第二章 親愛なるルルイエへ
⑭
「僕が彼を殺した証拠はあるのかね?」
「それは……。と、とにかく! 僕が犯人じゃないのは僕が一番よくわかっている!」
「お話になりませんね」
二階では駒場さんと坊山さんが言葉の槍を投げ合っていた。
坊山さんは昨日までの穏やかな表情が一変、殺気立っている。目をカッと見開き、首を振る駒場さんを睨んでいる。駒場さんはトレードマークの紳士ハットを被っている。
「はいはい。喧嘩なら外でどうぞ」
皮肉を込めた雛田さんの一言で、坊山さんは言葉を吞みこむ。
「ちっくしょう、なんだってこんな目に!」
頭を掻きむしりながらベンチにドカッと腰を下ろす。隣に座っていた大塚さんが少し距離を取って座り直した。
「レイン、さっきの宿題の答え、聞いてもいいかい?」
一通り俺が話し終わるまで、上野原はただ黙って聞いていた。
「つまり犯人はクトゥルフ信者で、猟犬を顕現させた挙句、生贄を捧げるつもりだと?」
小さくニヤッと笑い、
「君にしては上出来だ――みなさん、少しいいですか?」
続けざまに上野原は昨夜の行動について全員から話を聞いた。
夕食が終わったのが二十二時頃。坊山さん、駒場さんはすぐに部屋で休んだとのこと。その際、部屋へ入る松垣さんを坊山さんが目撃したらしい。従者二人と大塚さんは片付けをしてすぐに部屋へ戻り、朝まで誰も部屋から出なかったという。
「呑気に探偵ごっこかよ」
坊山さんは小さく独り言を漏らし、右手甲のホクロを弄っている。
当の本人はまるで気にする素振りを見せない。
「レイン、いいかい? 現場をもう少し調べたいんだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます