多肉植物と触れ合い生き方を学ぶ

 ひとえに農業の高校といえど、いくつかコースがある。私はその中でも園芸コースを選んだ。理由はたしか園芸とは名ばかりで、じつに自由度が高いという実情があったからだ。

 だが結果は新任の教師がコロンブスのごとく新天地を切り開くことにバリバリと張り切ったため、へちま育成コースと化した。

 まぁそんなことはどうでもいい。

 私は園芸コースに入り、不思議な植物たちと遭遇したのだ。その名は多肉植物。形は丸っぽく愛嬌のあるやつもいれば、トゲトゲしい見た目をしていたり切れば謎の液体が流れてくる植物もあったりと多種多様だ。

 だがどれも総じて、根の内部には水分を貯めているという共通点がある。というかそういう植物の総称が多肉植物である。

 この植物は生きることにおいては実に力強い。

 私は多肉植物の寄せ植え中に、誤って葉をポロリと落としてしまったのだ。当時はめんどうくさくて拾うことはしなかったが、ある日掃除のために下を覗くと、私が落とした葉から根が生えているのだ。当然水はあげていないというのに、その葉は死ぬまいと土を探していた。

 私はその葉を育ててみることにしたが、これがどうだろう。実にスクスクと育つじゃないか。

 巷の自分が悪いのに萎えて家に引きこもる人人間は、逆境に追いやられても、命の水を与えられなくとも、絶対に折れないその姿を精神にリスペクトするべきだ。

 失敗しても、失敗させられても、よほどのことでなければ死ぬことはない。だったら多肉植物のように、無様に力強く生きようじゃないか。

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