2月といえば恒例の…… 11ヶ月目

如月、今月のイベントといえば……

そう、バレンタインデー

男子にとっては戦争と言っても過言でもないイベントである。

貰えたチョコの数で勝負し合い、優劣がきめられるという第三者から見るとなんともレベルの低い戦いだ。

そもそもバレンタインデーなんてチョコ作ってる会社が設けるためになにかイベントを作ろうとして出来た日なのだからチョコを作ってる渡すなんてまんまと戦略にはまってるようなものだ………

と去年までは思っていたのだけど……。


現在、私は家のキッチンでチョコと格闘していた。

去年まではバレンタインデーなんて全く関係の無い事だったが今年は違う。

彼氏がいるのにチョコをあげないわけにはいかない。


ということがあり、チョコ作りに苦戦していた。なんせこんなことをするのは初めてだからだ。


チョコレートを湯せんするだけなのに水に直接チョコレートを入れてしまったり、もう少し甘くしようと砂糖を入れるつもりが塩を入れてしまったりなど失敗ばかり続いている。


もしかすると料理の時より手こずっているかもしれない。




そこから悪戦苦闘すること数時間後、やっと納得出来るものが作れた。


あとは渡すだけだ。



そして、バレンタインデー当日。

クラスの雰囲気もいつもとは変わって、まるで火花が散っているように見える。


昼休みに一緒にお弁当を食べるからその時にさりげなく渡そうと決心する。


いつもと同じように定位置のベンチに座ってたわいもない会話をしながらお弁当を食べる。

雄貴より少し早めに食べ終わって持ってきたチョコを手に持つ。


「雄貴!あのね。ち、ち、」


「ち?」


「ち、チーズドックってめちゃくちゃ美味しそうだよね!」

(やってしまったぁぁぁぁぁぁー!!!なんで言わないのよ私!チョコを渡すくらいなんてことないじゃない!渡す機会逃しちゃったし!)

結局 自分から言い出して渡す勇気が出なかった。

これまでバレンタインデーと全くの疎遠で関係の無い生活をしていた影響がここに来て出てきた。


どんどん昼休みの時間は過ぎていき……

とうとう終わってしまった。


チョコは当然渡せじまいだ。



その事が気になりすぎて午後の授業内容は全く頭に入ってこなかった。

どうにかして渡さないといけないけどどうしようと、ずっと考えていた。

その結果頭に浮かんできたのは………

靴箱に入れておくという昔からあるなんともベタな方法しか思いつかなかった。


でも、今の私にはそのくらいしか勇気が無かったので放課後になってすぐ、できるだけ急いで雄貴の靴箱に向かった。


間違って違う所へ入れないように何回か確認して靴箱を開く。

すると…………………………

靴箱の中には綺麗にラッピングされたチョコらしきものが2つ入っていた。


それを見ると私の考えが覆された。


雄貴を狙っている女子は沢山いる。

イケメンで頭も良いのに好きにならない訳が無い。

結構広まって来たけどまだ雄貴に彼女はいないと思っている人もきっといるだろう。

でも、私は雄貴の彼女だ。

そんな私がこのチョコを渡した人と全く同じ渡し方で良い訳がない。


私が今しないといけないことは…………

直接、私自身の手で雄貴に渡すことだ。


その考えに至った時にはもう体が無意識に動いていた。


教室に行って探すが雄貴はいなかった。

私にクラスにも来てなかった。


必死に探して、廊下を走り回っていると偶然目の前を通りかかるのが見えた。


「雄貴!」

少し声が大きすぎた気もするが今はあまり気にしなかった。

私の声に気づいて振り返る。


「夏美、そんなに息を切らしてどうしたの?大丈夫?」


「気にしないで。大丈夫だから」


私はふぅーと深呼吸をして間を置くと勇気を出して言う。


「今日バレンタインデーでしょ?だからこれ、頑張って作ったんだけど受け取って貰える?」

そう言ってチョコを雄貴に差し出す。


「ありがとう、僕の為にわざわざ作ってくれたの本当に嬉しい!ちょっと食べて見てもいい?」


「いいよ!」

私が言うと、雄貴は丁寧に包装を取ってパクッとチョコを口に入れた。


「あ、味はどうかな?」


「ん!美味しい!ちょうどいい甘さでこの味好き!」


「良かったぁ!練習では失敗ばっかりだったから……」


「何回も練習してくれたの?」


「あっ……さ、さっきのは忘れて!ね?ね?」


「どうせならちょっと失敗しちゃったやつも食べたかったなぁー!」


「や、やめてぇぇー!また私からかわれる運命なのかぁー!」





雄貴は笑って私をからかっている一方で私は恥ずかしさに悶えていたのだった。

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