生々しく伝わってくる地獄の手触り
- ★★★ Excellent!!!
ひとりの女性が、幼少期の家庭の思い出を振り返るお話。
ある種の地獄、出口の見えないどん詰まりを描いた現代ドラマです。いやもう本当にエグくて重くて最高……独白調(ですます体)の文章を通じて伝わってくる、この地獄の手触りが、ゴリゴリとこちらの胃壁を削るかのようです。いや本当、凄まじいものを読まされてしまった……。
とにかく出てくる要素のディティールというか、細かい感覚から胸に切り込んでくる感じが凄まじい。別に私(読者である自分)個人はこういう家庭環境に育ったわけでもないのに、でもその光景が我が事のように想像できてしまう。決して〝こう〟でも〝ここまで〟でもなかった代わりに、ひとつひとつの要素にはなんとなく覚えがあったりする、その地獄のエッセンスの抽出の仕方と伝え方がまったく神業のようでした。揺るぎない説得力とを持った〝細部〟を、これでもかとばかりに積み上げてくるこの感じ。
幕引き、というか第四話が最高に好きです。どことなく穏やかなものを感じる語り口とは裏腹に、明らかにそこが地獄の果てだとわかる、この圧倒的な救いのなさ。なによりそれ(=結局救いのない結末に至るであろうこと)が、最初からうっすら想像できてはいたという点。丁寧なですます体だからこそかえって不安定さが浮き立つかのような、語りの妙でこちらを滅茶苦茶に打ちのめしてくるすごい作品でした。痛烈!