概要
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- ★★★ Excellent!!!もう売られていない菓子
あらためて読み返してみると、①地獄②ぱらいそ③カルミンの並びに語り手の変遷を感じる。三者は常に並立しているが成長と共に割合の変化がある。今はもう売られていないカルミンがキッカケで思い出される数々の地獄がカルミン不在のあとであっても更新される。しかしながら語り手は幸福と語り、それに対しての罪悪は見当たらない。猫は何も語らず側にいて時折「いい声」で鳴く。来訪者はなく、ぱらいそに到達しつつある語り手にとっては清涼剤となりうる象徴さえも過去の遺物であり、現在進行形の正義或いは信条を助長するものでしかない。ここで先述の三者がどれも同一の何かを示している気づきがあり救いは限りなく消え失せる。救いはないが…続きを読む
- ★★★ Excellent!!!生々しく伝わってくる地獄の手触り
ひとりの女性が、幼少期の家庭の思い出を振り返るお話。
ある種の地獄、出口の見えないどん詰まりを描いた現代ドラマです。いやもう本当にエグくて重くて最高……独白調(ですます体)の文章を通じて伝わってくる、この地獄の手触りが、ゴリゴリとこちらの胃壁を削るかのようです。いや本当、凄まじいものを読まされてしまった……。
とにかく出てくる要素のディティールというか、細かい感覚から胸に切り込んでくる感じが凄まじい。別に私(読者である自分)個人はこういう家庭環境に育ったわけでもないのに、でもその光景が我が事のように想像できてしまう。決して〝こう〟でも〝ここまで〟でもなかった代わりに、ひとつひとつの要素…続きを読む