好きを着火剤に動き出せ

 夏休み、明日からはしばらく休みなのだからカロリーの爆弾を胃に詰めて腹で起爆させても良いじゃないかと冷蔵庫にあったケーキに手をつける。時刻は真夜中、あきらかにこのケーキは今摂れば私の腹に幸せと怠惰の証脂肪として残る。だが私は食べた。

 だって夏休みだぞ。しっかりだらけず運動をしてそれなりに勤勉に過ごせばお釈迦様も私を見逃してくれる。

 そんなケーキのように甘い期待だったが、いざ次の日がくれば昨日までの思考はどこへやら、私は更に幸せと怠惰に対して勤勉に手を伸ばす。どうやら思考の回路は私が楽観的な夢を見ている間にショートしてしまったようだ。配線はしっかりと見ておくべきだったねベイベー。

 体重計はインディアンじゃないが嘘をつかない。そこにはしっかりと蓄積された甘味がまぎれもない数字とともに映し出されていた。

 しまった動くべきだった。そう思うのはもはや後の祭り。

 久方ぶりの運動をしてみれば体はさながら一国を守る城壁だ。一歩も動かないほどに重い。

 こうなったのは自分のせい。そうは分かっても体は思考にノーの一言。

 しばらく無の時間がうまれ、刻む時間は食べちゃいたいほどもったいない。

 飼い主の心情を知らずに散歩に付き合わしてくれるペットがいれば良いのだが、あいにくとペット禁止のマンションだ。飼えたら飼ってるの言い訳バリアをはっておこう。

 だがそんな私を突き動かすものがある。

 来月には友人みんなと海に行く。

 その思考が負けかけた体に燃料を投下する。投下された燃料に対して燃えるのは脂肪。その威力をガムのようにひきのばし、私は目標へと一歩ずつ踏み込んでいく。

 海で遊ぶのは好きだ。だからこそ贅を極めしこの肉と心中するのはごめんなのだ。

好きなもののために没頭するのは人間簡単だ。

 そこからの私はもはやジェット機。音速の壁をこえゴリゴリと脂肪を削る使者と化す。

 突き動かすのは好き・ラブ・リーベという形のないものだが、人を動かすにはこれほど良い原材料はない。

 みんなも好きを着火剤にしようじゃないか。好きこそものの上手なれなのだから。

 だがしかしあえて一言添えておこう。

 私を食欲へと動き出させたのもまた甘味に対する好きなのだ。バカと天才が紙一重のように、好きもまた良い方向や悪い方向へ動く原動力だ。くれぐれも気をつけて用法容量を守って正しく使うことだ。

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