第19話

 私はローマンの言う通り、憲兵を金で買収することにした。


 幸い、まだマリーのことは発覚していない。

 私は憲兵の駐屯所へ向かい、話をすることにした。

 私と会ったのは、なかなか話の分かる人物だった。

 金で何人かを買収することで、計画はスムーズに進行した。


 私は何もかも事情を正直に話し、お金を渡して、そのことを黙っておいてほしい、捜査を攪乱してほしいとお願いした。

 そして、写真の回収も頼んだ。


 さっそく、マリーの事件が捜査され始めた。

 事件は、強盗の仕業に見せかけられた。

 ローマンには、一切疑いの目が向いていない。

 容疑者が一人も捜査線上に浮上せず、事件解決は難航状態となっていた。


 すべては、買収した憲兵たちが、うまく立ち回った結果である。

 捜査が始まる以前に買収できたことも大きい。

 これによって、ローマンは疑われることがなくなったので、私は安心した。


「例のものも、回収しておきましたよ」


 憲兵がそう言って、私に写真を手渡してきた。

 ローマンとマリーが裸で写っている写真である。


「ありがとうございます。これで、安心ですね」


 私は果たすべきことを果たしたので、憲兵の駐屯所をあとにした。

 一人で歩きながら、私はローマンのこと、そして、自分の置かれた状況のことを考えていた。

 私はポケットから、例の写真が入った封筒を取り出す。


 手に持っている封筒を眺めて、私は思わず笑みを浮かべていた。


 まるで、ローマンの心臓を握っているかのような気分だった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る