第10話
(※ローマン視点)
写真を金庫に入れたマリーが、ベッドに戻ってきた。
僕は彼女を、そっと抱きしめた。
しかし、ここで、予想外のことが起きる。
「触らないで!」
マリーが突然、僕のことを突き飛ばしたのだ。
「え……」
ど……、どういうことだ……。
どうして急に、僕のことを突き飛ばしたりするんだ?
あまりに突然で、衝撃的な出来事だったので、僕の頭は混乱していた。
床に倒れたまま、動けずにいた。
マリーは、そんな僕を見下ろしながら、服を着ていた。
どうしてもう、服を着るんだ?
まだまだ、時間はたっぷりとあるんだ。
服を着る必要なんて、ないだろう?
それなのに、どうしてそんな顔をして、服を着るんだ?
……また、脱がせばいいのか?
そういうプレイなのか?
混乱したまま、僕は彼女の服を脱がそうとした。
しかし……。
「触るなって言っているでしょう!」
また、彼女に突き飛ばされてしまった。
え……、本当に、どうなっているんだ……。
そういうプレイではなかったのか?
ではいったい、どうして彼女は、こんなにも豹変してしまったんだ?
僕は床に倒れたまま、ますます混乱していた。
「ど、どうしたんだ、マリー……。急に、別人みたいな態度になって……、僕が何か、君の気に障るようなことをしたのか?」
僕は、できるだけ優しく言った。
とにかく、わけがわからない。
どうして彼女は、こんなにも豹変してしまったんだ?
僕が、何かしてしまったのか?
もしそうなら、僕は彼女に謝りたい。
急に突き飛ばされたことも、別に怒ってなどいない。
僕はただ、理由が知りたいだけだ。
そして、その原因が僕にあるのなら、改めるつもりだ。
こんなことで、僕が彼女を愛している気持ちは、変わったりなんかしない。
「私の気に障るようなことね……、したわよ! 私の気に障るようなこと! あなたは、それが何なのか、自覚すらしていないのでしょうね!」
彼女は今まで見たこともない表情で、僕を睨んでいた。
やめてくれ……。
どうして、そんな顔で僕を見るんだ。
いつもの優しい笑顔は、いったいどこへ消えたんだ?
「やっぱり、僕が何かしたんだな? すまない! 君の言う通り、僕はそれが何なのか、自覚していない。自分で気付くのが一番だというのはわかっている。だけど、僕にはそれが何なのか、さっぱりわからない。きちんと改めるから、何が君の気に障ったのか、教えてくれ」
僕は彼女に必死に言葉をかけた。
こんなところで、僕たちの関係は終わってしまうのか?
そう思ったが、それは僕の勘違いだった。
僕たちの関係は、終わることはなかった。
ただ、僕たちの関係は、ある形に変わって続くことになるのだった……。
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