ゴミについた付加価値は思い出

 ある日壊れた。

 中学生になるとともに、人生で初めて買ったえんぴつ以外の筆、シャープペン。

 大事にして、大事にして、一生一緒に使うんだろうと思っていたが、ある日唐突に壊れた。

 私はシャーペンに詳しい人間じゃない。壊れた原因は分からない。

 ただ壊れた。その日はちょっと私の湿度が上がったものだ。

 ある日思った。

 この数年間私が大事に使った末に、壊れてしまったこのシャープペンは、いったいどう思っているんだろうと。

 物として使ってもらってありがとうと、感謝の念を抱いてくれているだろうか。それとも私なんかの手に渡った結果、本来十年は保つはずが数年でスクラップになってしまったのが我慢ならないと、そんなハエ叩きで潰されたハエのような感情なのだろうか。

 いや分からない。物への感情なんて例えるなら、それはしょせんななつぼしやゆめぴりかが好きなマツコなのだ。マツコ自体はお米が好きでも、お米自体は我々のことをどう思って分からない。シュレディンガーの猫もどきだ。

愛ラブ好きなどという感情は思っている以上に自己中心的なものなのだ。甘すぎるショートケーキのような、相手のことを考えるのをやめてまでつきつめたような。

 だからこそぞんぶんに愛していていけばいい。相手に愛されていなくても、愛に溺れていられるじゃないか。愛が自己中心的なものなら、いくらでも誇っていけるじゃないか。きっとストーカーもこんな感情なんだろう。吐き気がする。

 そう思いながらも私は、捨てられないスクラップを筆箱という思いで箱にひっそりとしまう。

 捨てられた女や男がなおもすがりつくように。捨てられるものなら捨てていたいと言い訳を吐き出しながら。

 ただこの思い出という付加価値は私の手にしっとりとへばりついて離れない。

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