顔合わせ
まだ人々が寝静まる夜明けに俺とアミーラは
宿屋を後にした。
昨日は酒の勢いでやっちまった…。
後悔はしていないが成り行きに身を任せてしまった。
その時何故か第二師団の拠点に残っているラウラの事が脳裏を
アミーラはいつものような元気はなく、恥ずかしそうに俺の一歩後ろをついてきていた。
「…アミーラ…昨日は…その…よかったよ」
あああ、俺は何を言ってるんだ。こんな時に世の
いや、別に女誑しになりたい訳では無いが…この空気に耐えられない。
アミーラはアミーラで
「うん…」と気まずそうに返事をするだけだった。
兵士たちは昨晩の
俺とアミーラは城の裏口からこっそりと城内に戻ろうとするが…。
「おやおや、防衛任務前に朝帰りとはお盛んなことで」
「ぎくっ」
声のする方へ顔を向けるとアイナが城壁通路から嫌らしい笑みを浮かべでいた。
アミーラは顔を真っ赤にして俺の後ろに隠れる。
「防衛任務っていっても今日は打ち合わせを
「あたしは何も悪いとは言ってませんよ~」
アイナは変わらずこちらを茶化すような笑みを浮かべている。
俺は少し苛ついたが、この手の人間は相手をするだけ無駄だとアミーラの手を引いてそのまま城内の兵舎へと戻った。
そこでアミーラと別れてもう一眠りする。
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主要メンバーで今回の防衛任務についての段取りを組む。なんせツヴァイト総帥が帝国の転覆を図ってから初めての防衛任務らしい。
たった半年で一から十二の師団を取りまとめ新たに立て直しただけでも容易ではなかっただろう。
ここには第二師団と第十二師団の副官以上の者が集まっているが、俺とルイスだけは何故か例外として参加を許された。
「はいはい〜では昨晩の顔合わせの宴で、姿が見えない者もいたので改めて自己紹介をしたいと思いま〜す」
そう言ってアイナはこちらに目配せをする。
「それではまずは私から。第十二師団師団長のアイナだよー。好きなものは人間観察かな」
なんだこれは…自己紹介って自分の
「私は第二師団師団長のカタリーナ・ゾイ・オーキュラスだ。好きなものは
おいおいリーナ師団長。真面目な顔でその自己紹介の流れを汲むのか。
…そう言えば第二師団の
次に頭髪がやや薄く、頬に切り傷がある初老の兵士が前に出る。
「第十二師団副官のガルガン・ワーリオンだ」
「えぇ~、ガルちゃん。好きなものはないの?」
「ふむ…好きなものですか…。私は冷えたオーク酒が好きですな」
それを聞いてアイナは納得したように頷く。
「ええっと、第二師団副官のアミーラです。好きな人は…」
アミーラはそこで言い淀む。
まてまて、いつの間にか好きなものから好きな人になってるぞ。
アミーラが俺を見たことでその場にいる全員が状況を察したようだ。
リーナ師団長からの視線が痛い…。
足元まで伸びている黒いフードを被った長身の青年が軽く咳払いをして挨拶を始める。
「第二師団副官のヨアン・ギュンターです。拝命されたばかりの若輩物ですが、どうぞよろしくお願いします。好きなものは黒です」
なんか胡散臭い野郎だな…。
俺の第一印象を他所にアミーラが
「なんかクロムくんに雰囲気似てるね」と
言った事は聞かなかった事にしよう。
…そう言えば俺の格好も似たようなもんだったな。
「貴方が噂に聞く“影縫のヨアン”ですか!お会いできて光栄です」
あの冷静なリーナ師団長が年相応の少女のような笑顔を見せる。
「いえいえ姫君の武勇と比べますと私なんぞ
そう答えヨアンはお辞儀をする。
おいおい、俺と雰囲気似てるならこの態度の差は何だよ!
俺には一度もそんな態度を見せたことはないだろ。
「もう一人の副官は第二師団の拠点の防衛のために今回の任務では不在です。そのため今回は弟のルイスとクロムを同行させています」
するとヨアンが驚いたような顔をこちらに向ける。
「貴方があの噂に聞く…」
おっと…早くも
「最後の宮廷剣術の使い手のルイス殿ですか!」
はいはい、どうせそうだと思いましたよ。俺なんかただの無名の反逆者だよ。
…それにしてもルイスが宮廷剣術の使い手?
そう言えば、エウリオのとの戦闘でも舞うように体を回転させる独特な剣術を使ってたな。
結局、俺のこは誰も触れられずに本題へと入った。
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