初詣と偶然の出会い 10ヶ月目
雄貴に連れられて電車に乗る。
しばらくして降りると、そこはこの間来た夏祭りの最寄り駅だった。
「ねぇ、どこに向かってるの?まだ秘密?」
「もうちょっとで着くから待っててね」
そう言って私の手を引き、歩いていく。
その状況にどこか懐かしさを感じる………
その時、今まで謎だったことが分かった。
なぜここに来たのかも腑に落ちる。
雄貴の足が止まった。
そこには周りが木々に囲まれていて、見覚えのある小さい神社だった。
今日も人の気配は全くなく居るのは私達だけだった。
「ここ、覚えてる?」
「うん…覚えてるよ」
夏祭り、花火を見ようとして出来た人混みから雄貴に手を引かれて連れられたところだ。
あの時も雄貴に手を引かれていたから懐かしく感じたのだ。
「懐かしいね、ここで夏美に好きって言って貰えたことが本当に嬉しかった」
「それを言うなら私もだよ。好きって言ってもらって嬉しかった。でも、まさか同時とは思わなかったけどね」
「だから夏美と一緒にここに来たかったんだ。思い出の場所だから」
私達は拝殿に向かって歩き、お参りをする。
二礼二拍手一礼をして目を閉じてお願いをする。
ずっと雄貴と一緒にいられますように……
30秒くらい手を合わせてから目を開ける。
雄貴もちょうど終わったようだ。
「ねぇ、雄貴は何をお願いしたの?」
「うーん、逆に夏美は何をお願いしたの?」
「私は…………ひみつ!」
「えー!それはズルくない?じゃあ、俺も秘密にしよ!」
「そんなぁぁぁ……………」
「夏美……これから毎年ここに来ような」
「うん、約束だよ」
そんな話をしながら駅の方に向かって戻った。
駅前まで着くと帰る電車が逆なのでもうお別れになる。
「今日は付いてきてくれてありがとうね」
「また思い出が増えたから嬉しい」
「じゃあ、バイバ─────────」
その時私が最も聞き慣れた声が聞こえてきた。
「えっ?夏美こんなところに来てたの?」
「お、お母さん?!」
「えっ?!夏美のお母さん?!」
「あなたは……山之上くんかな?夏美がいつもお世話になってます」
「私は山之上雄貴です。夏美さんと付き合わせてもらってます。挨拶がこんな形なのは申し訳ないですがよろしくお願いします」
「礼儀正しくていい子ね!ふふっ、夏美にはもったいないくらいなんじゃない?こちらこそよろしくね!」
「で、お母さんなんでここにいるの?」
「ちょっと買い忘れたものがあって買いに来たのよ、夏美こそどうしてここに?お参りは近くの神社でするって聞いてたけど…」
「ゆう…山之上くんとどうしても行きたいところがあったから来たの」
「あら、それは邪魔しちゃったね。行ってきて!」
「もう行ってきたので大丈夫ですよ」
「そうなのね…こんなところでなんだし今から家に来る?」
「えっ?お母さん!いきなりはダメだって!心の準備が……じゃなくて迷惑でしょ?」
いきなり雄貴が家に来るという事態に動揺する。
(部屋ちゃんと片付けてたっけ?家の前で1回待って貰おうかなぁ……)
必死に頭を回転させて部屋の状況を思い出していた。
「リビングで少しゆっくりしてもらおうと思っただけなんだけどそんなに動揺してどうしたのかな夏美?」
と、からかうように言ってきた。そうだ、家に来ると言ったって絶対に私の部屋に入れないといけないということはない。
これは一本取られてしまった。
「いえ、正月早々迷惑なので遠慮しておきます。また今度ちゃんと挨拶したいのでその時に伺います」
「まだ高校生だからそんなこと気にしなくていいのに……でも、気遣いありがとうね。
今度来る時は料理でも作って楽しみにしておくわ!」
雄貴は笑顔で返事をした。数分前は少し緊張していたのに今はすっかり打ち解けている。
「じゃあ、今度こそ今日はありがとうね、バイバイ」
「またね!バイバイ!」
手を振りながらそう言う。
「あ、山之上くん、1つ言い忘れてた!」
急にお母さんが雄貴を呼び止めた。それを聞いて雄貴が振り返る。
「体育祭の時急に私に料理教えてって言ってきて、一週間前くらいから一生懸命作ってたから改めていっぱい褒めてあげてね!」
「もう!何かと思ったけどやめてよ!それは秘密にしたかったのにぃー!」
こうして初詣はいい思い出と共に賑やかに終わった。
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