最近は体が硬くて

「運動は苦手だから、運動会ってあんまり嬉しくないのよね。練習もしんどい」

「そうなんですか」

「ええ。初海さんは? 運動は得意?」

「正直、苦手ですね。必要に迫られなければ、走ったりしたくないです、マジで」

 初海さんは、心底辛そうな声で言った。何なの? 最近、走ったことがあるの? とか思いつつ、自分と同じ運動が苦手という初海さんにまた1つ親近感を覚えて、私は言った。

「あら、一緒ね(笑)」

「そうですね。ふふ」


「私もね、昔はもうちょっとましだったんだけど。でももう、体も硬くて」

「え? 昔は? って、いつごろのことですか?」

「そうねえ、1年生のころ? あのころはまだ元気がありあまっていて、走るのも、今ほどには苦じゃなかったわ」

「え、1年生、って、6歳。3年前。あ、そうですか…」

「? なあに? ねえ、何で笑ってるの? 何かおかしい? ねえ?」


        ***


 懸命に堪えようとするものの我慢しきれず、忍び笑いする初海さんに、そう言って縋ったんだけれど、今考えると、ま、そうよね。笑うのも無理ないわ。9歳の子どもが、昔は体がもっと元気で、体が自在に動いた、だなんて(笑)。

「運動は苦手だから、運動会ってあんまり嬉しくないのよね。練習もしんどい」

「そうなんですか」

「ええ。初海さんは? 運動は得意?」

「正直、苦手ですね。必要に迫られなければ、走ったりしたくないです、マジで」

 初海さんは、心底つらそうな声で言った。何なの? 最近、走ったことがあるの? なんて思いつつ、自分と同じ運動が苦手という初海さんにまた1つ親近感を覚えて、私は言った。

「あら、一緒ね(笑)」

「そうですね。ふふ」


「私もね、昔はもうちょっとましだったんだけど。でももう、体も硬くて」

「え? 昔は? って、いつごろのことですか?」

「そうねえ、1年生のころ? あのころはまだ元気がありあまっていて、走るのも、今ほどは苦じゃなかったわ」

「え、1年生、って、6歳。3年前。あ、そうですか…」

「? なあに? ねえ、何で笑ってるの? 何かおかしい? ねえ?」


        ***


 懸命に堪えようとするものの笑いを我慢しきれず、忍び笑いする初海さんに、そう言って縋ったんだけれど、今考えると、まあ、そうよね。笑うのも無理ないわ。9歳の子どもが、昔は体がもっと元気で、体が自在に動いた、だなんて(笑)。

 60代になって、膝や腰が痛くてリアルに体が思うように動かなくなってきちゃっているけれど、これもまあ、2、30年後の自分からしたら、笑っちゃうような、可愛い部類に入るのかしら?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

うちのねえやの言うことにゃ~初海さんと貴禰ちゃん はがね @ukki_392

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ