うちのねえやの言うことにゃ~初海さんと貴禰ちゃん
はがね
プロローグ、または、九条貴禰の10年日記 最初の1冊
長らく書き継いできた10年日記の中でも、5歳のときに書き始めた最初の1冊は、私にとって特別な存在。だって、初海さんと過ごした期間とほぼ一致しているから。彼女から、そして、父方の祖母の妹、つまり大叔母様から、少なからぬ影響を受けて育った私の、そのころ考えたあれこれが、私のその後の基礎を作っているから。
あれから、半世紀よりももっと長い時間が経っているけれど(10年日記が、7冊目に突入するほどに!)。だから折々に読み返す。そして発見する、あの頃はわからなかったこと、新しい真実に。
***
毎年必ず思い出すのは、日記を書き始めてから1年ちょっと、このくらいの季節のできごと。幼いころに住んでいた屋敷の、8分咲きの桜並木を潜って、大きな荷物を携えてやってきたあの人を、2階の父の書斎から見ていたときのことを。あれは、私が7歳の春の、3月15日。あの人、佐納初海だ《さのうはつみ》さんが、住み込みで働くことになった、最初の日。
「菜虫化蝶、だね」
あのとき、初海さんの到着を一緒に待っていた父が呟いた言葉、この言葉も、その声音までもが、今もなお鮮明に脳裏に蘇る。
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