第8話
まさか、こんなことになるなんて……。
昨日は、一睡もできなかった。
ローマンの本性が明らかになり、私はショックを受けていた。
まさか、こんなに酷い人だなんて、思わなかった。
以前は、浮気をしたことを、誠心誠意謝っていたのに、どうして、こんなことになったの?
彼のあの反省は、嘘だったとは思えない。
でも、彼は浮気相手を見つけて、変わってしまった……。
両親に浮気のことを報告しようとしたのに、まさか、あんなことを言われるなんて……。
でも、彼が言ったことは、事実だ。
そして、そう言えば、私が報告できないことを知りながら、彼は私に、酷い言葉を浴びせてきた。
私が報告すれば、たくさんの人の人生を壊してしまうのは、まぎれもない事実だ。
だから私は、彼の浮気のことを、報告することができない。
「これから僕は、浮気相手に会ってくる。報告したければ、好きにしろ」
ローマンは笑いながら、家を出て行った。
私が報告できないことを知りながら、あんなことを言うなんて、なんて酷い人なの……。
彼はもう、浮気のことを隠そうともしない。
私はまた、涙を流していた。
どうしてなの?
悪いのは全部ローマンなのに、どうして私がこんなつらい思いをして、彼は楽しんでいるの?
こんなの、おかしい……。
あまりにも、理不尽だわ……。
でも、私には、どうすることもできなかった……。
*
(※ローマン視点)
僕は、マリーとの待ち合わせ場所へ歩いて向かっていた。
もう、クリスタに隠れてコソコソとする必要はない。
堂々と、マリーに会うことができる。
そのことで、こんなにも清々しい気持ちになっていた。
「やあ、マリー、お待たせ」
「ローマン、会いたかったわ。今日は、私の家に行きましょう」
僕は彼女と並んで歩いていた。
外では、彼女とベタベタするわけにはいかない。
僕は表向きは、クリスタと結婚しているのだから。
友達としてマリーに会う分には問題がない。
彼女とは昔から仲の良い幼馴染なのだから、なにも不自然ではない。
外では恋人のように振る舞わなければ、二人きりでいるところを見られても、何も問題はないのだ。
彼女の家に着いた。
僕は、彼女に案内され、家の中に入った。
家の中にさえ入れば、誰からも見られる心配はない。
僕たちは、恋人のように振る舞うことができる。
唯一、浮気のことを知っているクリスタは、僕が釘を刺しておいたから、何もできない。
あぁ、なんて哀れな女なんだ……。
僕がこうしてマリーと楽しんでいる間、どうせ君は、何もできずに泣いているだけなんだろう?
惨めだなぁ……、君が甘さを捨てることができれば、こんなことにはならなかったのに……。
まあ、今はクリスタのことはどうでもいい。
マリーと二人きりの時間を楽しもう。
そう思っていたが、マリーがまさか、あんな行動に出るなんて、この時の僕は思ってもいなかった……。
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