第16話
(※ローマン視点)
いったい、どれくらいの間、マリーの上で馬乗りになっていただろう……。
いつの間にか彼女は、動かなくなっていた。
もう、後戻りはできない……。
僕はいったい、どこで間違えたのだろう……。
わからない……。
たとえわかっても、後戻りなんてできない。
目の前にいる彼女は、二度と動くことはない。
こうするしかなかった……。
こうしないと、僕は一生彼女の奴隷だった。
彼女の言いなりになるなんて、嫌だった。
いつ秘密をばらされるのかと怯えながら過ごすなんて、僕には耐えられなかった。
だから、こうするしかなかったんだ……。
「これで、秘密が漏れることはなくなった……」
僕の浮気を証明するものは、誰もいない。
いや、クリスタがいるが、彼女は僕の言いなりだから、報告できない。
これで、僕の立場は守られる。
とりあえず、帰ろう……。
これ以上、ここにはいたくなかった。
彼女と同じ部屋にいると、否、彼女だったものと同じ部屋にいると、胃の奥から何かがこみあげてきそうだった。
僕は、震える足で何とか歩きながら、家に帰った。
もちろん、金は回収した。
家に着いた。
二階にある部屋に回収した金をしまって、何か飲み物が欲しかったので、一階に降りた。
そこには、クリスタがいた。
その彼女と、目が合った。
「……ローマン、どうしたの? あなた、酷い顔よ……。死にそうな顔になっているわ……」
死にそうな顔?
彼女の言葉を聞いて、僕はあの時見た、彼女の死にそうな顔を思い出してしまった。
気分が悪くなる。
「誰も死にそうになんてなっていない! 縁起でもないことを言うな!」
僕はクリスタを突き飛ばした。
彼女は床に倒れて、そのまま泣いていた。
僕は飲み物を取って、自分の部屋に向かった。
とりあえず、マリーのことを、何とかしないと……。
彼女は、家に一人しかいない。
数日なら、バレないと思う。
しかし、不審に思う周囲の人がいるだろうから、彼女が死んでいるのが見つかるのは、時間の問題だ。
もし彼女の遺体が見つかれば、僕は疑われるのか?
わからない……。
疑われても、証拠はないはずだ。
それでも、不安なことには変わりない。
これから、ずっとこの不安な気持ちを抱えていかなければならないのか……。
*
私は、ローマンのことが気がかりだった。
この前も様子がおかしかったけれど、さっき帰ってきた時の彼の様子は、それの比ではなかった。
絶対に、何かがあった。
あんなに顔色の悪い人間を見たのは、初めてである。
何があったのかは、わからない。
でも、彼にとって良くないことが起きたことは確かだ。
私はいつの間にか、笑みを浮かべていた……。
どうして?
さっきは、心配して彼に声を掛けたのに……。
わからない……。
最近は、理不尽な目にばかりあっているから、私の中で、何かが変化したのかもしれない……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます