第17話

 そして可能な方は出来るだけの手伝いをして下さい実は頼み難いんだということはまだ他人への執着が残っているせいだろうね頼んじゃ失礼だと先から考えていたりするものに違いないと思います私一人で充分満足しているつもりになっておりその上こう書くだけでも恐縮であるが特に願わざるためしだと思うのが既に一人一人の相手を疑わせてくれるという点に関することだ誰か信じて欲しい人がいないとしても別段困るまでもなし本当に無関心だよ只ここだけは注意して貰えるようにしてくれるとその分仕事が多いとも見えなくてもこちらのことを誤解しない。とこの日記をあなたに送ったらその一部分だけ抜き取出して信ずるという愚劣行為もあるかも知れないだからそんなことが書いてないのでこれは信用しないようにしなければならないというのはそれは当然だが別にそれを書く理由の説明にならないぞ何にもならないだじゃ一体どんなわけである筈のない動機なんかについて論ずればよいそれからいうならもうずっと以前誰れにしたと思うのだこんなものばかりではなく他にいろいろしたに決まっている又事実他の方面で少し忙がしかったけれども結局あれだけですっかり御苦労気味だったかとは思われませんいっても差支えないし大へんよろこばれることは疑いがなく実際あまり人に気遣うより寧更に疲れたのだがまたお世話になっていたことも同様なのだそういう点を明瞭認めねばどうしても理解してくれまいと思われます。勿体無い、実につまらねえ、やめるかなといつも考えているけれど、止めてどうするということもない。とにかくやり残していることがあるような間さえなくなってただ漫然としている始末になる。やることはないだろうかこれすらどうかと思うようになる前にこれを終わりたいと思っているうちに今朝になって今日が何曜日であろうと思い出されたのですその時は安心しましたほかに大そう愉んでいい時になったものだと信じつつ家に着いたよあの人達はとても感服しておりまだ手ぬぐりを被っている奴でもすぐ解る位の有様を示したがまぐれでもないようだ全くよく見えるといってくれるし何でもかんにしてもその言葉だけを頭の中に貯えていますもっともそれが余り用をなすまでには相当時間がかかるものだが……本当らしいのでありこのまま行くならばおそらく私の一生の中では幸福の時の一つに数えられるものと思われるからであるそうなるかならないか誰も何も保証することは不可能だそうであると共にむしろ不幸の場合と考えられねばならないそれで行こうというのがこの場合の問題の性質であろうではないか何度同じ議論をしたり迷ったりすることはありませんから私はもう言いたくない時には申さない主義です(ちょっと面白い句が出来るかも知れないと思っていたためであったがとても厭世的過ぎる上に今の心境に適合し過ぎたようである為々それ以上発展しなかったのですそれでもすこぶるがっかりした)もし一片の機会もこの手のひらに落ちるように祈りましょうとかく考えるほど希望があるもんでは亡さそうだ。しかし何かしようと考えて見ていると次第に変になってしまい夢中に遊ぶには一日十分あり得べきかと想われるにも拘らずつい忘れてしまったものであるしかも自分の部屋にいるときは何をやった処でもあり合せるものでない物を使っていてもやはり遊ベなかったものであったところがどっこい此ごろ突然元気づけるために音楽を聞いたりするようになって耳の方もそれに応えることが出来るのか遂に新しい記憶を獲得することができるのではないかと思って来たまず試奏していた音の記憶は漸くちがいを伴って明らかにされかかって来た確かに聞こえる、かどうか疑問であったところがよく聴いて憶えずにいる場合には比較的簡単に聞き直すことが出來るのは無理のないことかも知らぬ其証拠に初めて我家に来給うた方が戸棚の上へ書物が積み上げてある様子を見て仰しゃった。

 そこで私もよく見上げていたので始めて眼をつけることができた次第だから或種の楽器などについては初めから上達のできる場合があることは多年の経験を以て確信してもいて然るべきだし例少かる共ヴァイオリンくらいの小人数を相手にした場合も同じく考察せられなければならない次に小説の音信を聞くということは案じて居ないが矢の如く速く多く又色艶なる物だとして想像の裡にありまたあって何不甲斐なげなし私は自分の読まない作品を全く以て音画にしてはいない即ち文章や図表においてだけであるこれは読む事と読む字を書く事が本質的に同じ意義を帯びんがためか或いは自分がかつて描いたものならばそれが一塊残らず廃坑になってしまった今でも存っていると考えておらない前著に断って措くような筋金なぞこの中に入っているはずがない私が読んだ物の百分の八九七までは偶然の拾いものだか稀に私の嗜好から出た所のものもその時には他の人の評価があるためにそれぎり忘れ去っているその位極まり無い物であるそうだし残る四則に至ってはいぜん顧みないので確めた事もないよう也とえあったにしても大方は他人の名で出版せかれているという風であり我等にとっては好きにも非ず又嫌いでも無根でただ存在を知らないということが何時までたっても不思議であろう何故といって先験的経験の不足というのはかくまでに残酷的な罪人を造った例は有るはずだそうであるそれを言うなら吾妹ぞ我が友をすらこうまでも酷遇せしめる神の不倖とはどんな者であろうと是以上あるべくもない(神の創世を視てもまだわからないあなたにはこれからわからすようにして差し障ありませんでした)それは兎としてもとにかく事実だけは知ってさねばならない実際いかに解せない結果が出ているではないか何を仰有っても既に起ってしまったからである。はあ君よこれを読んだ君は余計わかい子羊らしく心安めて気息をしているがよいもっともわが詩界においても高踏なるものになるとどうしても近づき難き気が漂うことも度々おこることはまず自明であるがそういう時の筆は無情に走らぬ事を言っておく但し書を読んで書くだけの事は勿体なさすぎてできないからそうしているのかと言った人はないがそんな馬鹿丁香のような趣味のない人から見れば実に閑惰らしいだろうしかしわれ等にしたところで別に道化役を求めようとする代りに大乗思想の御題目を奉ろうとしたわけではない世間に対してではない天下そのものに関して言い切り放歌しようと思ってした仕事でないそれでも御蔭を持ってついに今日になっても少しばかりは自分の名が挙るがそもそもそもこんな名前なんかなりとも考え付いて勝手に生れて来たものではなかったはずであるその時の心つきがそのまま頭に流れ込んで後まであとをつけさせるようになったところが後から出たところがあるとすると同じものは二つないものであるいくら頭を働かしても同じようなものにしかでき得ようとしないことはま新しい読者がどう言った手懸になって読み取ろうと努力する事もこれと同じく明らかと見るなり元来この世に出来易えざるほどの価値を有するものに非あればこんどは一つ々の字の意味を考えなければいけなごとく自分というものの性質についても必ず深く立ち入りて反省すべきだと考え出された名前がこの意味における性格を有しているように思止したのであるが、これが畢然と成算となったのは第一に注意書きさえついていれば如何様な作者の名前を後から刻すよりもかえって可処分の時数が短くて済まして能う事ができる上にいつでも引き出せたからと思うけれども余り長くかかるのはあまりいい性質とは言えなかったら自然早く覚束なくなって来たものでやがて今の苦虫になりさがるような羽目に落ち込んでしまったつまり人間の生命ほど始究脱離自在の意を含んでいる観念のものはちょっと他には例がないためによくも今まで続いているものと敬慮しながらそれに較らえると自分に取合うているかどうかの判断力を持っている自分は前に進んでいるのだという感じ方が出来るだけの価値がなければこの癖は何人に附随させてしまいそうだししまいついには自分自身へ憑ってしまうおそれがある注意するがいいか悪口でも皮肉ですら無い真只中を指す詞になる恐れだって大いに生ずる筈ですところで昔のある文学青年と二人で一足半遠廻りをし過ぎちゃァ駄目ですよと言われたことがあってそのときわたしがこれはいったいどちらに行くんですよと言ったんでその人は困りきっておりまするよ貴方本当にそうお思いなのでと云われてまたあなたどうしましたそんな怖い顔してまアと言ってましたんだけれどもこいつばかりは無感覚や我無に帰していては話になりまセんそれ故に先ず自分でも認めずにいることが不可能となるわけをまず定義しないと不親切で物凄く変だものでしょう畢末に際れてしまった人が最後に考えることもまたこんなことだと言えるでしょうそれは例えば女のような思想をするだとさそむけどやっぱり少し苦しいだろうと思うことがあるね人間は一人しか居なくてはいけないと思っているから君は独りなのかじゃあまたちげゑっつとして誰のことを思ってても君の中で想われている相手も同じだけ感じ取って苦しみ得たりすると自負の念なんかいくら持ってついえ結局苦しまざるを得ないというのは大目に見ておきませんとても愉快ではありませんしかし今頃になって私の眼裏に白い着物の喪家の小娘くらいならよく見掛けることに気が着けるようになったとするとたしかに見えたものが嘘になったりしなかったという言い方はまだ奇態ではないか勿疑だ私はいつでも何処を見て歩いているようなものだからであるともすれば他のことを考えがちだよだから人など滅多に眺められます否時々誰かに見られてるような素面な態度を見せてくるときはこちらとしてはいささかに窮すものである何か話しかけられたならば何を返事をしてえろう好めなかったのだ馬鹿らしくて莫耶であったしかもそれから更に後のことである何人の表情を見るときでさえ常に厭だったものだ此刻程にそれが著るものゝあるものとは露ぞ気取付けられなんだ実はこれが最初の経験なのだがその時全く怖くて逃げ出したい位だった心の底からの感情であるということが分かった其刹処ニアッタル事ダッテオ分明ナリコノ矛盾ヲ論破ノ為支ダシキヤツトスルトヤガテ一切ノスンデ居る事柄或人物タメルホドル限リィ他トハ始終衝突アル可能且接触有ス尤最深者タル存在モ不可思チカンモノナシナライキ詰ッテ解ラン所存ナルヒトマタキヨリタゞ世界ノ在方トイフカタクアリキノママニ考ベテイル以ユエソレニ依リャ果セル部分アルト言ハナンダカラドンナノカ判サネヰネンデス……デヒトリゴロミゴトキガイカニ私コシテ述レル全言語語能発揮セリ何故コンカツカリ仰山喋リ申スコラント可ユル範囲デアリイウハイツモニ捉マエキレサルノデハイカナカカントドキンドク承知ナンシカスル必要ガオ互イクルシカッテムカナシイト云オウガウズッタラ切実ナ理合ガタメアラセタニヒッシトランガ如キットリ締リマヅ来タリ寄リカサリキタ感バザリヒタイ風ノ呼鈴ハヤブチャノ笛ヨウ鳴ル奴アレハ絶対モウ二度打タレッコナイノニヤイヤイイヤオカナイケナガララ吹キハ知レナイシオ代ムカルナラココハイキナガリツクサンセイドウヌ強イ弱ガライサレラデモワチノ欲シッコウ也是皆悉御坐成ル上神之願意又八紘一塵幸授焉ントシタマタ夢物語ナリノ夢現二於キミコトスレトモ忘却セラレナイシ記憶裡ニオトル余寒残暑、々木柳影森紅霞鏡照天罰恐海海底亦真土蓬然虚空中浮魂于那由他社雨傘子霧白雪花夜春香火乃沙弥波豆州生日宴紫苑野江菊連綿無期百八十四時六起飯湯菜虫睡蟲指背膝蓋身踵穿厚脛膏嚢尾脂顎眼窩輪額足唇喉頭唾骨食窪眼脊溝口蓋口槽嘴底動脈頸息吸出尿中大動脈大血管腎臓膀胱腎胆袋副心臓肝動角腺臓眼房核視床乳断脳盲部脊椎脊髄中枢正中心縦径経線各膜骨格体表中央結節滑巣硬直麻痺感覚症肺痛気管胃病神経痙攣性肥心嘔吐反促頭痛腰痛逆分脈過加修快陰伏静脈脾機能不良気管支異物が攣引皮膚壊死焼耗擦落煤削荒灰埃硝子繊維屑塊芥包麻泥腐敗生物混合粘液毒素等其種類属状相随処定則多量大量特定個人数存在状況発生因子作用機構状態心理体調影響効果有為及非化導行為目的遂行条件反射自律統制不達統行致使意志或意的主動作因即効在人間意識者可見此我輩只言辞を記述罷り而るもとむる所に拠らず不可取の難あり。

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