体育祭が作る思い出 7ヶ月目

1年生も残り6ヶ月で学年が変わる。

半分が過ぎたが、イベントはまだまだ沢山あった。


そして今、10月は体育祭がある。

クラスの雰囲気もすっかり体育祭に向いており勉強は頭の隅っこに追いやられているようだ。


「体育祭ねー私もイベントがきっかけで彼氏できないかなぁ……」


「優芽は相変わらずだね……」


「だって!夏美はいいじゃん、超イケメンの彼氏がいていつでもイチャイチャできるし。それに比べて私は…あぁ、このまま一生負け組のまま生きていくのか…」


「いやいや、優芽。付き合ってても意外と難しいものだよ?」


「はい、処す」

そう言ってサッと私の後ろに回り込んで脇腹をくすぐりだした。


「あっはっはっはははははは!!ちょ、優芽、ごめん!ごめん!悪かったからだからやめてっ……!はっははは……!」


「だめだね。夏美にはもう少し苦しみを味わわせないといけないみたい」

そう言ってくすぐりを続けてきた。


私は1分ほどくすぐられていただろうか、優芽がくすぐりをやめた時には疲れてすっかり脱力していた。


息を落ち着かせているうちに教室内の視線が沢山こっちに向いていることに気づく。

特に男子の視線が多かった。


大きい声をあげて騒いでいたから何事かと思って見ていたのだろうと思ったがすぐに違うと気づく。


くすぐられている時に恥ずかしい声が漏れてしまっていたようだ。

こちらを見ている人に顔を向けると全員視線を逸らす。どうやらこの予想は当たりのようだ。


私の体温が一気に上昇していく。

顔も真っ赤になっているだろう。


「優芽……?ちょっとやりすぎだったんじゃないかな?道ずれになる覚悟はできてるのかな?」


そう言ったが、返事を待たず優芽をくすぐり始めた………………




私と優芽はお互いに机に頭を伏せながら、静かに話し合った結果くすぐりの一件のことは記憶から抹消することにした。



そして今はHRが行われていて、体育祭で出る種目を決めている。

私は運動が苦手じゃない。かと言って得意なわけでもない、ごく普通だ。

なので最低2種目だけで良かったのだが、クラスで話し合いをした結果、全体競技を2種目とハードル走に出ることになった。


一方、優芽は運動神経抜群だったので4種目も出ることになったみたいだ。


それだけ目に見えた長所があるのだから彼氏出来るでしょ?と思ったが本人曰くそんなに単純なことではないらしい。


難しいものだなぁ……………




そして放課後、いつものように山之上くんと待ち合わせをし、一緒に帰っていた。


「ねえ、山之上くんって運動と得意なの?」

ふと、気になったので質問してみる。


「うーん?自分で判断するのは難しいけどそこそこできると思ってるよ」

山之上くんは自分でそこそこできると言っているが、控えめに言っているはずだ。実際は凄く運動ができるんだろうなと思った。


「じゃあ、体育祭はいっぱい競技に出る予定なの?」


「いや、全体種目と借り物競争だけだよ。いっぱい出ると疲れちゃうし、みんなが頑張ってるところを応援したいんだ」


山之上くんらしくも思えるし、ちょっとにも思える回答だった。

とにかくみんなで楽しんで体育祭を終えれれば良いと思っているタイプみたいだ。



「霧上さんはなんの種目に出るの?」


「私も3種目。全体種目に加えてハードルに出る予定なんだけどハードルやったことなくて不安なんだよね……」


「ハードルに出るんだ!難しいよね……でも、そんなに高くはないと思うから不安にならなくても大丈夫だと思うよ?」

その言葉を聞いて少し安心した。


そのとき、いい事を思いつく。

だが、少し自信が無かったので言うのを躊躇ちゅうちょした。

迷っていたが、こういうのは勢いで言った方がいいと思ったので口を開く。


「山之上くん、体育祭のときお弁当作ってきてあげる!だから一緒に食べない?」


「お弁当?僕に作ってもらっていいの?」


「いいよ!なんかこういうの恋人って感じしない?やってみたかったんだ!それに、山之上くんとの思い出を作りたいし……」


「霧上さん……嬉しい!じゃあ、お弁当頼んじゃおうかな!

これは、頑張って借り物競争1位取らないと…!」


そんな話をしているうちにいつも別れる道まで来ていた。

バイバイと挨拶をして家の方向に歩いていく。



料理完璧になるまで頑張って勉強しなきゃ…………!


そう思いながら家に帰った。

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