農業高校生が趣味で書くエッセイ

みやにし

他人には分からない物の価値

 私は、なんかの城が描かれた10センチほどの四角形のキーホルダーを大事にしている。小学校のころ、友人が旅行のお土産にと私にくれたものだ。

 今となっては疎遠だが、このキーホルダーを出すたびに、私の頭には雪のようにゆっくりと懐かしく心地の良い思い出がふりつもり、心には雨のような嫌な思い出の粒がザーザーとノイズを響かせながらつついてくる。

 ノイズは少しずつ大きくなり、やがて良かった日々を覆ってしまう。

 そして最後には、思い出の詰まったこのキーホルダーを私は捨てたくなる。だけど私は捨てない。

 嫌なこともまた経験だからだ。歩んできた時間、経験を捨てるということは人生を捨てるのと同義だ。

 そんなもったいないことは、少なくとも私はできない。

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