢は面白いな」
王太子殿下にまで笑わてしまった。
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