2050年5月24日 カレー事件 後日譚

「2050年 5月24日


 ホームルームで、おとといのカレーじけんをはなしあった。私もよくないところはあったと言ったら、あやのさんも、私も、と言った。

 おばさまにこのはなしをしたら、だとうでぶなんなけっちゃくね、と、言われた。よの中には、あのくにの人がこうだから、みたいな本がいろいろあるけれど、大きなおせわよね、だって」


        ***


 あの日、家に帰ったら、叔母さまがいらしていた。顛末を語ると、肩を竦めて、ま、妥当で無難な決着ね、と言い、

「よくあるのよね、あの国の人はこれを持っているとか、これを実践しているとか」

 と言葉を継いだ。


「じっせん?」

「行っている、ということ」

「ああ」

「単なる事実としてではなくて、どこか『だからあなたもそうしたらどうですか?』みたいに感じられるのが、どうもね」

「そういうのって、よくないこと?」

「別に、よくなくは無いわよ。その話をもっともだと思って、同じように行動して、よい影響が得られた人もいるんでしょうから、それはそれで有益だと思うわ。ただ、私は、そういうのって、だから何よ? って思っちゃうのよ。それだけ」

 うんうんと頷いて聞いていたら、叔母さまはさらに話を続けた。

「自分がそうしたいならすればいいのに、他人にまで押し付けるのは感心しないわ。 

 あの国の人は服を10着しか持たないって、じゃあ、もしも家の中では家族全員が全裸で過ごしてるって言われたら、真似するわけ?」

 そう言われて、想像してみた。お父様もお母様も私も、裸。私は、うわあ、そんなの、絶対、嫌! と身震いして、それから笑ってしまった。


 …でも、どうなのかしら? 中には、真似する人もいる、のかしら??

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