第24話 大魔術師に言われるままヒールを使ったら辺り一面花畑になってしまいました

私が挨拶すると

「あなたがアリスのお孫さんですな」

レイモンドさんにいきなり祖母の名前を言われた。


「祖母を知っておられるのですか」

驚いて私が聞いた。


「まあ、古い知り合いですな。そもそもあなたの眼鏡は私が作ったものですからな」

「えっ、そうなんですか」

私は驚いた。この眼鏡はレイモンド様が作ってくれたものなんだ。


「じゃあ、レイモンド様はエレの秘密知っているのですか?」

マリアンが驚いて聞いた。


「ほっほっほっ。まあ、アリスは詳しいことは話してはくれませんでしたがな。ある程度は察してはおりますよ」

笑ってレイモンド様が言った。


「そ、そうなんですか」

緊張してきた私はなんか拍子抜けした。


「ここではなんですが、中はもっとごみごみしておりますからな。裏庭に私のお気に入りの場所がありまして、そこでも宜しいですか」


私達に異論はなかったので、レイモンド様はそこに案内してくれた。


それは城壁と魔術師の塔と薬草用の蔦の壁に囲まれたこじんまりした庭だった。


「感じの良い中庭ですね」

私は言った。


「まあ魔術師の塔の傍ですからの。薬草が一杯生えていて気持ちよくさせてくれるのでしょうな」

レイモンド様はおっしゃった。


「その眼鏡の具合はどうですか」

「まあ、問題ないと思いますけど」

「ちょっと見せてもらっていいですか」

言われて、私は久々に眼鏡を取って渡した。


久しぶりの太陽の下は目に眩しかった。


レイモンド様は眼鏡を色んな角度から見て確かめている。


目がなれてくると驚いて私をまじまじと見ているマリアンが映った。


「どうしたのマリアン?」

「えっ、どうしたもこうしたもないわよ。あんためっちゃ美人じゃない」

「えええ、そうかな、マリアン、私のメガネ姿見慣れているから驚いているだけじゃない」

私は否定した。私が美人なんて生まれてから言われたことはない。


「いやいや、アリスも美人でしたからの。当然そのお孫さんのエレインさんも美人だと思いますぞ」

レイモンド様は笑っていってくれたが、シワだらけの祖母と比べられてもな、というのが私の正直な感想だった。


「ま、そう言うことにしておくわ。あんた眼鏡取ったら、あんた巡って凄まじい争奪戦が起こりそうだから」

「そんな訳無いじゃん。ねえ、レイモンド様」

「いやいや、もしそうなったら儂も参戦させていただきますからの」

「本当にレイモンド様もお上手ですね」

私はレイモンド様に笑って言った。


「まあ、殿下が不思議に思われるのも当然ですて。この眼鏡は儂の自信作ですからの。顔を別人に見えるようにするという効果は完璧ということですな」

レイモンド様は笑って言った。


「では、エレインさん。一度ヒールをここで使っていただけますか」

「ここでですか」

「さよう。ここならあまり目立ちませんからの。なんでしたら儂が暴走したということで誤魔化せますから」

「判りました。では行きますよ」


私は立上った。


空気を吸って、呼吸を整える。


「女神様。自然の恵みをお与えください」

私は心の中で祈ると手を上に上げて叫んでいた。

「ヒール!」と。


私が金色に光り周りに次々に波及していく。


そして、草木が金色に光ると周り一面の草木が急激に伸びだした。


そして、草木は蕾をつけると一斉に花を咲かせだしたのだ。


一瞬の出来事だった。


それを唖然とレイモンド様とマリアンは見ていた。


「す、凄まじいものがありますな」

レイモンド様は呆けたように言った。

「す、凄いじやない、エレ」

マリアンも呆然としていた。


「ごめんなさい。メガネ外してヒールやるの魔王を退治した時以来でちょっとうまく行きませんでした?」

「いやいや行き過ぎたくらいで」

「でもこれ、どうやってごまかすんですか」

今の時期に咲くはずのない周り一面の花畑の中でマリアンが呆然と言った。


「レイモンド、これはまたそちのいたずらかの」

そこへ偉そうな小太りの男の人が中庭に入ってきたのだった。

その顔を見ると、


えええええ!

私が心の中で叫び声を上げるほどの人だった。



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男の人の正体は皆さんおわかりですよね。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

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