第20話

 (※ローマン視点)


 僕は緊張しながら、クリスタの帰りを待っていた。


 彼女が憲兵を金で買収する作戦を決行した。

 果たしてうまくいくだろうか……。

 まずは、なんとしても、あの写真を回収しなければならない。


 あの写真の存在が、僕の立場を危うくしている。


「遅いな……。うまくいっていないのか?」


 工具で金庫を開けて、その中にある写真を回収する手筈になっている。

 あの写真さえ処分すれば、僕はもう、何も恐れることはない。

 憲兵は僕が犯人だと分かっているが、金を渡しているから逮捕することはない。


 あの写真さえ消えれば、僕が浮気していたという証拠はなくなる。

 もし浮気していたなんてことが知れたら、僕は家族からどんな目にあわされるかわからない。

 僕の人生が終わってしまうことだけは、確実だ。


 玄関の扉が開く音がした。


「クリスタ! どうだった? 写真は回収したか?」


 僕はさっそく彼女に聞いた。

 とにかくそのことだけが、気がかりだった。

 僕は不安な気持ちに包まれながら、彼女の返答は待っていた。


「ええ、写真は回収したわ」


「そうか……」


 僕は安堵のため息をついた。

 これで、僕の浮気の証拠はなくなる。


「よし、さっそく写真を渡せ。燃やして処分する」


「いえ、写真は持ってないわ」


「え……、あ、そうか。もう処分したのか。お前にしてはやるじゃないか」


 これでもう、証拠は完全に消え去った。

 そう思っていたが……。


「いえ、処分はしていないわ」


「……え?」


 処分していない?

 えっと、つまり……、どういうことなんだ?

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