2049年6月15日 読書感想文の“お約束” 考

 初海さんがねえやになってくれた年のできごとを、見てみようか。適当にページを戻してみる。と、読書感想文についての日記が目に飛び込んできた。ああこれ、納得いかない気持ちでいっぱいだったときのだ。


        ***


「2049年6月15日


 どくしょかんそう文のしゅくだい、北のくにのかいぞくのおとこの子のぼうけんのおはなしをとおもったけど、ちょっとまよってる。わたしのかんそうは、おとこの子がまだいなかったときかいぞくたちはどうやって生きのびていたの? なんだけど、きょ年のつるのかんそう文で、せんせいに「おはなしですから」といわれたから。」


        ***


「つるの、感想文?」

 学校からの帰り道、感想文の題材について迷っている、書こうと思っている本が、去年の、鶴の感想文と同じような評価を受けそうだから―。そう言うと、初海さんは不思議そうな顔でそう聞き返してきた。


「そう、昔話の。鶴を助けるやつ」

「ああ、助けた鶴に連れられて~♪ ってやつでしたっけ?(笑)」

「いや、それチガウ(笑)」

 少しばかり深刻な顔をしていた(らしい)私を和ませようとしたのか、ちょっとふざけた調子で言われ、思わず笑ってしまい、気持ちが浮上した。そして、1年生のときに書いた感想文と、先生の評価について説明することになったのよ。

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