大人の階段登る 私もうガラスの靴は履けないが

 友人からLINEが飛んでくる。内容は、明日は私の誕生日だがもちろん来やがれこの野郎と。

 私は「寮にいるゆえ拙者行くことかなわぬ」と返信すると問答無用で「こい」と添えてきた。

 聞き分けのなさがアルプス山脈をこえている友人を持つと大変だが、私も一年に一度の大切な日を壊すほど節操やルールを大事にしているわけではない。

 ご期待に応えるためにせっせと身支度を整え、都会で肥えている友人の眼球の挙措を失わさせるために、我が農業高校がある地が誇る有名な歌手の名を刻んだせんべいを手土産に、友人の家へ舞い降りた。

 仮称歌手せんべいで所さんなみに目がテンとなった友人たちとワイワイ騒いで、なんやかんやな時間を過ごし、誕生日会も終わり間近になった。

 そんな時友人はいきなり言ったのだ。

「よし。パンケーキ作るからみんなでスーパーに行こう」

 と。あまりにも突発的だったが、その場のノリは既にハイ。止める者も止まる者もいぬ知らぬ。私たちはスーパーに行って材料を買って、いつのまにか、なんとなくの知識でカッスカスなパンケーキを作り上げていた。

 クリームは砂糖を入れ忘れパンケーキと一緒でないと食べれないほど酷く、トッピングに乗せた缶詰の果物は、クリームやパンケーキと絶妙にマッチしない味だった。ただそのなんとも言えない馬鹿らしい味と時間が童心に戻してくれて、一言で言えば楽しかった。

 しかし食べ終われば虚無。みんながお別れムードになっていると、誕生日会の主は言った。

「来年からはみんな受験生だし、大学どこ行くか分かんないし。もしかしたら今日くらいじゃないと会えないんじゃないかと思って、みんな呼んでみた」

 その言葉でみんなは思い思いの感情を抱いたのだろう。結局そのまましんみりとした空気のまま、私たちは各々の帰路につく。高校生でいられるのもあと数年。そう思えば残りの時間が実に惜しく感じた。

 私は思う。ある程度道徳を身につけたうえで、どんちゃんと騒げる年齢は高校二年くらいまでなんじゃないかと。三年からは一気に就職、進学のムード。

 三年はとてもじゃないが騒げるような感じではない。だからこそ、私は今のうちにはしゃぎ倒しておこうと思う。

 高校二年生までの思考は若々しさに似たバカバカしさと大人びたビターな感じが、せめぎあい。体は若いからこその融通が効いてくれる。実にはしゃぐのに最適な肉体だ。

 現在進行形ではしゃいでる人間に言われても妙だろうが、みんなも若いうち、今のうちにはしゃいでおこう。高校三年生からは騒げず、大学生からは大人な騒ぎ方しかできないのだから。

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