第11話
(※ローマン視点)
「やっぱり、僕が何かしたんだな? すまない! 君の言う通り、僕はそれが何なのか、自覚していない。自分で気付くのが一番だというのはわかっている。だけど、僕にはそれが何なのか、さっぱりわからない。きちんと改めるから、何が君の気に障ったのか、教えてくれ」
僕は彼女に必死に言葉をかけた。
すると、彼女から、予想外の言葉が返ってきた。
「あなたが私の気に障るようなことをしたのは、今から一年以上前よ」
「え……」
どういうことだ……。
一年以上前だと?
てっきり、さっき、抱きしめたことだったり……、そういうことだと……。
つい先ほど何かしたのだと思っていたのに、一年前のことだと?
僕は一年以上前、何か、彼女の気に障ることをしたのか?
全く覚えがなかった。
どうして今、そんな昔の話を持ち出すんだ?
今まで、彼女はそのことを我慢していたということか?
だから、こんなにも態度が豹変してしまったのか?
「まだわかっていないようね。あなたが一年以上前に私にしたこと。あなたは、私のことを、捨てたでしょう!? どうしてわからないの!? 私は、あんなにも傷ついたのに!」
「あ……」
そうだ……、マリーと再会した時は、普通に話していたから、忘れていた。
僕はマリーとの浮気がクリスタにばれて、その時にクリスタと約束した。
マリーとは、もう会わないと。
僕は、それを彼女に伝えた。
彼女は、泣いていた。
家の中で、涙を流していた。
しかし僕は、そんな彼女をそのまま置いて、家を出た。
もう、関わるつもりなんてなかったから。
浮気のことを両親に報告されずに済んで、そのことで安堵していて、マリーの心配なんて全くしていなかった。
彼女がどんな気持ちだったかなんて、想像すらしていなかった。
「私はあの時、誓ったのよ。必ずあなたに、復讐するって……」
「そんな……」
まさか、彼女がそんなことを考えていたなんて……。
つまり、再会した時に、彼女が見せていた態度はすべて、演技だったということか。
僕はそんなことにも気付かず、浮かれていた。
またマリーと一緒にいられることが嬉しいと思っていたのに、彼女は腹の中で、僕に復讐することを考えていたのか。
愛していると思っていたのは、僕の方だけだったのか……。
彼女は僕とのよりを戻した。
それは、愛する者に捨てられる絶望を、僕にもわからせるためだったのか……。
「気持ち悪いわね、何泣いているのよ? 私の復讐は、まだ始まったばかりよ」
「え……」
なんだ?
彼女の復讐は、愛する者に捨てられる気持ちを、僕に味合わせるだけでは、ないのか?
僕はもう、充分に傷ついているぞ……。
これ以上、何をするつもりだ?
数分前までの幸せな気持ちは消えてしまい、気付けば僕の心は、不安な気持ちでいっぱいだった。
いったいこれから、どんな復讐が待っているんだ?
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